介護保険利用者のための給付・減免・税制優遇ガイド
この記事の要点まとめ
この記事は、「要介護/要支援認定を受け、介護保険サービスを利用している人」が、申請または手続により家計負担の軽減につながる制度(給付・助成・補助・減免・優遇)を、国制度と自治体制度(都道府県・市区町村)および税制優遇まで含めて体系化したものです。
費用負担に直結しやすい“優先順位の高い申請”は、以下の7点です。
- 高額介護(予防)サービス費:介護保険の自己負担が月上限を超えた場合の払い戻し(初回申請後は自動償還が一般的)。
- 高額医療・高額介護合算制度:医療保険と介護保険の年間自己負担を合算して上限超過分を支給(毎年8月~翌年7月計算)。
- 負担限度額認定(補足給付):施設入所・ショートステイ利用時の食費・居住費(滞在費)を所得・資産要件により軽減。
- 社会福祉法人等による利用者負担軽減制度:低所得者を対象とする介護サービス費・食費・居住費の一定割合軽減。
- 医療費控除(介護保険サービス):居宅サービスは“医療系+併用条件”の判定が要点。領収証に対象額が記載される。
- おむつ代の医療費控除:令和6年10月改正により、市町村確認書や主治医意見書の写しで適用可能になるケースがある。
- 障害者控除対象者認定書:要介護資料等を基に市区町村が発行し、障害者手帳がなくても障害者控除の適用余地が生じる。
前提と制度マップ
対象となる方と自己負担のしくみ
この記事が対象としているのは、要介護・要支援認定を受け、介護保険サービス(居宅、地域密着、施設、介護予防・総合事業を含む)を利用している人です。介護保険の利用者負担は原則1割ですが、所得等の条件により2割または3割となります。
この「負担割合」は、月上限払い戻し(高額介護サービス費)・年上限合算(高額医療・高額介護合算)・医療費控除計算に連動するため、各年の「介護保険負担割合証」等の把握が起点となります。
申請の時効・遡及の実務注意
介護保険給付を受ける権利には消滅時効が関係し、給付の追加支給は一定期間に限られます。また、自治体独自助成(おむつ・介護用品等)は「申請月以降のみ」を要件とする例が多く、遡及不可を明記する自治体が多いため早期の申請が重要です。
主要制度一覧(表A)
| 制度名 | 管轄 | 主な給付・要件 | 申請窓口 |
|---|---|---|---|
| 高額介護(予防)サービス費 | 国(介護)+市区町村 | 月の自己負担合計が所得区分別上限超過で、超過分を支給。上限例:44,400円等(世帯)。 | 市区町村の介護保険担当 |
| 高額医療・高額介護合算制度 | 国(医療+介護)+保険者 | 1年(8/1~7/31)の医療+介護自己負担合算が基準額超過で支給。 | 基準日加入の医療保険窓口 |
| 負担限度額認定(補足給付) | 国(介護)+市区町村 | 施設・短期入所の食費・居住費を軽減。預貯金等基準あり。 | 市区町村の介護保険担当 |
| 社会福祉法人等による利用者負担軽減 | 国+市区町村+実施法人 | 市民税非課税等で生計困難な方へ、サービス費・食費等を原則1/4軽減。 | 市区町村+対象サービス提供法人 |
| 住宅改修費支給 | 国(介護)+市区町村 | 支給限度基準額20万円。事前確認・理由書・見積・写真等が必要。 | 市区町村の介護保険担当(事前) |
| 特定福祉用具購入費支給 | 国(介護)+市区町村 | 年度上限10万円(購入額)。指定事業者からの購入が要件。 | 市区町村の介護保険担当 |
介護保険での申請・減免・給付制度
- 管轄
- 国(介護保険制度)/市区町村(保険者)が支給事務。
- 対象要件
- 同一月の介護保険サービス等の利用者負担(1~3割)の合計が、所得区分に応じた月上限を超えること。(食費・居住費や住宅改修等は対象外)
- 受給内容
- 上限超過分を支給。上限の例:世帯区分により140,100円/93,000円/44,400円/24,600円等。
- 申請手続
- 対象者に申請書が送付され、初回のみ窓口等で申請。2回目以降は同口座へ自動償還となる運用が一般的。
- 管轄
- 国(医療保険+介護保険)/申請窓口は医療保険の保険者。
- 対象要件
- 同一世帯で、1年間(原則8月~翌7月)の医療・介護自己負担合算が、所得区分別の基準額を超えること。
- 申請手続
- 基準日(7/31)時点の加入医療保険へ申請。保険者変更がある場合は自己負担額証明書等が必要。
- 管轄
- 国(介護保険制度)/市区町村(保険者)。
- 対象要件
- 施設・ショートステイ利用者のうち、世帯全員が非課税で、かつ預貯金等が段階別基準(例: 第2段階は単身650万円以下等)以下であること。
- 受給内容
