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成年後見制度・任意後見・日常生活自立支援事業

成年後見制度(判断能力が十分でない方の財産管理や契約を、家庭裁判所が選任した支援者などが支える制度です)※1・任意後見・日常生活自立支援事業

判断能力や身寄りの問題がある方の権利と暮らしを支える制度

制度内容基準日:2026年8月2日

認知症、知的障害、精神障害、脳血管疾患の後遺症などにより、契約や財産管理について一人で判断することが難しくなる場合があります。

また、判断能力に大きな問題がなくても、身近に頼れる親族がいない、通帳や重要書類の管理が難しい、福祉サービスの手続が分からないといった事情から、日常生活に支障が生じることがあります。

このような場面で利用を検討する制度が、成年後見制度、任意後見制度(判断能力があるうちに、将来支援を頼む人と支援内容を公正証書で決めておく制度です)※3、日常生活自立支援事業です。

ただし、これらは同じ制度ではありません。支援を開始する時点の判断能力、必要な支援の範囲、家庭裁判所の関与、支援者に与えられる権限、利用に必要な費用などが異なります。

さらに、成年後見制度については、2026年6月に大規模な改正法が成立しました。改正法では、現在の「後見・保佐・補助」という三つの類型を補助制度に一元化し、本人に必要な範囲で利用できる制度へ変更することなどが定められています。

もっとも、成年後見制度に関する改正部分は、2026年8月2日現在、まだ施行されていません。現在の申立てや後見事務には、原則として従来の制度が適用されます。

このページでは、まず現在利用できる制度を説明し、その後に改正法の内容と今後の注意点を整理します。

1.成年後見制度とは

成年後見制度は、認知症、知的障害、精神障害などにより判断能力が十分でない人について、家庭裁判所が選任した成年後見人(現行制度で、判断能力を欠く常況にある方の法律行為や財産管理を支援するため家庭裁判所が選任する人です)※4保佐人(現行制度で、判断能力が著しく不十分な方の重要な行為を同意・取消しなどにより支援する人です)※5補助人(現行制度で、判断能力が不十分な方を家庭裁判所が定めた範囲で支援する人です)※6などが、財産管理や契約を支援する制度です。

成年後見制度には、次の二つがあります。

  • 判断能力が低下した後に家庭裁判所へ申し立てる「法定後見制度(本人の判断能力が低下した後に、家庭裁判所への申立てによって支援者を選ぶ制度です)※2
  • 判断能力が十分なうちに、将来の支援者と支援内容を決めておく「任意後見制度」

成年後見制度の中心となる仕事は、本人の財産を管理することと、本人の生活や療養、介護に関する契約を整えることです。

財産管理に含まれる主な仕事

  • 預貯金や現金の管理
  • 年金や各種給付金の受領
  • 医療費、介護費、家賃、公共料金などの支払い
  • 不動産の管理や売却
  • 保険契約に関する手続
  • 税金の申告や納付
  • 相続手続や遺産分割
  • 借金や未払金の整理
  • 不利益な契約の取消し
  • 本人の財産状況を家庭裁判所へ報告すること

身上保護に含まれる主な仕事

「身上保護」とは、本人の生活、療養看護、介護、住居などについて必要な契約や手続を整えることです。

  • 介護保険の申請
  • ケアマネジャーや介護事業所との契約
  • 障害福祉サービスの申請と契約
  • 病院への入院契約
  • 介護施設への入所契約
  • 住居の賃貸借契約
  • 医療費や介護費の支払い
  • 本人の生活状況を把握するための面会
  • 支援者や関係機関との連絡調整
  • 必要に応じたサービスの変更

ここで大切なのは、成年後見人等が直接介護をする制度ではないという点です。

成年後見人等は、食事介助、排泄介助、掃除、買物、通院同行などを職務として引き受けるものではありません。必要な介護サービスや生活支援を利用できるよう、契約と費用の支払いを整える立場です。

2.法定後見制度の「後見・保佐・補助」の違い

2026年8月2日現在の法定後見制度には、「後見」「保佐」「補助」の三つの類型があります。

どの類型を利用するかは、病名だけでは決まりません。本人が契約や財産管理の意味をどの程度理解し、自分で判断できるかによって判断されます。

| 類型 | 判断能力の目安 | 支援者 | 主な権限 | | -- | --------------- | ----- | ----------------------------- | | 後見 | 判断能力を欠く状態が通常である | 成年後見人 | 原則として広い代理権(本人に代わって契約などの法律行為を行う権限です)※7と取消権 | | 保佐 | 判断能力が著しく不十分である | 保佐人 | 重要な財産行為についての同意権・取消権。必要に応じて代理権 | | 補助 | 判断能力が不十分である | 補助人 | 家庭裁判所が定めた行為についての同意権、取消権、代理権 |

後見

後見は、本人が日常的な買物を含め、財産や契約について自分で判断することが難しく、継続的に広い支援が必要な場合に利用されます。

成年後見人には、本人の財産に関する広い代理権があります。本人に代わって預貯金を管理し、介護サービス、施設入所、不動産売却などの契約を進めることができます。

また、本人が成年後見人の関与なく契約した場合、日用品の購入など日常生活に関する行為を除き、成年後見人が取り消せる場合があります。

例えば、本人が訪問販売で高額な商品を購入した、不必要なリフォーム契約を締結した、理解しないまま高額な金融商品を契約したといった場合です。

ただし、取消しが本人にとって常に有利とは限りません。契約内容、商品の使用状況、相手方との関係などを踏まえ、本人の利益になるかを個別に考える必要があります。

保佐

保佐は、日常的な買物は一人でできても、借金、不動産売却、相続、訴訟などの重要な財産行為を一人で適切に判断することが難しい場合に利用されます。

保佐人は、民法第13条第1項に定められた重要な財産行為について同意権と取消権を持ちます。

対象となる主な行為は次のとおりです。

  • 預金の元本を受け取ること
  • 借金をすること
  • 他人の保証人になること
  • 不動産など重要な財産を取得または処分すること
  • 訴訟をすること
  • 贈与、和解、仲裁合意をすること
  • 相続の承認や放棄をすること
  • 遺産分割協議をすること
  • 新築、改築、増築、大規模修繕をすること
  • 長期間の賃貸借契約を結ぶこと

本人が保佐人の同意を得ずにこれらの行為をした場合、保佐人または本人が取り消せることがあります。

一方、保佐人には当然に包括的な代理権が与えられるわけではありません。本人に代わって預金を払い戻す、施設契約をする、不動産を売却するといった代理行為が必要な場合は、家庭裁判所に代理権付与を申し立てます。

代理権を付けるには、原則として本人の同意が必要です。

補助

補助は、本人に一定の判断能力があるものの、特定の契約や財産管理について支援を受けたほうがよい場合に利用されます。

補助人の権限は、家庭裁判所が必要な範囲に限定して定めます。

例えば、次のような設定が考えられます。

  • 高額な預貯金の払戻しに限って代理権を付ける
  • 介護施設への入所契約について代理権を付ける
  • 不動産売却について同意権と取消権を付ける
  • 遺産分割協議について代理権を付ける
  • 障害福祉サービスの契約について代理権を付ける

本人以外の人が補助開始を申し立てる場合、原則として本人の同意が必要です。同意権、取消権、代理権を付ける場合にも、本人の同意が基本となります。

本人の自己決定をできる限り残し、必要な部分だけを支援する制度であることが、補助の特徴です。

3.病名だけで類型を決めない

「認知症だから後見」「精神障害だから保佐」「知的障害が軽度だから補助」と機械的に決めることはできません。

同じ病名でも、判断能力や生活状況には大きな違いがあります。

例えば、認知症があっても、支援者から説明を受ければ介護サービスの内容を理解し、自分の希望を伝えられる人がいます。一方、症状が進み、預金や契約の意味がほとんど分からなくなっている人もいます。

精神障害では、症状が時期によって変動することがあります。知的障害では、分かりやすい説明や支援者の同席によって、本人が自分で選択できる場合があります。

家庭裁判所は、医師の診断書だけでなく、本人情報シート、申立事情説明書、本人との面談、親族や支援者からの情報などを踏まえて判断します。

制度を検討するときは、「本人が何もできない」とまとめるのではなく、次のように具体的に整理することが重要です。

  • 日常の買物は一人でできるか
  • ATMを使えるか
  • 通帳残高や毎月の収支を理解できるか
  • 医療費や介護費を支払えるか
  • 契約内容を理解できるか
  • 複数の選択肢を比較できるか
  • 不利益な条件に気づけるか
  • 支援を受けながら意思を伝えられるか
  • 詐欺や訪問販売の被害に遭っていないか
  • 相続や不動産売却などの課題があるか

