1. 制度見直しの全体方針
高齢化の進展による給付費増大に対応し、制度の持続可能性を確保することが最優先課題です。高市政権は「全世代型社会保障」の理念の下、給付と負担の見直しや地域ケア体制の強化など抜本改革に取り組む姿勢を示しています。
政府の経済財政方針(骨太方針※2025)でも次期改正に向け「年末までに結論を得る」ことが明記され、議論が加速しています。
主な改革の柱は、(1)費用負担の適正化、(2)地域包括ケアの深化、(3)人材確保、(4)DX推進、(5)透明性向上の5点です。
※骨太方針とは 政権が掲げる経済財政運営の基本指針のこと。ここで示された方針が、翌年度以降の予算編成や制度改正の土台となります。
2. 利用者負担の見直し(ケアプラン有料化)
現在、利用者負担がゼロである「ケアプラン作成」について、有料化に向けた以下の3つの選択肢が提示されています。
① 所得に応じた負担
低所得者には配慮しつつ、一定以上の所得がある利用者に対してのみ手数料負担を求める案です。
② 特定施設等との均衡
有料老人ホーム(住宅型)入居者など、特定の居住形態の利用者を対象に費用を徴収する案です。
③ 給付管理分の実費負担
ケアマネジャーが行う給付管理※(請求事務)の手間賃部分について、実費相当を利用者が負担する案です。
※給付管理とは 利用者が受けたサービス費用を国保連に請求するために、計算や書類作成を行う事務手続きのことです。
自己負担割合(2割・3割)の対象拡大も検討されています。
現在は全体の約4.3%に留まる「2割負担」の対象を、上位25%程度の高齢者(単身年収280万円以上など)まで広げる議論が進んでいます。
3. 人材確保と処遇改善(賃上げ)
高市政権は、2026年に臨時の介護報酬改定(期中改定※)を実施し、介護職員の給与を平均5%以上(月額1万円程度)引き上げる方針を示しました。
通常の3年ごとの改定を待たずに実施される異例の措置であり、他産業との賃金格差解消を狙います。
また、外国人材(特定技能・EPA)の受け入れ拡大や、ICT・ロボット活用による業務負担軽減もセットで推進されます。
※期中改定とは 原則3年に1度の介護報酬改定サイクル(次は2027年)を待たず、緊急の政策課題に対応するために年度途中で報酬を変更することです。
4. 経営の透明化とDX推進
財務情報※の公表義務化
全事業者に経営情報(収益・費用・職員給与等)の報告が義務付けられました。2025年より新データベースでの運用が開始されています。
介護情報基盤※の整備
利用者情報を全国で共有するプラットフォームが2026年より稼働。自治体、医療機関、事業所がリアルタイムで連携可能になります。
※財務情報とは 事業所の収益や費用、職員の給与水準など、経営の実態を表すデータのことです。透明性を高めるため、原則すべての事業所に報告が義務付けられました。
※介護情報基盤とは これまで紙やFAXで行き交っていた介護・医療情報を、クラウド上で安全に一元管理・共有する国の新しいネットワークシステムです。
5. 各方面への影響(まとめ)
利用者・家族
自己負担増への不安がある一方、DXや連携強化により手続きが簡素化され、サービスの質や安心感の向上が期待されます。
事業者
処遇改善による人材確保の機会ですが、経営の透明化やDX対応など、高度な経営手腕と組織改革が求められる時代になります。
ケアマネジャー
有料化議論による環境変化への適応が必要ですが、事務負担軽減と役割拡大により、専門職としての価値が再定義されます。