THE RESTING SPRING / KAPI'S GENTLE JOURNEY
朝の光がまだ森の奥まで届かないころ、カピちゃんは小さな泉から立ちのぼる、やわらかな湯気を見つけました。
その湯気は、急いでいると見えなくなり、立ち止まると淡い虹色にほどけていきます。
森を歩いてきた仲間たちが、ひとり、またひとりと泉へたどり着きました。
カピちゃんは理由を急いで尋ねず、みんなが自分の速さを取り戻せる場所をつくります。

QUIET STEAM IN THE FOREST
第一部|森の奥の静かな湯気
朝露を抱いた葉のあいだから
白くやわらかな湯気が
空へゆっくり昇っていた カピちゃんは
小さな鞄を泉のそばへ置き
温かな水に前足をそっと入れた ほどなく
急ぎすぎて息を切らしたうさぎと
荷物を抱えたままのりすと
遠い道を歩いてきた鹿がやってきた カピちゃんは
どうしたの、と急いで聞かなかった
ただ少し横へ動いて
みんなが座れる場所を空けた 湯気は何も決めつけず
疲れた肩や小さな背中を
朝の毛布のように包んでいった

WISHES ON THE WATER
第二部|水面に浮かぶ本当の願い
泉が静かになると
水面に小さな光が浮かびはじめた もう一度 好きな丘へ行きたい
大切な人と ゆっくり話したい
自分でできることを これからも続けたい 声にならなかった願いは
水色や若草色
あたたかな金色の波紋になった カピちゃんは
どの願いが正しいかを選ばず
消えないように
一つずつ静かに見守った 光の波紋は重なっても
それぞれの色を失わない
やがて泉いっぱいに
やさしい朝の空が映っていた

A MORNING AT YOUR OWN PACE
第三部|ゆっくり始まる朝
森に朝日が差し込むころ
仲間たちは自分の時間で立ち上がった うさぎは深く息を吸い
りすは荷物を少し分け
鹿は歩きたい道を自分で選んだ 急ぐ者はいない
立ち止まる者を置いていくこともない 泉からこぼれた光は
誰かを引っぱる綱ではなく
足もとをそっと照らす
細い道になっていた カピちゃんは
いちばん前に立つのではなく
みんなの少し隣を歩いた 振り返ると
泉の湯気が朝日にほどけ
森には新しい笑い声が
ゆっくり咲きはじめていた