(記録編)その支援は「見えない」
だからこそ、足跡を残す
ケアマネジャーの仕事には、あまりにも「見えない時間」が多すぎます。
移動中の車内で悩み続けた時間、利用者宅の玄関先で靴を履きながら交わした最後の一言、夜間に家族からの電話を受けて受話器越しに頷き続けた30分。
そのどれもが、利用者の在宅生活を支える決定的な瞬間です。
しかし、残酷なことに、記録に残らなければ、第三者(行政や他職種)の視点では「何もしていなかった」ことになってしまいます。
「こんなに動いたのに」「あの時、必死で調整したのに」。現場で生まれる理不尽の正体は、支援不足ではなく、支援の「不可視化」にあります。
記録を書くのは、運営指導(実地指導)・監査のためだけではありません。
あなたがその人の人生に寄り添い、守ろうとした「証(あかし)」を、未来へ残すためです。
1. 記録は「自分を守る盾」であり「未来へのバトン」
認知症の独居利用者が、ふと漏らした「寂しい」という言葉。それを記録に残したからこそ、数ヶ月後のカンファレンスでデイサービスの回数を増やす根拠になります。
記録は、過去のあなたから未来のあなたへ、そして引き継ぐ誰かへと渡す「バトン」です。
美しい文章を書く必要はありません。文学的な表現も不要です。
必要なのは、「揺るがない事実」と「専門職としての思考プロセス」を、シンプルな型に落とし込むことだけです。
① 事実(S・O)
「誰が・いつ・何を言ったか」「何を見たか」。
ここには感情を混ぜません。
×「家族は怒っていた」
○「家族は強い口調で『納得できない』と発言した」
② 判断(A)
事実に対し、ケアマネとしてどう考えたか。
「緊急性が高いと判断」「見守りが必要と思料」「意向を尊重し様子観察」など、プロの思考を残します。
③ 対応(P)
「何をしたか」「次に何をするか」。
ここが抜けると「考えたけど何もしなかった」と誤解されます。「○○へ連絡」「次回訪問時に再確認」で結びます。
2. 限界まで忙しい日は「3行」で乗り切る
月末の集中業務、突発的な退院調整、困難事例の対応…。ゆっくりPCに向かう時間なんてない日があります。
そんな時は、完璧を目指さず「3行」で成立させましょう。これさえあれば、支援は消えません。
例えば、電話で「サービスを休みたい」と言われた時。
「長女よりTEL。本人発熱のため明日のDS中止希望。受診済みで薬あり。DSへ欠席連絡済み。明後日、解熱状況を電話確認する。」
これだけで十分です。後から誰が見ても状況がわかります。
3. 「書かないこと」を決めると強くなる
記録疲れの原因は「感情や推測まで書こうとする」ことにあります。
推測、人格否定、曖昧な表現(いつも、だいたい)は書きません。これらは後に火種になります。
× 主観的(推測・感情)
「長男は介護に非協力的だ」
(人格評価・主観)
「本人はいつもわがままばかり言う」
(感情的なレッテル貼り)
○ 客観的(事実として残す)
「長男へ協力を依頼したが『仕事で無理』と返答あり」
(事実の記述)
「本人は『自宅以外には行きたくない』と強い口調で発言」
(発言そのものを記録)
4. そのままコピペで使える!
ケアマネ記録テンプレート100選
現場で遭遇するあらゆる場面を網羅しました。( )の中を埋めるだけで、プロとしての記録が完成します。
【基本モニタリング・生活状況】
No.1 定期訪問(基本・特変なし)
■観察:顔色良好、室内の整理整頓もされており変化なし。
■聴取:「(特に困ったことはない、元気にしている)」との発言あり。
■評価:心身機能・生活環境ともに安定しており、現行プランで継続可能と判断。
■次手:次回は(予防接種の予定)について確認する。
No.2 定期訪問(家族面談含む)
■観察:本人はベッド臥床中だが、呼びかけに開眼あり。
■妻発言:「(夜間も良く寝てくれているので助かっている)」
■評価:家族の介護負担感は軽減されており、在宅生活の継続が可能と判断。
No.3 デイサービス利用状況(意欲)
■発言:「(お風呂が楽しみ/友人ができた)」と笑顔で話される。
■評価:外出機会の確保と社会交流の目的が達成されており、利用継続の意欲も高い。
No.4 デイサービス(拒否・休みがち)
■理由:「(朝起きるのが億劫/行けば楽しいが行くまでが面倒)」との訴え。
■対応:事業所と相談し、迎えの際の声掛けを工夫(本人の役割作り等)することで様子を見る。
No.5 訪問介護(生活援助の評価)
■観察:冷蔵庫内の食材は整理され、室内も清潔に保たれている。
■評価:独居生活における衛生・栄養管理の基盤となっており、不可欠な支援と判断。
No.6 訪問介護(身体介護の評価)
■観察:皮膚トラブルなく、清潔保持されている。
■評価:身体的清潔保持と家族の負担軽減が図れている。
No.7 福祉用具(手すり・歩行器)
■観察:トイレ移動時に手すりを把持し、安定して移動できていることを確認。
■評価:転倒予防と自立支援に寄与しており、貸与継続が必要。
No.8 福祉用具(ベッド・車椅子)
■評価:離床機会の確保と家族の介護負担軽減に役立っているため継続。
No.9 ショートステイ利用中
■家族:介護から離れ休息が取れていることを確認。
■評価:在宅生活継続のためのレスパイト機能として有効に機能している。
No.10 定期受診の確認
■内容:主治医より「(数値は安定している/現状維持で良い)」との説明あり。
■処方:変更なし。
■評価:医療的な管理が継続できており、病状は安定している。
No.11 家族介護者の状況(レスパイト)
■観察:表情穏やか、疲労困憊の様子なし。
■発言:「(サービス利用中は自分の仕事ができるので助かる)」
■評価:介護と仕事の両立が図れており、サービス利用が適切に機能している。
No.12 食事摂取状況(自立・良好)
■観察:食事中の姿勢も安定しており、箸を使用して自力摂取可能。
■評価:栄養状態および摂食機能は維持されている。
No.13 食事摂取状況(食欲低下)
■対応:好きなものや食べやすい形態(ゼリー等)の活用を提案。
■次手:体重減少が見られる場合は主治医へ相談する。
No.14 水分摂取状況(脱水予防)
■観察:口腔内の乾燥なし、皮膚のツルゴール正常。
■評価:脱水兆候は見られず、適切な水分管理ができている。
No.15 睡眠状況(良眠)
■観察:日中の過度な傾眠も見られない。
■評価:生活リズムが整っており、睡眠状態は良好。
No.16 睡眠状況(不眠・昼夜逆転)
■観察:日中うとうとしている時間が増えている。
■対応:日中の活動量を増やすため、デイでのレク参加を促すよう事業所へ依頼。
No.17 排泄状況(自立・ポータブル)
■評価:失敗なく自立しており、本人の尊厳保持および転倒リスク軽減に繋がっている。
No.18 排泄状況(失禁・オムツ)
■対応:パッドを長時間用に変更し、漏れと皮膚トラブルを防ぐ対策を実施。
No.19 入浴状況(自宅・自立)
■評価:浴槽の出入りも安定しており、現状の環境で安全に実施可能と判断。
No.20 入浴状況(拒否・不潔)
■対応:清拭や足浴から提案し、清潔保持の動機づけを行う。
No.21 更衣動作
■評価:残存機能の活用として、見守りつつ自分で行うよう支援を継続。
No.22 整容・身だしなみ
■評価:生活意欲が維持されていると判断。