4.成年後見人等には誰が選ばれるのか

成年後見人等を選ぶのは家庭裁判所です。

申立書に候補者を書くことはできますが、候補者が必ず選ばれるわけではありません。本人の財産、家族関係、必要な法律行為、利益相反の有無、候補者の適性などを踏まえ、家庭裁判所が選任します。

成年後見人等になる人には、次のような例があります。

  • 配偶者、子、きょうだいなどの親族
  • 弁護士
  • 司法書士
  • 社会福祉士
  • 社会福祉協議会
  • NPO法人、一般社団法人などの法人
  • 市民後見人

財産が多い、親族間に対立がある、不動産処分や訴訟がある、相続関係が複雑であるといった場合には、弁護士や司法書士などの専門職が選ばれることがあります。

生活支援や福祉的な調整が中心となる場合には、社会福祉士や福祉関係法人、市民後見人などが候補になることがあります。

事案によっては、親族と専門職など、複数の成年後見人等が選ばれる場合もあります。成年後見監督人、保佐監督人、補助監督人が選任され、成年後見人等の事務を監督する場合もあります。

5.申立てができる人

現在の法定後見制度では、主に次の人が申立てをすることができます。

  • 本人
  • 配偶者
  • 四親等内の親族
  • 成年後見人
  • 成年後見監督人
  • 保佐人
  • 保佐監督人
  • 補助人
  • 補助監督人
  • 任意後見受任者
  • 任意後見人
  • 任意後見監督人
  • 検察官
  • 市区町村長

四親等内の親族には、子、孫、父母、祖父母、きょうだい、おじ・おば、おい・めい、いとこなどが含まれます。親族関係によっては四親等に含まれない場合もあるため、戸籍上の関係を整理する必要があります。

ケアマネジャー、介護事業所、病院、相談支援専門員、民生委員、友人、近隣住民などには、原則として直接の申立権がありません。

ただし、本人の権利や財産が侵害されている場合には、地域包括支援センター、区役所、基幹相談支援センターなどへ情報を伝え、市区町村長申立てにつなげることができます。

6.家庭裁判所への申立て

申立先は、原則として本人の住所地を管轄する家庭裁判所です。

ここでいう住所地は、住民票の住所だけでなく、本人が実際に生活している場所を基準に判断されることがあります。長期間入院している場合や施設に入所している場合は、事前に管轄する家庭裁判所へ相談するとよいでしょう。

横浜市内に住所がある人については、通常、横浜家庭裁判所が申立先となります。

主な申立書類

一般的には、次のような書類を準備します。

  • 後見・保佐・補助開始申立書
  • 申立事情説明書
  • 親族関係図
  • 本人の財産目録
  • 相続財産目録
  • 本人の収支予定表
  • 後見人等候補者事情説明書
  • 親族の意見書
  • 本人の戸籍謄本
  • 本人の住民票または戸籍附票
  • 候補者の住民票または戸籍附票
  • 本人が登記されていないことの証明書
  • 成年後見制度用の医師の診断書
  • 本人情報シート
  • 介護保険被保険者証や認定結果通知書の写し
  • 障害者手帳や療育手帳の写し
  • 預貯金、保険、不動産、負債などの資料
  • 年金、給与、生活保護費などの収入資料
  • 医療費、介護費、家賃などの支出資料

必要書類は事案や家庭裁判所によって異なります。最新の様式は、裁判所の後見ポータルサイトから取得できます。

申立て後の流れ

おおむね次のように進みます。

  1. 申立書類を家庭裁判所へ提出する
  2. 家庭裁判所が書類を審査する
  3. 申立人、本人、候補者などへの事情聴取を実施する
  4. 必要に応じて親族へ意向を尋ねる
  5. 必要に応じて医師による鑑定を実施する
  6. 家庭裁判所が類型と成年後見人等を決める
  7. 審判書が関係者へ送付される
  8. 審判の確定後、成年後見登記が登録される
  9. 成年後見人等が財産調査と支援を開始する

申立てから審判までの期間は事案によって異なります。親族間に対立がある、財産関係が複雑である、本人の居所が定まらない、鑑定が必要であるといった場合には、長期間を要することがあります。

緊急に財産を保全する必要がある場合には、審判前の保全処分を検討する場面もあります。個別の手続については弁護士または司法書士へ相談してください。

7.医師の診断書と本人情報シート

成年後見制度の申立てでは、家庭裁判所が定めた様式による医師の診断書を提出します。

診断書では、病名だけでなく、本人の判断能力について、後見、保佐、補助のどの状態に相当する可能性があるかが記載されます。

診断書を作成する医師

成年後見制度用の診断書は、必ずしも精神科医だけが作成するものではありません。

本人の心身の状態や生活状況を把握している主治医であれば、内科医、老年内科医、神経内科医、脳神経外科医などが作成する場合があります。

ただし、医師が本人の判断能力を評価するための情報を十分に持っていない場合、専門医の受診や追加の検査を案内されることがあります。

診断書の作成を依頼するときは、医療機関へ成年後見制度の申立てに使うことを伝え、裁判所指定の書式を渡します。

本人情報シート

本人情報シートは、ケアマネジャー、相談支援専門員、医療ソーシャルワーカー、施設職員、社会福祉士など、本人の生活を支援している福祉関係者が作成する資料です。

主に次の内容を整理します。

  • 生活場所
  • 日常生活動作
  • 認知機能や精神状態
  • 意思疎通の方法
  • 金銭管理の状況
  • 福祉サービスの利用状況
  • 家族や支援者との関係
  • 本人が希望している生活
  • 今後必要になる支援

本人情報シートは診断書とは異なり、医学的診断をする書類ではありません。生活場面で本人ができること、支援を受ければできること、難しいことを医師や家庭裁判所へ伝えるための資料です。

8.鑑定とは

診断書とは別に、家庭裁判所が医師へ判断能力の鑑定を依頼することがあります。

現在の制度では、後見と保佐については原則として鑑定が必要とされていますが、診断書や関係資料から判断能力の状態が明らかな場合などには省略されることがあります。補助では、通常、鑑定を要しないことが多くなっています。

鑑定料は事案や医療機関によって異なります。数万円から十万円程度となることがありますが、申立て前に一律の金額を断定することはできません。

鑑定が必要になった場合は、家庭裁判所から納付方法などの案内があります。

9.申立費用

法定後見の申立てでは、一般に次の費用が必要です。

  • 申立手数料
  • 登記手数料
  • 家庭裁判所へ納める郵便切手
  • 戸籍謄本、住民票などの取得費
  • 登記されていないことの証明書の取得費
  • 医師の診断書作成料
  • 必要になった場合の鑑定料
  • 弁護士や司法書士へ依頼した場合の報酬

申立手数料は、後見・保佐・補助開始について通常800円分の収入印紙が基本となります。ただし、保佐や補助で代理権付与、同意権付与を併せて申し立てる場合は、追加の手数料が必要になります。

登記手数料は通常2,600円分の収入印紙です。

郵便切手の金額と内訳は家庭裁判所によって異なり、改定されることがあります。申立ての直前に管轄家庭裁判所の案内を参照してください。

申立費用は原則として申立人が準備します。ただし、申立ての際に手続費用を本人に負担させることを希望し、家庭裁判所が相当と判断した場合は、本人の財産から負担できることがあります。

資力が乏しい場合には、法テラスの民事法律扶助、自治体の成年後見制度利用支援事業などを利用できる可能性があります。

10.成年後見人等の報酬

成年後見人等の報酬は、本人や家族が自由に金額を決めて支払うものではありません。

成年後見人等が家庭裁判所へ報酬付与を申し立て、家庭裁判所が事務内容、管理財産額、本人の生活状況、特別な業務の有無などを踏まえて金額を決めます。

親族が成年後見人等になった場合でも、報酬付与を申し立てることができます。反対に、親族だから自動的に無報酬になるわけではありません。

専門職が選ばれた場合には、通常、継続的な報酬が本人の財産から支払われます。

基本報酬と付加報酬

報酬には、日常的な財産管理や身上保護に対する基本報酬と、特別に難しい仕事を担当した場合の付加報酬があります。

付加報酬の対象になり得る仕事には、次のようなものがあります。

  • 不動産の売却
  • 遺産分割協議
  • 債務整理
  • 訴訟対応
  • 親族間の紛争への対応
  • 多数の金融資産の整理
  • 本人の居所変更に伴う複雑な調整