- 食費・居住費(滞在費)を段階別の「負担限度額」までに抑える。※令和6年8月に居住費が改定。
- 対象要件
- 市町村民税非課税世帯で、収入・資産・扶養状況等の条件を満たし生計困難と認められる者。
- 受給内容
- 原則として利用者負担の1/4(老齢福祉年金受給者は1/2)を軽減。免除は扱わない。
- 注意点
- 軽減を実施していない法人・事業所が存在し得るため、利用先への確認が必要。
医療保険・関連制度での申請・減免
- 管轄
- 国(医療保険制度)/加入医療保険の保険者。
- 対象要件
- 同一月の医療機関窓口での自己負担が高額となり、所得・年齢区分の限度額を超える場合。
- 注意点
- マイナ保険証の普及により、「限度額適用認定証」の新規発行を廃止し、オンライン資格確認による限度額適用へ移行中。
- 管轄
- 厚生労働省/ハローワーク(原則、事業主経由で申請)。
- 受給内容
- 休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 67% で算定。課税対象外。
税制優遇・非課税措置の整理
| 控除名・特例 | 対象と要件 | 計算例・上限(概念) | 必要書類等 |
|---|---|---|---|
| 医療費控除 (介護保険居宅サービス) |
医療系(訪問看護等)+併用条件の福祉系が対象。生活援助中心型等は対象外。 | 医療費控除全体枠で整理。高額介護サービス費の戻り分は差し引く。 | 領収証(医療費控除対象額の記載あり) |
| おむつ代(医療費控除) | 寝たきり度・失禁等要件を満たす者。 | 医療費控除枠内。※令和6年10月改正あり。 | おむつ使用証明書/主治医意見書の写し/市町村確認書等 |
| 障害者控除 | 本人/同一生計配偶者/扶養親族が対象。 | 27万・40万・75万(所得税の控除額) | 障害者手帳、または自治体の「障害者控除対象者認定書」 |
| 社会保険料控除 | 自己または同一生計親族の負担すべき社会保険料(介護保険料含む)を支払った者。 | 支払額全額(年金特別徴収の場合は本人控除のみに留意) | 保険料納付額が分かるもの |
| 住宅改修関連税制 | 一定のバリアフリー改修を行った自己居住家屋(所得税・固定資産税)。 | 固定資産税は翌年度分1/3減額等。要介護認定者が要件に含まれる。 | 増改築等工事証明書等 |
おむつ代の医療費控除(令和6年10月改正点)
令和6年10月10日付の改正通知により、医師のおむつ使用証明書がなくても、「市町村が主治医意見書の内容を確認した書類」または「主治医意見書の写し」により、要件(寝たきり度と失禁への対応)が確認できれば対象となります。令和7年に確定申告を行う際から適用されます(市区町村が確認書を交付するかは任意判断のため、窓口への確認が必要です)。
障害者控除と「障害者控除対象者認定書」
高齢者の場合、身体障害者手帳等がなくても、市区町村が要介護認定資料等を基に「障害者に準ずる者」として認定し、認定書を交付する運用があります。これにより税法上の障害者控除(27万円〜75万円)が適用可能になるケースが多々あります。
市区町村独自のサポート・割引サービス(よくある例)
お住まいの市区町村が独自に行っているサポートです。地域によって対象となる方や金額が異なるため、必ず役所の窓口やホームページ等で確認してください。
対象要件: 在宅(施設入所者除外)、要介護度(例:要介護3~5等)、失禁・寝たきり状態、所得段階。
注意点: 遡及不可(申請月以降から適用)を明記する自治体が多いため、必要になったら即申請が鉄則です。
対象要件: 65歳以上のひとり暮らし等で、健康不安がある者。
内容: ペンダント型ボタン等の貸与。所得段階により利用料が免除・減額される場合があります。
よくあるご質問(FAQ)
申請の流れと、今すぐできること
申請完了までのスケジュール目安
まとめ:今日からできる、お金の負担を軽くする4つのこと
介護保険サービスを利用する際の家計負担は、「介護保険制度で安くなるもの」「税金が安くなるもの」「市区町村ごとの独自の助成」の3つを組み合わせることで減らすことができます。
まず始めに確認したい4つのポイント:
(1) 毎月の領収証を確認し、「高額介護サービス費」などの払い戻しの対象にならないかチェックする。
(2) 施設やショートステイを利用する場合は、食費などが安くなる「負担限度額認定」を早めに申請する。
(3) 確定申告に向けて、医療費控除の対象額を確認し、「おむつ使用証明」や「障害者控除認定書」の準備を始める。
(4) おむつ代の助成など、お住まいの市区町村独自の制度がないか役所のホームページ等で確認し、必要になったらすぐに申請する。