(1) 目的が一つではありません
介護保険は、本人の生活維持と自立支援、家族負担の軽減、人材不足への対応、財政の持続性、地域資源の偏在など、複数の目的を同時に扱います。目的が複数ある制度は、どうしてもルールが増えます。
(2) 「全国一律」と「地域裁量」が同居します
介護保険は全国共通の枠組みで動きつつ、保険者は市町村です。運用の細部は市町村の計画、地域資源、人口構成の影響を受けます。
この二層構造が、同じ制度でも「自治体によって肌触りが違う」状況を生みます。
(3) 認定・給付・ケアマネ・事業者が「分業」で連結します
要介護認定、給付管理、ケアプラン、サービス提供、請求審査が別の仕組みで連結します。分業は安全性と透明性に寄与しますが、手続きが増えます。
(4) 公平性を担保するために「例外規定」が増えます
所得に応じた負担、施設と在宅の違い、医療との接続、独居・老老介護、虐待や権利擁護など、現実の多様性に合わせるほど例外が増えます。例外が増えるほど、制度は難解に見えます。
(5) 不正・不適切を抑止するほど「要件」が細かくなります
公費と保険料で支える制度は、説明責任と適正化が必須です。算定要件・記録・監査対応が厚くなりやすいのは、制度の性格上避けにくい側面です。
(6) 「質」と「量」を同時に守る必要があります
サービスの質を守るほど加算・評価が増えます。量(提供体制)を守るほど配置基準や運営基準が増えます。両者を同時に守ると、ルールは増えます。
(7) データ連携と透明化が新たな複雑さを持ち込みます
近年は、介護情報基盤の整備が進み、市町村のシステムから段階的にデータ移行・活用を進めるスケジュールが示されています(令和10年4月1日までに全市町村で活用開始を目標)。
また、介護サービス事業者の経営情報を報告するデータベースシステムも運用され、報告期限や受付停止等の運用情報が公表されています。
透明性が上がるほど、事務は増えやすくなります。