報酬額は各事案について家庭裁判所が決めるため、「必ず月額何円」と一律に案内することはできません。

最高裁判所は、報酬付与申立ての書式を裁判所ウェブサイトで公開しています。

11.本人の財産と家族の財産は分けて管理する

親族が成年後見人等になった場合でも、本人の財産を家族の共有財産のように扱うことはできません。

次のような支出は問題になる可能性があります。

  • 家族の生活費を本人の預金から支払う
  • 本人名義の財産を親族へ贈与する
  • 本人の財産を親族へ無利息で貸す
  • 本人の預金から親族の借金を返済する
  • 本人の利益と関係のない冠婚葬祭費を支払う
  • 記録を残さず多額の現金を引き出す
  • 相続対策だけを目的として本人の財産を移す

本人が以前から家族へ生活費を渡していた場合でも、成年後見開始後に同じ支出を継続できるとは限りません。本人の生活、扶養義務、従来の経緯、本人の意思、財産状況などを踏まえる必要があります。

親族後見人であっても、本人の通帳、印鑑、現金、領収書などを分け、収支を記録し、家庭裁判所へ報告します。

12.本人の意思を尊重する

成年後見制度は、本人の意思を置き換えるためだけの制度ではありません。

成年後見人等には、本人の意思を尊重し、心身の状態と生活状況に配慮する責務があります。

本人に認知症や障害があっても、すべての意思決定能力を失うわけではありません。話す時間帯、説明方法、場所、同席者などを工夫すれば、自分の希望を伝えられる場合があります。

支援者には、次のような対応が必要です。

  • 本人が理解しやすい言葉で説明する
  • 写真、図、実物などを使う
  • 選択肢を増やしすぎない
  • 急いで結論を迫らない
  • 本人が落ち着いている時間に話す
  • 本人が信頼する支援者に同席してもらう
  • 表情や行動も含めて意向を把握する
  • 過去の生活歴や価値観を踏まえる
  • 支援者の都合だけで決めない
  • 本人にとって不利益が大きい場合は代替案を検討する

本人の希望が支援者の考えと異なるという理由だけで、本人の意思を無視することは適切ではありません。

一方、本人の希望どおりに進めると生命、身体、住居、財産に重大な危険が生じる場合もあります。その場合は、本人の意思、危険の程度、代替手段、支援によって危険を減らせる可能性などを多職種で検討します。

13.任意後見制度とは

任意後見制度は、本人の判断能力が十分なうちに、将来判断能力が低下した場合に備えて、支援してもらう人と支援内容を契約で決めておく制度です。

支援を依頼する本人を「任意後見委任者」、支援を引き受ける人を「任意後見受任者」といいます。

任意後見契約は、公証人が作成する公正証書によって締結しなければなりません。

本人の判断能力が低下した後、家庭裁判所が任意後見監督人を選任すると、任意後見契約の効力が生じます。その後、任意後見受任者は「任意後見人」として契約に定められた仕事を担当します。

任意後見契約で定められる主な内容

  • 預貯金の管理
  • 年金の受領
  • 医療費、介護費、公共料金などの支払い
  • 税金に関する手続
  • 介護保険や障害福祉サービスの手続
  • 病院への入院契約
  • 介護施設への入所契約
  • 住居の管理
  • 不動産の管理や処分
  • 保険契約に関する手続
  • 定期的な生活状況の把握
  • 関係機関との連絡調整

任意後見人の代理権は、契約書に記載された範囲に限られます。契約書にない行為を、任意後見人が当然に代理できるわけではありません。

14.任意後見制度を利用できる時期

任意後見契約を結ぶには、本人が契約内容を理解し、自分の意思で支援者と支援内容を決められる判断能力を持っている必要があります。

認知症の診断を受けたら直ちに契約できなくなるわけではありません。軽度の認知機能低下があっても、契約内容を理解して意思を表明できれば、契約できる可能性があります。

反対に、本人が契約の目的、任意後見人に与える権限、費用、将来の影響などを理解できない状態では、有効な契約を結ぶことが難しくなります。

任意後見を希望する場合は、判断能力が十分な段階で、公証役場、弁護士、司法書士、よこはま成年後見推進センターなどへ相談することが大切です。

15.任意後見契約の三つの形

任意後見契約は、開始時期との関係から、一般に次の三つの形で説明されます。

将来型

本人の判断能力が十分なうちは任意後見受任者による支援を開始せず、判断能力が低下した後に任意後見監督人の選任を申し立てる形です。

契約後から判断能力が低下するまでの間、本人と任意後見受任者の関係が薄くなり、開始時期を見失うおそれがあります。定期的に連絡を取る仕組みを併せて作ることが大切です。

移行型

任意後見契約と同時に、見守り契約や財産管理等委任契約を結び、判断能力が十分な段階から支援を受けます。

身体が不自由で銀行や役所へ行けない人、定期的な見守りを希望する人などに適する場合があります。

ただし、任意後見が始まる前の財産管理等委任契約には、家庭裁判所が選任する任意後見監督人による監督がありません。受任者の権限、報告方法、通帳管理、報酬などを契約書で明確にする必要があります。

即効型

任意後見契約を結んだ後、比較的早い時期に任意後見監督人の選任を申し立てる形です。

契約締結時に本人が十分な判断能力を持っていたかが問題になりやすいため、慎重な対応が必要です。

16.法定後見と任意後見の違い

| 比較項目 | 法定後見 | 任意後見 | | ---------- | ------------------- | --------------------- | | 準備する時期 | 判断能力が低下した後 | 判断能力が十分なうち | | 支援者 | 家庭裁判所が選任 | 本人が契約で選ぶ | | 権限 | 法律と家庭裁判所の審判で決まる | 任意後見契約で定める | | 契約方法 | 家庭裁判所への申立て | 公正証書による契約 | | 監督 | 家庭裁判所。監督人が付く場合もある | 現行制度では任意後見監督人が必ず選任される | | 取消権 | 類型と審判内容により認められる | 任意後見人には取消権がない | | 本人による支援者選択 | 候補者を挙げられるが決定権は家庭裁判所 | 本人が選べる | | 支援の開始 | 審判確定後 | 任意後見監督人選任後 | | 主な費用 | 申立費用、後見人等報酬 | 公正証書作成費、任意後見人報酬、監督人報酬 |

任意後見では本人が支援者を選べる一方、任意後見人には本人が締結した契約を取り消す権限がありません。

悪質商法や浪費への対応として取消権が必要な場合は、法定後見制度の利用も含めて検討する必要があります。

17.任意後見監督人

現行制度では、家庭裁判所が任意後見監督人を選任した時点から任意後見が始まります。

任意後見監督人は、主に次の仕事を担当します。

  • 任意後見人の事務を監督する
  • 任意後見人から財産管理や支援状況の報告を受ける
  • 家庭裁判所へ報告する
  • 任意後見人と本人の利益が対立する場合に必要な対応をする
  • 任意後見人に不正や不適切な事務がある場合に家庭裁判所へ伝える

任意後見監督人には、弁護士、司法書士、社会福祉士などの専門職が選ばれることがあります。

任意後見監督人の報酬も、本人の財産から支払われます。任意後見人への報酬を契約で定めている場合には、任意後見人と任意後見監督人の双方に継続的な費用が生じます。

18.日常生活自立支援事業とは

日常生活自立支援事業は、認知症、知的障害、精神障害などにより、福祉サービスの利用手続や日常的な金銭管理に不安がある人を、社会福祉協議会が契約に基づいて支援する事業です。

成年後見制度のように家庭裁判所が支援者を選ぶ制度ではありません。本人と社会福祉協議会が利用契約を結び、支援計画に沿って生活支援員などが訪問します。

主な支援内容

  • 福祉サービスに関する情報提供
  • 福祉サービスの申込みや契約手続の援助
  • 福祉サービス利用料の支払い
  • 医療費、家賃、公共料金などの支払い
  • 年金や福祉手当の受領に必要な手続
  • 日常生活費の払戻し
  • 預貯金の出し入れ
  • 通帳、印鑑、年金証書、権利証などの預かり
  • 定期訪問による生活状況の把握

