災害時どうすればいい
〜東日本大震災の教訓と、豪雨・水害が日常化した時代の家庭内手順〜
2011年3月11日の東日本大震災では、広域で停電・ガス供給停止・断水が発生し、通信も大規模に途絶しました。これにより「家で過ごす前提」が同時に崩れてしまったのです。
また近年は、豪雨による浸水・土砂災害の頻度が体感としても増え、強い雨の増加は気象庁の報告書でも論点として扱われています。
本ページは、過去の教訓やSNS時代の実体験から見えた「本当に必要だった備え」を基に、災害の種類(地震・台風/大雨・停電・大雪など)が違ってもご家庭が迷わないよう、共通の優先順位と初動後(10分〜72時間)の手順を一本化して整理しました。
優先順位を明確にする
災害時にまず確保すべきなのは、食料よりも「トイレ・明かり・水と衛生・薬・連絡手段(電源)」です。
これらが整うことで、自宅にとどまるか避難するかの判断も、落ち着いて下せるようになります。
自然災害(報告イベント数)の推移
世界的に見ても自然災害の報告数は増加傾向にあります。日本においても、地震や豪雨災害が継続的に発生しています。
出典:Our World in Data(EM-DAT, CRED / UCLouvain)
※「報告されたイベント数」のため、報告体制の変化の影響を含みます。
世界全体(All disasters)
日本(Japan)
グラフから読み取れる傾向と課題
世界全体の傾向
1960年代から2000年にかけて報告件数が急増していますが、これは実際の災害増加に加え、通信技術の発達や国際的な報告システムの確立により、以前は記録されにくかった中小規模の災害も計上されるようになった影響が大きいと分析されています。2000年代以降は高止まりの傾向にありますが、気候変動に伴う気象災害の頻発が世界的な課題となっています。
日本の傾向
日本は地震・台風・豪雨による災害が継続的に発生しており、グラフの突出部分(スパイク※1)は、1995年の阪神・淡路大震災、2004年の台風・中越地震、2011年の東日本大震災、2018年の西日本豪雨などの大規模災害発生年と重なる傾向があります。
近年では「数十年に一度」と言われるような豪雨災害が日常化しており、地震への備えだけでなく、風水害を前提とした「早めの避難行動」の重要性が、データからも強く示唆されています。
まず3分で決めること
タップして完了チェックができます。
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1. 自宅周辺の災害タイプを把握する ハザードマップ(※2)で、自宅や実家の浸水・土砂災害リスクを確認しましたか?
ハザードマップポータルサイトを開く - 2. 「取り出す場所」を決める 停電時、真っ暗な家中を探さずに済みますか? 寝室か玄関のどちらかに集約するのがおすすめです。
- 3. 家族の連絡の型を決める 災害用伝言ダイヤル(171)などで、あらかじめ「録音に使う電話番号」を共有していますか?
共通手順:初動(0〜10分)の次に家庭内でやること
10分〜1時間:家の中を「動ける安全」に整える
揺れ・風雨・停電の種類に関係なく、最初の1時間は同じ動きで構いません。
- 足元の負傷を避け、危険箇所(割れ物、倒れた家具、水漏れ、ガス臭がある場所)を避けて移動します。
- 同居者の居場所と状態をそろえ、外の状況は公式情報を軸に把握します。
- この段階の装備は、まず「灯り」と「連絡」を立て直すことに寄せます(消防庁のチェックシートでも、懐中電灯・携帯ラジオ・予備電池が基本です)。
当日〜72時間:生活を回す順番
生活が破綻しやすい順は次の通りです。
トイレは絶対に後回しにしてはいけません。
経済産業省は、災害時トイレの備蓄目安として「1人あたり35回分(7日分)」を示しています。
災害の種類ごとの「追加」だけ読む
地震:余震と火災を前提にする
地震は余震が続きます。初動後も、倒れた家具やガラス片がある場所へ不用意に立ち入らない運用が必要です。
家屋外へ飛び出すより、まず屋内の安全と出口を保ちます。その後、火気と電気の扱いを落ち着いて行いましょう。
台風・大雨・洪水:早めの移動が生存率を上げる
