想像から、創造へ

きてケアプランセンター

Kite art factory LLC powered by sava

保土ケ谷区・横浜市西区・中区・南区のケアマネ・介護相談

MENU

The Song the Rain Remembered|雨が覚えていた歌

THE SONG THE RAIN REMEMBERED / KITE'S JOURNEY

雨の朝、きてちゃんは古い窓辺で、誰にも聞こえないほど小さなハミングに出会いました。
歌は二つの音を残して止まり、続きの言葉は見つかりません。

けれど、窓を伝う雨粒だけが、その先を覚えているように揺れていました。
きてちゃんが暮らしの中へ散った音を一つずつ拾い、忘れられた歌ではなく、今日ここから始まる歌へ育てていく三つの物語です。

聴く拾う響く
雨の窓辺でアクアと金色の小さな音を両手に受けとめるきてちゃん
雨粒の中に残る小さな歌の続きを見つけたきてちゃん
雨の窓辺で小さなハミングと指の拍子へ静かに耳を澄ますきてちゃん

THE HUMMING BY THE WINDOW

第一部|歌がほどけた窓辺

雨の朝
古い窓のそばで
小さなハミングが揺れていた
二つの音を行き来して
歌は その先へ進めずに
静かな息へ戻っていった
「つづきは?」と
誰かが尋ねかけたとき
きてちゃんは そっと椅子を寄せた
答えを探す代わりに
湯気の向こうで動く指と
膝の上に刻まれる拍子を見つめた
とん とん
雨粒も同じ速さで
窓をやさしくたたいている
一粒が透明な翼へ触れると
淡いアクアの音になり
きてちゃんの手のひらへ残った
歌は消えたのではなく
大切にしてきた時間の中へ
少しずつ ほどけていったのかもしれない
きてちゃんは立ち上がり
その人の小さな拍子を胸に
雨の町へ歩き出した

途切れた旋律も
消えたのではなく
暮らしの音へ帰っている

雨上がりの町で暮らしの小さな音をアクアと金色の光として集めるきてちゃん

SOUNDS SCATTERED THROUGH TOWN

第二部|町じゅうに散った音

軒先の風鈴に
夏の終わりの一音
台所のやかんに
朝を知らせる白い息
花屋の戸口には
鉢へ水を注ぐ なつかしいリズム
雨上がりの石畳には
ゆっくり帰る靴音が
金色の波紋をつくっていた
「あの人は花に水をあげるとき
いつも同じ歌を口ずさんでいたよ」
「この角で立ち止まって
空を見上げるのが好きだった」
町の人が差し出す思い出を
きてちゃんは
ひとつの答えに塗り替えなかった
アクアの音
若草色の音
あたたかな金色の音
違うままの音が
透明な翼のまわりで重なり
雨雲の下に やさしい川をつくった
きてちゃんは
その川を両手で抱えず
こぼれない速さで 窓辺へ運んだ

途切れた旋律も
ひとりきりではなく
誰かの日々の中で息をしている

雨上がりの明るい部屋で高齢者と周囲の人が歌を重ねる様子を優しく見守るきてちゃん

THE CHORUS AFTER THE RAIN

第三部|雨上がりの合唱

部屋へ戻ると
雨は細くなり
カーテンの向こうが明るみはじめていた
きてちゃんは
元の歌を当てようとも
思い出させようともしなかった
ただ 手のひらを開いて
町で出会った音を
ひとつずつ 部屋へ帰した
風鈴の一音
やかんの白い息
花へ水を注ぐリズム
雨上がりの靴音
その人の指が
もう一度
膝の上で拍子を刻んだ
とん とん
二つのハミングが
今度は三つ目の音へ ゆっくり渡った
そばにいた人たちは
言葉を合わせる代わりに
同じ呼吸で 小さく声を重ねた
知っていた歌とは
少し違っていたかもしれない
けれど それは確かに
今日ここにいるみんなの歌だった
笑いながら涙をぬぐう人
うなずきながら声を添える人
窓辺には 名前のない喜びが満ちていった
雲の切れ間から朝が差し
雨粒は光の粒へ変わった
きてちゃんが
そっと一歩うしろへ下がっても
歌は人から人へ 続いていた

途切れた旋律も
消えたのではなく
一緒に歌える今日を待っている