利用するには、本人が事業内容を理解し、社会福祉協議会と利用契約を結べることが必要です。

判断能力が低下し、本人が契約内容を理解できなくなった場合には、日常生活自立支援事業の契約を継続できないことがあります。その場合は、成年後見制度への移行を検討します。

19.横浜市の日常生活自立支援事業

横浜市では、横浜市社会福祉協議会の横浜生活あんしんセンターと各区社会福祉協議会のあんしんセンターが、「権利擁護事業」として日常生活自立支援事業を実施しています。

相談は無料です。高齢や障害などにより来所が難しい場合には、出張相談にも対応しています。

契約後は、支援計画に基づき、原則として毎月1~2回程度の訪問を受け、福祉サービス利用援助や日常的な金銭管理の支援を受けます。

横浜市における主な利用料

2026年8月2日時点で横浜市社会福祉協議会が案内している、福祉サービス利用援助・定期訪問・金銭管理サービスの1回当たり利用料は次のとおりです。

| 区分 | 1回当たりの利用料 | | ---------------- | -----------------: | | 生活保護受給者 | 0円。ただし支援計画外は1,250円 | | 市民税非課税者 | 1,250円 | | 市民税課税者・所得250万円未満 | 1,560円 | | 市民税課税者・所得250万円以上 | 1,875円 | | 市民税課税者・所得700万円以上 | 2,500円 |

財産関係書類等の預かりサービスは、生活保護受給者が0円、その他の人は月額250円、年額3,000円です。

料金は改定される可能性があります。利用時は横浜生活あんしんセンターの権利擁護事業案内を参照してください。

20.成年後見制度と日常生活自立支援事業の違い

| 比較項目 | 成年後見制度 | 日常生活自立支援事業 | | -------------- | ------------------ | ------------------ | | 実施主体 | 家庭裁判所が選任した後見人等 | 社会福祉協議会 | | 利用方法 | 家庭裁判所への申立て | 本人と社会福祉協議会の契約 | | 判断能力 | 契約判断が難しい人も対象 | 利用契約を理解できることが必要 | | 支援範囲 | 財産管理、契約、相続、不動産など広い | 福祉サービスと日常的な金銭管理が中心 | | 代理権 | 審判内容に応じて持つ | 原則として限定的 | | 取消権 | 類型と審判内容に応じて持つ | ない | | 家庭裁判所の監督 | ある | ない | | 費用 | 申立費用と後見人等報酬 | 訪問等の利用料 | | 重大な財産処分 | 対応できる場合がある | 原則として対象外 | | 本人が契約できなくなった場合 | 制度利用が可能 | 契約終了となる場合がある |

日常生活自立支援事業は、本人が支援内容を理解して契約でき、困りごとが日常的な金銭管理の範囲に収まる場合に適しています。

不動産売却、遺産分割、多額の預金管理、施設入所契約、悪質な契約の取消しなどが必要な場合には、成年後見制度のほうが適する可能性があります。

両制度を単純に「軽い制度」「重い制度」と分けるのではなく、必要な支援と本人の契約能力から選ぶことが大切です。

21.金銭管理でできることとできないこと

成年後見人等は、本人の財産を本人のために管理します。

対応できる主な内容

  • 通帳や現金の管理
  • 年金の受領
  • 家賃、医療費、介護費の支払い
  • 税金や保険料の支払い
  • 不要な契約の解約
  • 保険金や給付金の請求
  • 不動産の管理
  • 必要に応じた不動産売却
  • 相続手続
  • 本人の生活に必要な費用の支出

原則として難しい内容

  • 本人の財産を親族へ自由に贈与する
  • 相続税対策を目的に財産を移す
  • 本人の利益にならない投資をする
  • 家族の生活費を本人の財産から当然に支払う
  • 本人の意思や生活を無視して財産を増やすことだけを優先する
  • 本人の財産を成年後見人等の財産と混ぜる

成年後見人等の役割は、財産を最大化することではありません。本人の生活、医療、介護、楽しみ、家族関係などを踏まえ、本人のために財産を使うことが基本です。

22.契約に関する権限

成年後見人等は、権限の範囲内で本人に代わって契約を結ぶことができます。

例えば、介護サービス契約、施設入所契約、賃貸借契約、入院契約などです。

しかし、契約を代理できることと、本人の生活場所や医療内容を一方的に決められることは同じではありません。

施設入所契約を代理できる場合でも、本人の希望や生活歴を踏まえ、在宅生活を続ける方法がないか、別の住居が適切ではないかなどを検討する必要があります。

本人が明確に拒否しているのに、成年後見人等が物理的に本人を施設へ連れて行く権限はありません。強制的な入院や身体拘束についても、それぞれの法律上の要件が必要です。

23.医療同意の限界

成年後見人等は、入院契約、医療費の支払い、医療機関との連絡調整などを担当できます。

しかし、成年後見人等であるという理由だけで、本人に代わってすべての医療行為へ同意できるわけではありません。

特に次のような医療行為について、成年後見人等に包括的な同意権があるとはされていません。

  • 手術
  • 輸血
  • 抗がん剤治療
  • 人工呼吸器の装着
  • 胃ろう造設
  • 透析の開始や中止
  • 身体への侵襲を伴う検査
  • 延命治療の開始や差控え
  • 蘇生処置に関する判断

本人に意思決定能力がある場合は、本人へ分かりやすく説明し、本人が同意または拒否します。

本人の意思決定が難しい場合は、本人が以前表明していた希望、人生観、価値観、家族の話、医療・ケアチームの意見などを踏まえ、本人にとって最も適切な方針を検討します。

成年後見人等は、本人の過去の意思や生活状況を医療機関へ伝え、本人の権利が守られるよう協議に参加できます。しかし、「後見人だから手術同意書に署名する」という単純な取扱いには注意が必要です。

医療機関から同意や署名を依頼された場合は、同意書の内容と署名者の立場を整理し、必要に応じて家庭裁判所や法律専門職へ相談します。

24.身元保証人との違い

成年後見人等は、身元保証人ではありません。

病院や施設がいう「身元保証人」には、複数の役割が含まれていることがあります。

  • 入院費や施設利用料の連帯保証
  • 緊急連絡先
  • 医療方針に関する連絡相手
  • 入退院や入退所の手続
  • 日用品の準備
  • 亡くなった後の遺体や遺品の引取り
  • 居室の明渡し
  • 未払費用の精算

成年後見人等は、本人の財産から正当な医療費や施設費を支払うことはできます。しかし、本人の債務を自分の財産で支払う連帯保証人になる義務はありません。

また、成年後見人等の職務は原則として本人の死亡によって終了します。一定の緊急事務や財産の引渡しなどを担当する場合はありますが、葬儀、納骨、遺品処分、賃貸住宅の明渡しなど、すべての死後事務を当然に引き受けるものではありません。

病院や施設から身元保証人を依頼された場合は、何を保証する書類なのかを読み、成年後見人等として対応できる範囲を分ける必要があります。

身元保証人がいないことだけを理由として、医療や介護サービスの利用を一律に拒むことが適切とは限りません。本人の財産、成年後見人等の権限、緊急連絡体制、死後事務の準備などを個別に整理します。

25.身寄りのない人への支援

身寄りがない人への支援では、成年後見制度だけですべてを解決することはできません。

主な課題を分けて考える必要があります。

  • 日常の金銭管理
  • 医療・介護サービスの契約
  • 入院や施設入所時の連絡先
  • 医療に関する意思決定支援
  • 住居の確保
  • 緊急時の対応
  • 死亡届
  • 遺体の引取り
  • 葬儀、火葬、納骨
  • 賃貸住宅の明渡し
  • 遺品整理
  • 相続財産の管理
  • ペットの世話

成年後見制度は、生前の財産管理と法律行為を中心とする制度です。死後の課題については、遺言、死後事務委任契約、見守り契約、財産管理等委任契約、任意後見契約などを組み合わせる場合があります。

ただし、本人の判断能力がすでに失われている場合、新たに任意後見契約や死後事務委任契約を結ぶことは難しくなります。

身寄りの問題が深刻化する前に、地域包括支援センター、区役所、基幹相談支援センター、社会福祉協議会、法律専門職などへ相談し、将来必要になる役割を整理することが大切です。