風水害は「予告がある災害」です。家に留まるか移動するかは、浸水想定と時間経過で変わります。
ハザードマップで浸水・土砂のリスクが高い場合は、暗くなる前・道路が危険になる前の移動が優先となります。
大雪:移動不能と低体温を前提にする
大雪は「外へ出られない日が続く」ことが本質です。食料より先に、室内の保温と転倒回避(玄関・廊下の動線確保)を整えます。停電を伴う場合は「灯り」と「防寒」が最優先となります。
停電:情報・連絡・医療を切らさない
停電は単独でも起き、地震や台風でも起きます。停電時はスマホがライト・連絡・情報端末を兼ねるため、電池切れがそのまま孤立につながります。
電源は「家電を動かす」ことより先に、灯りと連絡へ最優先で振り向けましょう。
電源編:規模と用途で使い分ける「電気の確保」
災害時の電源は、ポータブル電源のような「大きな電気」だけでなく、乾電池などの「小さな電気」を組み合わせることで生存率が変わります。
Level 1:必ず持っておく小さな電気
- モバイルバッテリー:スマホの命綱です。常に満充電に近いものを1つは確保し、「日常使いしながら回す(ローリングストック※3)」のが基本です。
- 乾電池:懐中電灯やラジオに使います。入れっぱなしは「液漏れ」の原因になるため、防災用機器のそばに「箱のまま」備蓄し、使用時に装填するのが安全です。サイズ変換スペーサーも便利です。
Level 2:普通の車を活用する車載給電
- シガーソケット用USB充電器:PHVやEVでなくても、一般的なガソリン車にはアクセサリーソケットがあります。ここからスマホを充電できる「カーチャージャー」を車載しておくだけで、車が巨大な発電機になります。
※一酸化炭素中毒(※4)を防ぐため、必ず車庫から出し、屋外の通気の良い場所で使用してください。
Level 3:家電を動かす大きな電気
家庭用ポータブル電源:停電直後の灯りと充電、夏場の扇風機などを支えます。
注意:リチウムイオン電池は火災リスクがあります。購入時と使用前後は、リコール情報や外観異常を確認しましょう。
PHV・EVの外部給電:「家庭内の電源を底上げする」強力な選択肢です。車種により手順が異なるため、平時に一度「接続・開始・停止」を試しておくことが重要です。
Level 4:長期戦への備え創る電気
- ソーラーパネル:ポータブル電源への充電用として。天候に左右されますが、「使い切ったら終わり」という精神的不安を和らげます。
- カセットガス発電機:カセットボンベで動く発電機です。燃料が入手しやすく長期保存に向きます。
重要:排気ガスが出るため、屋内での使用は厳禁です。
要介護・在宅療養中の方がいるご家庭へ(最重要)
在宅療養(※5)において、停電は医療機器の停止に直結し、そのまま命に関わる事態になりかねません。
厚生労働省は、災害時に人工呼吸器などの在宅医療機器に支障が出ないよう、医療機関・訪問看護ステーション・機器メーカー等とあらかじめ連携しておくことを強く推奨しています。
いざという時、電源を「何に優先して使うか」を事前に決めておくことが重要です。
- 第一優先:夜間動線の灯り
(暗闇での転倒や、介助中の事故を防ぐため) - 第二優先:連絡手段
(訪問看護、医療機器メーカー、主治医、家族へ助けを求めるため) - 第三優先:療養の継続に必要な機器
(内容は個別で異なります。必ず事前に主治医やメーカーの指示を確認してください)
災害用品は、あれこれ種類を増やすよりも「すぐに取り出せる場所に置く」ことが最も重要です。タップして確認してみましょう。
- 「水・食料」のセット 1人1日3リットル×3日分。ローリングストックで循環させましょう。
- 「光」のセット ライト(両手が空くヘッドライトが理想)+予備電池
- 「排泄」のセット 携帯トイレ+消臭袋+ウェットティッシュ(目安:1人35回分/7日分)
- 「連絡」のセット モバイルバッテリー(またはポータブル電源/PHV給電セット)+充電ケーブル
災害用伝言ダイヤル(171)を利用する場合、録音に使う電話番号をあらかじめ決めておきましょう。
伝言内容は短く、以下の項目を順に話すと状況が伝わりやすくなります。