タクティールケア導入ガイド
スウェーデン発の「触れるケア」の効果と実践
タクティールケアとは
「タクティール(Taktil)」とは、スウェーデン語で「触れる」という意味を持つ言葉です。
このケアは1960年代のスウェーデンで、未熟児医療に携わる看護師が子供たちに毎日優しく触れることで、情緒や症状が安定した経験から始まりました。
その後、その効果が科学的にも認められ、認知症ケアや緩和ケア、痛みの緩和など、幅広い分野で統合医療の一部として体系化されました。
施術者の手で背中や手足を包み込むように、ゆっくりと柔らかく撫でることで、脳内から「オキシトシン(安心ホルモン)」の分泌が促されます。これにより、言葉だけでは届かない不安や痛みを和らげ、深い安らぎをもたらします。
2005年、グスタフ・ストランデル氏(日本スウェーデン福祉研究所設立者)が、スウェーデン王妃シルヴィア陛下が設立した「シルヴィアホーム」と提携し、日本への本格的な導入を行いました。
主な応用領域と効果
認知症ケア
継続的なケアにより、不安や興奮などのBPSD(行動・心理症状)が緩和されます。特に攻撃性の低下に顕著な効果があり、徘徊や不眠の頻度が減少した事例も報告されています。
緩和ケア(終末期)
痛みや不安の軽減に効果的です。副交感神経を優位にし、深いリラクゼーションをもたらすことで、痛みの知覚を和らげるとともに精神的な安らぎを与えます。
精神面の安定
自律神経系に作用し、心拍数の安定やリラックス状態(α波の増加)を導きます。不安の強い方や精神疾患のある方のストレスケアにも活用されています。
日本国内での導入事例
現在、日本国内では特別養護老人ホーム、病院、在宅ケアなど幅広い現場で実践されています。
特別養護老人ホーム「ライフケア黒森」(山形県)
2005年に導入。「手のひらで優しく触れる」ことで、利用者が大切にされている感覚を持つことを重視しています。穏やかな表情が増え、夜間の不安行動が減るなどの効果が定着しています。
今津赤十字病院(福岡県)
認知症に伴う不安・焦燥に対する非薬物療法として導入。地域向けの認知症カフェでも実施され、「人の手ってこんなに温かいのですね」と地域住民からも好評を得ています。
介護付有料老人ホーム「舞浜倶楽部」(千葉県)
ストランデル氏がかつて運営に携わった施設。導入後、徘徊の大幅な減少や要介護度の改善(4から3へ軽減など)が見られ、施設ケアの柱の一つとなっています。
研修・資格認定プログラム
日本スウェーデン福祉研究所(JSCI)等が提供する研修プログラムにより、正しい知識と技術を習得できます。
主なコース内容
| コース名 | 内容・特徴 |
|---|---|
| タクティールケア Iコース (基本) |
2日間。背中・手・足へのケア手技を習得。理論と実技演習により、基礎的な触れ合いケアを学びます。 |
| タクティールケア IIコース (応用) |
2日間。Iコース修了者が対象。顔・頭・腹部への手技を追加で習得し、より幅広い場面でのケアを目指します。 |
| プロフェッショナルコース (指導者養成) |
3日間。認定講師を目指すコース。修了後は自ら講座を開催し、普及活動を行うことが可能になります。 |
資格認定までの流れ
講座を受けるだけでなく、実践を通じた認定プロセスがあります。
- 講座受講
2日間の講義と実技演習を受講し、受講証明書を取得します。 - 実習(ケースワーク)
職場や自宅で「60回」の施術実践を行います(3名×20回など)。実施記録を作成し提出します。 - 認定試験
筆記試験と実技試験(背中・手・足)を受験します。 - 資格認定
合格すると認定証が発行され、正式に「認定タクティールケア」の資格が得られます。
※資格は3年ごとの更新制です。