26.市区町村長申立て

本人に成年後見制度が必要であっても、本人が申し立てられず、協力する親族もいない場合があります。

また、親族がいても、虐待、財産侵害、長期間の音信不通、申立て拒否、強い対立などにより、親族申立てが期待できない場合があります。

このような場合には、市区町村長が法定後見開始を申し立てる制度があります。

横浜市では、市長ではなく、各区長が申立てを担当します。

区長申立てを検討する主な場面

  • 身寄りがない
  • 親族と連絡が取れない
  • 親族が申立てを拒んでいる
  • 親族から虐待を受けている
  • 親族による財産侵害が疑われる
  • 本人が申立ての意味を理解できない
  • 預金を管理する人がいない
  • 施設や介護サービスの契約ができない
  • 家賃や医療費の滞納が続いている
  • 悪質商法の被害が続いている
  • 本人の生命、身体、財産を守るため早急な対応が必要である

市区町村長申立ては、「親族が一人もいない人だけ」が対象とは限りません。親族がいても、その親族による申立てが期待できず、本人の権利を守る必要性が高い場合には対象となる可能性があります。

ケアマネジャー、医療機関、介護事業所、相談支援専門員などが必要性に気づいた場合は、本人の住所地を担当する区役所へ相談します。

横浜市では、高齢者については各区役所高齢・障害支援課、障害のある人についても各区の高齢・障害支援課が主な窓口になります。

27.成年後見制度利用支援事業

成年後見制度利用支援事業は、申立費用や成年後見人等への報酬を負担することが難しい人に対し、市区町村が費用の全部または一部を助成する制度です。

全国一律の給付制度ではなく、対象者、所得・資産要件、助成上限、申請期限、対象となる後見人等の範囲は自治体によって異なります。

横浜市では、申立費用については区長申立てを受けた人を対象とする取扱いが案内されています。成年後見人等への報酬についても、負担が困難な人に助成制度があります。

助成は自動的に適用されるものではありません。家庭裁判所の報酬付与審判を受けた後、期限内に区役所へ申請するなどの手続が必要になる場合があります。

本人の収入だけでなく、預貯金、不動産、生活保護受給の有無などが審査対象になることがあります。

制度を利用する場合は、申立て前から各区役所高齢・障害支援課へ相談してください。

28.よこはま成年後見推進センター

横浜市では、横浜市社会福祉協議会の横浜生活あんしんセンター内に「よこはま成年後見推進センター」が設置されています。

同センターは、横浜市における権利擁護支援の地域連携ネットワークの中核機関として、横浜市と連携し、次のような事業を担当しています。

  • 成年後見制度に関する相談
  • 制度の広報と普及
  • 申立てに関する支援
  • 成年後見人等の候補者に関する相談
  • 親族後見人への支援
  • 市民後見人の養成と活動支援
  • 法人後見の推進
  • 福祉・法律関係機関との連携
  • 日常生活自立支援事業
  • 権利擁護に関する専門相談

横浜市の「令和8年度健康福祉局予算概要」にも、成年後見制度の利用促進や権利擁護支援に関する取組が位置付けられています。横浜市「令和8年度健康福祉局予算概要」

相談先

よこはま成年後見推進センター

  • 所在地:横浜市中区桜木町1-1 横浜市健康福祉総合センター9階
  • 相談専用電話:045-201-2088
  • 利用時間:月曜日から金曜日の午前9時から午後5時
  • 祝日、年末年始を除く
  • 相談料:無料

来所する場合は、事前に連絡しておくと円滑です。よこはま成年後見推進センター

このほか、各区役所高齢・障害支援課、地域包括支援センター、基幹相談支援センター、各区社会福祉協議会のあんしんセンターでも相談できます。

01

29.2026年成年後見制度(判断能力が十分でない方の財産管理や契約を、家庭裁判所が選任した支援者などが支える制度です)※1改正の概要

2026年6月17日、「民法等の一部を改正する法律」と「民法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」が成立しました。

同年6月24日に、民法等改正法は令和8年法律第45号、整備法は令和8年法律第46号として公布されています。

今回の改正は、2000年に現在の成年後見制度が始まって以来、制度の基本構造を変える大規模なものです。

法務省は、改正の中心として、後見と保佐を廃止して補助制度へ一元化し、本人にとって必要な範囲で制度を利用できる仕組みに変更することを挙げています。法務省「民法等の一部を改正する法律」について

施行時期

成年後見制度に関する改正部分は、2026年6月24日から2年6か月を超えない範囲内で、政令が定める日に施行されます。

2026年8月2日時点では、具体的な施行日は公表されていません。

したがって、現在は次のように整理します。

  • 改正法は成立・公布済み
  • 成年後見制度に関する改正部分は施行前
  • 現在の申立てでは後見・保佐・補助の三類型が存続
  • 施行日までは現在の制度に基づいて家庭裁判所が審理する
  • 施行後の手続、経過措置、書式、実務運用には今後定められる内容がある

制度の利用が必要な人が、改正法の施行を待てるとは限りません。財産侵害、契約不能、医療費の滞納、不動産処分、相続手続などの課題がある場合は、現行制度による申立ても含めて検討します。

30.改正点1――後見・保佐を廃止し、補助制度へ一元化

現行制度は、判断能力の程度に応じて後見、保佐、補助の三類型に分かれています。

改正法では、後見と保佐の制度を廃止し、法定後見を補助制度へ一元化します。

改正後は、本人の判断能力の程度だけで一律に広い権限を与えるのではなく、本人が必要とする法律行為を個別に定め、その範囲で補助人(現行制度で、判断能力が不十分な方を家庭裁判所が定めた範囲で支援する人です)※6に代理権、同意権、取消権などを与えることが基本になります。

例えば、本人が日常の買物や少額の支払いはできるものの、不動産売却と施設契約だけは難しい場合、必要な行為に限定して補助人へ権限を与えることが考えられます。

この変更には、本人ができる行為まで一律に制限せず、本人の自己決定をできる限り残すという目的があります。

改正後の考え方

改正後は、次のような整理がより重要になります。

  • 本人が一人でできる行為
  • 説明や支援があれば本人ができる行為
  • 同意する人がいれば本人ができる行為
  • 本人に代わる代理人が必要な行為
  • 不利益な契約を取り消す権限が必要な行為
  • 支援が必要な期間
  • 支援の終了後に利用できる地域福祉サービス

単に「認知症が重いから広い権限を付ける」のではなく、本人の生活課題と必要な権限を対応させることになります。

31.改正点2――判断能力を欠く人への「特定補助」

後見制度が廃止されても、判断能力を欠く状態にある人への支援が不要になるわけではありません。

改正法では、判断能力を欠く状態にある人について、「特定補助人(2026年公布の改正法施行後に、家庭裁判所が特定の事務について選任できる補助人です)※7」を付ける仕組みが設けられます。

特定補助は、現在の後見に近い支援が必要な人を対象としつつ、本人の権利制限を必要な範囲に抑えるための仕組みです。

具体的な権限の設定、家庭裁判所による審理、支援者の監督、現行の成年後見からの移行などについては、施行までに公表される政令、最高裁判所規則、書式、運用案内を参照する必要があります。

32.改正点3――必要性がなくなれば終了できる制度へ

現行制度では、後見や保佐を始めた後、当初の目的が終わっても、本人の判断能力が回復しない限り、制度を終了することが難しいという課題があります。

例えば、遺産分割協議のために成年後見制度を利用し、遺産分割が終わった後も、本人の判断能力が回復しなければ後見が継続することがあります。

専門職後見人が選任されている場合には、継続的な報酬負担が生じます。本人や家族が希望しても、後見人を自由に解任したり、制度を自由に終了したりすることはできません。

改正法では、本人の判断能力が回復していなくても、補助を続ける必要性がなくなったと家庭裁判所が判断した場合に、制度を終了できる仕組みが導入されます。

これにより、次のような利用が可能になると考えられます。

  • 遺産分割に必要な期間だけ利用する
  • 不動産売却と住居移転が終わるまで利用する
  • 多額の債務整理が終わるまで利用する
  • 福祉的な支援体制が整うまで利用する
  • 日常生活自立支援事業などへ移行できる段階まで利用する

ただし、「本人や家族が希望すればいつでも終了できる」という制度ではありません。終了後に本人の権利や財産を守る体制があるかを含め、家庭裁判所が必要性を判断します。

33.改正点4――本人の意思を尊重する支援を法律上明確にする

改正法では、補助人等が本人に対して必要な情報を分かりやすく提供し、本人の意向を把握し、本人の意思を尊重して職務を担うという考え方が、より明確になります。

成年後見人(現行制度で、判断能力を欠く常況にある方の法律行為や財産管理を支援するため家庭裁判所が選任する人です)※4等が効率だけを優先し、本人とほとんど会わないまま財産管理を続けることは、本人中心の制度とはいえません。

改正後の実務では、財産管理の正確性だけでなく、次のような視点の重要性が一層高まります。

  • 本人と面会しているか
  • 本人に分かる方法で説明しているか
  • 本人の希望を把握しているか
  • 本人の生活歴や価値観を理解しているか
  • 本人ができる行為を奪っていないか
  • 支援を受けながら本人が決められる方法を検討したか
  • 本人の生活に財産を適切に使っているか
  • 施設や医療機関の都合だけで判断していないか

34.改正点5――本人の利益のために補助人を交代できる仕組み

現行制度でも、成年後見人等に不正、著しい職務怠慢、不適切な行為などがある場合には、家庭裁判所が解任できます。

しかし、不正とまではいえなくても、本人とほとんど面会しない、本人の意思を十分にくみ取らない、本人の支援課題と後見人の専門性が合わないなど、本人にとって支援者の交代が望ましい場面があります。

改正法では、本人の利益のため特に必要がある場合に、補助人を交代させる仕組みが整えられます。

これにより、本人の生活状況や支援課題の変化に応じて、より適切な支援者へ交代する余地が広がります。

35.改正点6――申立権者の見直し

現行制度では、本人、配偶者、四親等内の親族、市区町村長などに申立権があります。

一方、内縁の配偶者、同性パートナー、長年本人を支えてきた友人などは、本人にとって重要な存在であっても、親族関係がなければ原則として申立権を持ちません。

改正法では、本人が判断能力のあるうちに、公正証書によって将来の申立権者を指定できる仕組みが設けられます。

この仕組みは、法律上の親族がいない人や、親族よりもパートナーや友人との関係が深い人にとって重要です。

公正証書の作成方法、指定できる人の範囲、申立ての手続などは、施行時の案内を参照する必要があります。

36.改正点7――任意後見制度(判断能力があるうちに、将来支援を頼む人と支援内容を公正証書で決めておく制度です)※3の見直し

改正法では、任意後見制度についても見直しが加えられます。

主な方向は次のとおりです。

  • 任意後見と法定の補助制度を必要に応じて併用できる仕組み
  • 任意後見人の監督方法の見直し
  • 一定の場合に任意後見監督人を選任せずに任意後見を開始できる仕組み
  • 本人の状況に応じた柔軟な利用
  • 任意後見契約の濫用や不適切な財産管理を防ぐための監督

現行制度では、任意後見の開始に任意後見監督人の選任が必須です。改正後は、家庭裁判所が相当と認める場合に、別の監督方法を用いる仕組みが導入されます。

ただし、任意後見監督人が不要になる条件や手続については、施行前の段階で断定できません。今後の政令、規則、実務案内を参照する必要があります。

37.現在利用中の人はどうなるのか

改正法が施行された後、現在の成年被後見人、被保佐人(現行制度で、判断能力が著しく不十分な方の重要な行為を同意・取消しなどにより支援する人です)※5、被補助人や、それぞれの後見人等がどのように新制度へ移行するかは、経過措置と施行後の手続が重要になります。

改正法と整備法には移行に関する規定がありますが、個別事案で必要になる申立て、家庭裁判所の審理、権限の見直し、登記変更などの実務は、施行までに公表される案内を参照する必要があります。

現在利用中の人が、改正法の成立によって直ちに後見・保佐から外れるわけではありません。

また、現在の成年後見人等の権限が、2026年6月24日に自動的に消滅したわけでもありません。施行前は現行制度に基づいて後見事務を続け、家庭裁判所への報告も必要です。

38.改正法の施行を待つべきか

制度改正が予定されていても、本人が現在直面している問題を放置してよいわけではありません。

次のような状況では、改正法の施行を待たず、現行制度による対応を検討する必要があります。

  • 預金が引き出せず医療費や施設費を払えない
  • 悪質商法の被害が続いている
  • 親族が本人の財産を使い込んでいる
  • 遺産分割や相続放棄の期限が迫っている
  • 自宅を売却しなければ施設費を用意できない
  • 賃貸借契約や施設契約を締結できない
  • 税金や家賃の滞納が続いている
  • 本人が退院できる住居や支援体制を整えられない
  • 虐待や経済的搾取のおそれがある

一方、緊急の法律行為がなく、本人が日常生活自立支援事業を契約でき、地域の支援体制によって生活を続けられる場合には、直ちに法定後見を申し立てず、必要性を継続的に評価する方法もあります。

制度を利用すること自体を目的にするのではなく、本人が何に困っており、どの権限が必要なのかを整理することが大切です。

39.制度を選ぶための目安

日常生活自立支援事業が適する可能性がある場合

  • 本人が支援内容を理解して契約できる
  • 困りごとが公共料金や医療費の支払いである
  • 通帳や印鑑の管理に不安がある
  • 福祉サービスの申込みを手伝ってほしい
  • 不動産売却や遺産分割などの課題がない
  • 本人の意思を踏まえた定期訪問があれば生活できる

法定後見が適する可能性がある場合

  • 本人が支援契約を理解できない
  • 施設入所などの契約を代理する必要がある
  • 多額の財産を管理する必要がある
  • 不動産売却が必要である
  • 相続手続や遺産分割が必要である
  • 不利益な契約を取り消す必要がある
  • 財産侵害や虐待のおそれがある
  • 日常生活自立支援事業を継続できない

任意後見が適する可能性がある場合

  • 本人の判断能力が十分である
  • 将来の支援者を自分で選びたい
  • 支援してほしい内容を自分で決めたい
  • 親族以外の信頼できる人へ依頼したい
  • 見守りや財産管理等委任契約も準備したい
  • 将来、身寄りがなくなる可能性がある
  • 死後事務や遺言も含めて準備したい

40.ケアマネジャーや支援者が相談につなぐ目安

次のような変化があれば、権利擁護支援の相談を始める時期です。

  • 通帳や印鑑を何度も紛失する
  • 公共料金や家賃の滞納が始まった
  • 同じ商品を繰り返し購入している
  • 訪問販売や投資勧誘の被害がある
  • 家族が本人の年金を使っている
  • 本人の預金残高が急激に減っている
  • 介護サービス契約を理解できない
  • 施設入所契約を結べる人がいない
  • 親族間で財産管理を巡る対立がある
  • 本人名義の不動産が放置されている
  • 相続手続が必要になった
  • 医療費や介護費を支払う人がいない
  • 日常生活自立支援事業の契約継続が難しくなった
  • 支援者が本人の意思を把握できなくなってきた
  • 身寄りがなく、緊急連絡先や死後の対応も課題になっている

相談時には、「成年後見が必要だと思う」と結論だけを伝えるのではなく、本人ができること、難しいこと、現在生じている不利益、必要な契約、財産状況、家族関係、本人の希望を整理します。

41.相談から制度利用までの実務的な進め方

第1段階 本人の困りごとを具体化する

まず、何ができず、どのような不利益が生じているかを整理します。

「認知症がある」「身寄りがない」という情報だけでは、必要な制度を選べません。

第2段階 本人の意思と判断能力を把握する

本人が支援を希望しているか、どの程度説明を理解できるか、支援があれば契約できるかを整理します。

第3段階 財産と契約上の課題を整理する

預貯金、不動産、負債、年金、保険、相続、滞納、契約被害などを一覧にします。

第4段階 既存の支援で対応できるかを考える

家族支援、ケアマネジメント、相談支援、日常生活自立支援事業、金融機関の代理人制度などで対応できる可能性を検討します。

第5段階 必要な権限を整理する

預金管理だけでよいのか、施設契約、不動産売却、遺産分割、取消権まで必要なのかを分けます。

第6段階 相談機関につなぐ

横浜市では、地域包括支援センター、区役所高齢・障害支援課、基幹相談支援センター、区社協あんしんセンター、よこはま成年後見推進センターなどへ相談します。

第7段階 申立人と候補者を検討する

本人申立て、親族申立て、区長申立てのいずれが適切かを検討します。候補者を記載する場合も、最終的な選任は家庭裁判所が担当します。

第8段階 診断書と本人情報シートを準備する

医師と福祉関係者へ早めに相談し、本人の生活状況と判断能力を具体的に記載してもらいます。

第9段階 申立後も本人の生活支援を続ける

申立てをしても、審判までの間に支援者が自動的に付くわけではありません。医療、介護、住居、金銭、虐待防止などの支援を継続します。

42.まとめ

成年後見制度は、判断能力が十分でない人の財産と生活を守る重要な制度です。しかし、成年後見人等が本人の人生を一方的に決める制度ではありません。

現在の法定後見制度(本人の判断能力が低下した後に、家庭裁判所への申立てによって支援者を選ぶ制度です)※2には後見、保佐、補助の三類型があり、判断能力と必要な権限に応じて家庭裁判所が類型と支援者を決めます。

任意後見制度は、判断能力が十分なうちに、自分で将来の支援者と支援内容を決める制度です。日常生活自立支援事業は、本人が利用契約を理解できる段階で、福祉サービス利用援助や日常的な金銭管理を受ける制度です。

成年後見人等は、財産管理、介護サービス契約、施設入所契約などを担当できますが、直接介護、医療行為への包括的な同意、連帯保証、すべての死後事務を当然に引き受けるものではありません。

2026年6月に成立した改正法では、後見と保佐を廃止して補助制度へ一元化し、本人に必要な範囲で利用できる仕組み、必要性がなくなった場合に終了できる仕組み、本人の意思をより重視する仕組みなどが定められました。

ただし、2026年8月2日時点では施行前です。現在は後見、保佐、補助の三類型が利用されており、改正法の成立だけを理由に現在の後見が終了したり、後見人等の権限が失われたりすることはありません。

制度を選ぶときは、「誰に何を任せたいのか」「本人は何ができるのか」「どの法律行為に権限が必要なのか」「制度終了後の支援をどうするのか」を具体的に整理することが大切です。

横浜市では、よこはま成年後見推進センターを中心に、区役所、地域包括支援センター、基幹相談支援センター、社会福祉協議会などが権利擁護支援に対応しています。本人や家族だけで判断せず、早い段階から相談してください。

用語解説

法定後見制度 本人の判断能力が低下した後、家庭裁判所が成年後見人、保佐人、補助人を選任する制度です。

任意後見制度 本人の判断能力が十分なうちに、将来支援を依頼する人と支援内容を公正証書で決めておく制度です。

代理権 本人に代わって契約などの法律行為をする権限です。

同意権 本人が一定の法律行為をするときに、保佐人や補助人などが同意する権限です。

取消権 本人が成年後見人等の同意なく行った一定の法律行為を取り消す権限です。

身上保護 本人の生活、住居、医療、介護、福祉サービスなどに関する契約や調整を担当することです。直接介護をすることとは異なります。

本人情報シート ケアマネジャー、相談支援専門員、施設職員などの福祉関係者が、本人の生活状況や意思疎通、判断の状況を記載する書類です。

成年後見登記 成年後見人等の氏名、権限などを法務局の登記記録に登録する制度です。

市区町村長申立て 本人や親族による申立てが難しい場合に、本人の福祉を守るため、市区町村長が法定後見開始を申し立てる制度です。横浜市では区長が担当します。

日常生活自立支援事業 本人と社会福祉協議会との契約により、福祉サービスの利用援助や日常的な金銭管理などを支援する事業です。

公正証書 公証人が法律に基づいて作成する公文書です。任意後見契約は公正証書で締結する必要があります。

任意後見監督人 任意後見人の事務を監督し、家庭裁判所へ報告する人です。現行制度では、任意後見を開始するために選任が必要です。

※本ページは2026年8月2日時点の制度を基準としています。成年後見制度の改正部分は施行前であり、施行日、家庭裁判所の書式、経過措置、具体的な運用は今後更新される可能性があります。個別の申立てや契約については、家庭裁判所、自治体、公証役場、弁護士、司法書士、社会福祉士などへ相談してください。

02

図で見る 法定後見の申立て(家庭裁判所へ審判を求める正式な手続です)※7から支援開始まで

申立てから支援開始まで
  1. 01相談・制度選択
  2. 02本人の希望と必要な支援を整理
  3. 03診断書・本人情報シート等を準備
  4. 04家庭裁判所へ申立て
  5. 05書類確認・事情聴取
  6. 06本人の意思・生活状況を確認
  7. 07必要に応じ親族照会・鑑定
  8. 08開始審判・後見人等を選任
  9. 09審判確定・登記・支援開始

一般的な目安は申立てから選任まで1~3か月。鑑定や親族照会などにより長くなる場合があります。

制度を利用するか迷うときは、最初から申立書を完成させようとせず、本人が何に困っているのか、どの行為に支援が必要なのかを整理します。預貯金の管理、福祉サービスの契約、施設入所、遺産分割、不動産の処分など、必要な支援によって申立ての内容や家庭裁判所へ求める権限が変わるためです。

申立てから決定までの流れ

01 地域の相談窓口で制度を選ぶ

地域包括支援センター、障害者相談支援事業所、社会福祉協議会の成年後見相談窓口、自治体の高齢・障害担当窓口などへ相談します。本人が契約内容を理解でき、日常的な支払いと福祉サービスの手続だけを手伝えばよい場合は、成年後見制度(判断能力が十分でない方の財産管理や契約を、家庭裁判所が選任した支援者などが支える制度です)※1ではなく日常生活自立支援事業が合うことがあります。将来に備える段階で十分な判断能力がある場合は、任意後見契約や財産管理等委任契約も候補になります。

02 本人の希望と必要な支援を整理する

「財産をすべて管理してほしい」と大きくまとめず、家賃や公共料金の支払い、介護サービス契約、施設入所契約、保険金請求、遺産分割など、現在困っている行為を具体的にします。本人ができること、説明を受ければ決められること、代理が必要なことを分けると、必要以上に権限を広げない申立てにつながります。

03 診断書・本人情報シート・財産資料を準備する

家庭裁判所所定の診断書は、主治医など本人の状態を把握している医師へ作成を依頼します。福祉関係者が作る本人情報シートは、生活の様子や支援状況を医師と裁判所へ伝える資料です。戸籍、住民票、登記されていないことの証明書、預貯金、保険、不動産、負債、収支予定などの資料もそろえます。必要書類は申立先の家庭裁判所の最新案内で確認してください。

04 本人の住所地を管轄する家庭裁判所へ申し立てる

法定後見は、原則として本人の住所地を管轄する家庭裁判所へ申し立てます。申立人になれるのは本人、配偶者、四親等内の親族、検察官など法令で定められた人です。身寄りがない、親族が申立てに対応できない、虐待などで親族による申立てが適切でないといった場合は、市区町村長申立ての対象となる可能性があるため、自治体窓口へ相談します。

05 裁判所が書類を確認し、事情を聴く

裁判所は申立書、診断書、財産目録、収支予定表、候補者事情説明書などを確認します。申立人、本人、後見人等候補者から事情を聴くことがあります。候補者を記載しても、その人が必ず選任されるわけではありません。本人の財産、必要な支援、親族関係、利益相反の有無などを踏まえ、弁護士、司法書士、社会福祉士等の専門職や法人が選ばれることもあります。

06 本人の意思と生活状況を確認する

本人の心身状態に配慮しながら、制度利用についての意向、希望する生活、支援者との関係などが確認されます。本人の意思を確認することは、本人が一人で複雑な契約をできるかどうかとは別の問題です。言葉だけでなく、表情、反応、これまでの生活歴、家族や支援者から得られる情報も手掛かりにし、可能な限り本人の意思と選好を尊重します。

07 必要に応じて親族照会や医学鑑定を行う

裁判所は、必要に応じて親族へ制度利用や候補者について意向を照会します。また、本人の判断能力について医学鑑定を行う場合があります。鑑定が必要になったときは、鑑定料の予納や日程調整が必要となり、審理期間が長くなることがあります。親族間の意見対立、財産関係の複雑さ、候補者との利害関係などがある場合も追加確認が行われます。

08 開始の審判と後見人等の選任

裁判所が後見、保佐または補助の開始を相当と判断すると、開始の審判をし、成年後見人(現行制度で、判断能力を欠く常況にある方の法律行為や財産管理を支援するため家庭裁判所が選任する人です)※2保佐人(現行制度で、判断能力が著しく不十分な方の重要な行為を同意・取消しなどにより支援する人です)※3または補助人(現行制度で、判断能力が不十分な方を家庭裁判所が定めた範囲で支援する人です)※4を選任します。保佐・補助では、本人に必要な範囲に応じて代理権(本人に代わって契約などの法律行為を行う権限です)※5同意権(本人が特定の法律行為をする際に支援者の同意を必要とする権限です)※6の内容が定められます。審判書が関係者へ送達され、不服申立期間を経て確定します。

09 登記後に支援を始める

審判が確定すると、家庭裁判所から法務局へ登記が嘱託されます。選任された人は登記事項証明書等を用意し、金融機関やサービス事業者へ届出を行います。就任後は本人の財産と生活状況を確認し、期限までに初回報告を提出します。重要な財産処分や居住用不動産の処分には、裁判所の許可など別の手続が必要になる場合があります。

03

決定までにかかる時間の目安

裁判所の案内では、申立て(家庭裁判所へ審判(家庭裁判所が手続を経て示す判断です)※3を求める正式な手続です)※2から成年後見人(現行制度で、判断能力を欠く常況にある方の法律行為や財産管理を支援するため家庭裁判所が選任する人です)※1等の選任までの一般的な目安はおおむね1か月から3か月です。後見開始はおおむね1か月、保佐・補助開始はおおむね2か月から3か月とされる案内があります。任意後見監督人(任意後見人の事務を監督し、家庭裁判所へ報告するために選任される人です)※6選任の申立ては、申立てから審判までおおむね1か月から2か月が目安です。

ただし、これは標準的な目安であり、期限を保証するものではありません。医学鑑定(家庭裁判所の判断に必要な場合、医師が本人の精神状態や判断能力を専門的に評価する手続です)※5、本人調査、親族への照会、候補者の適格性調査、財産・負債の確認、親族間の対立などがあると長くなります。審判後も、確定と成年後見登記(後見等の種類、本人、後見人等、権限などを法務局の登記ファイルに記録する制度です)※4を経て登記事項証明書を取得できるまでに時間が必要です。支払期限や契約期限が迫っている場合は、申立前の相談段階で事情を伝えてください。

04

図で見る 任意後見契約から支援開始まで

01 判断能力が十分なうちに希望を整理する

将来、誰に何を頼みたいかを決めます。財産管理、生活費の支払い、介護・医療契約、住まいの確保などを具体的にし、任意後見だけでなく、見守り契約、財産管理等委任契約、死後事務委任、遺言との組み合わせも専門家へ相談します。

02 公証役場で任意後見契約を結ぶ

本人と任意後見受任者は、契約内容を公証人に説明し、公正証書(公証人が法律に従って作成する公文書です)※2で任意後見契約を結びます。契約は法務局に登記されます。この時点では任意後見受任者に任意後見人としての代理権(本人に代わって契約などの法律行為を行う権限です)※1は発生していません。

03 判断能力の低下後に家庭裁判所へ申し立てる

本人の判断能力が不十分になったとき、本人、配偶者、四親等内の親族、任意後見受任者などが、本人の住所地を管轄する家庭裁判所へ任意後見監督人(任意後見人の事務を監督し、家庭裁判所へ報告するために選任される人です)※3の選任を申し立てます。本人以外が申し立てる場合は、原則として本人の同意が必要ですが、本人が意思表示できない場合などの例外があります。

04 任意後見監督人が選任され、契約が効力を生じる

家庭裁判所が任意後見監督人を選任すると、任意後見契約が効力を生じ、任意後見受任者は任意後見人として契約で定めた事務を行います。任意後見監督人は、任意後見人の事務を監督し、家庭裁判所へ報告します。

05

現行制度と2026年改正法を混同しないために

2026年6月17日に成年後見制度(判断能力が十分でない方の財産管理や契約を、家庭裁判所が選任した支援者などが支える制度です)※1の見直しを含む民法等改正法が成立し、同年6月24日に公布されました。しかし、2026年8月2日現在、成年後見制度に関する主要部分はまだ施行されていません。施行日は、公布から2年6か月以内の政令で定める日です。現在の申立て(家庭裁判所へ審判を求める正式な手続です)※4と実務には、引き続き現行の後見・保佐・補助の三類型が使われます。

改正法は、現行の後見と保佐を廃止し、法定後見を補助へ一本化する方向です。本人に必要な特定の事務だけを支援する特定補助人(現行制度で、判断能力が不十分な方を家庭裁判所が定めた範囲で支援する人です)※3の仕組み、必要性がなくなったときに制度利用を終えられる仕組み、本人の意思決定を支える考え方の明確化、状況に応じた補助人の交代などが盛り込まれています。任意後見制度(判断能力があるうちに、将来支援を頼む人と支援内容を公正証書で決めておく制度です)※2にも、本人の利益と意思を尊重し、必要な時期に適切に監督を開始するための見直しがあります。

改正法が施行されると、申立書式、権限の定め方、既存の後見・保佐事件の扱い、関係制度の呼び方などが変わります。経過措置(制度改正の前後で権利や手続が急に不安定にならないよう、旧制度から新制度への移行方法を定める規定です)※5もあるため、既に後見・保佐を利用している方が公布だけで直ちに補助へ変わるわけではありません。実際に手続を行うときは、施行日と裁判所の最新書式を必ず確認してください。

06

4地域の相談先と支援の違い

横浜市

横浜市では、よこはま成年後見推進センター、各区の高齢・障害支援課、各区社会福祉協議会あんしんセンター、地域包括支援センター、基幹相談支援センターなどが相談先です。申立手続そのものは横浜家庭裁判所へ確認します。本人の状況、親族の関与、経済状況等によって、区長申立て(家庭裁判所へ審判(家庭裁判所が手続を経て示す判断です)※4を求める正式な手続です)※3や申立費用・後見人等報酬の助成を利用できる場合がありますが、個別要件の確認が必要です。

各区社会福祉協議会あんしんセンターの権利擁護事業は、本人との契約に基づき、福祉サービス利用援助、定期訪問、日常的金銭管理、財産関係書類等の預かりを行います。相談は無料です。利用料は生活保護受給の有無や市民税課税状況等により異なり、書類預かりには別料金があります。契約内容を理解する力が失われた場合は契約が終了し、成年後見制度(判断能力が十分でない方の財産管理や契約を、家庭裁判所が選任した支援者などが支える制度です)※1への移行を検討します。

川崎市

川崎市成年後見支援センターと各区社会福祉協議会あんしんセンターが、制度相談や申立書作成支援を行います。弁護士、司法書士、社会福祉士による予約制の専門相談もあります。市長申立てと成年後見制度利用支援事業(申立費用や後見人等報酬の負担が難しい場合に、自治体が要件に応じて助成などを行う事業です)※7があり、収入・資産などの要件を満たす場合、鑑定(家庭裁判所の判断に必要な場合、医師が本人の精神状態や判断能力を専門的に評価する手続です)※5費用や後見人等報酬の助成対象になることがあります。

川崎市の日常生活自立支援事業(本人との契約に基づき、福祉サービス利用手続や日常的な金銭管理などを社会福祉協議会が支援する事業です)※6は、本人が自分の意思で申込みを決められることが前提です。福祉サービス利用援助と日常的金銭管理は月額制で、書類等預かりは預かる資産額に応じた年額制です。生活保護受給者には別の金銭管理等支援事業が案内されるため、担当ケースワーカーへ相談します。

大田区

おおた成年後見センターが、成年後見・任意後見の制度、必要書類、申立手続などの相談を受け付け、弁護士、司法書士、公証人による専門相談も案内しています。報酬助成には、申立人、本人の住所・居所、経済状況等の要件と申請期限があります。報酬付与審判後に検討するのでは遅れる場合があるため、早めに窓口へ確認します。

大田区では日常生活自立支援事業に相当する事業を「地域福祉権利擁護事業」として案内しています。軽い認知症、知的障害、精神障害等がありながら契約内容を判断できる方が対象です。月額基本料、援助時間に応じた料金、書類等預かり料金がそれぞれ設定されています。入院中の方は対象外とされているため、退院支援の場面では別の支援方法も含めて相談します。

品川区

品川成年後見センターが、成年後見制度の情報提供、相談、申立手続支援を行います。身近に申立てのできる親族がいない場合や虐待事案などでは、区長申立てが検討されます。後見人等報酬の助成には、住所、援護実施自治体、収入・資産、他自治体からの助成の有無、申請期限などの要件があります。

品川区社会福祉協議会は、判断能力が低下する前の見守り等、判断能力低下後の任意後見、死亡後の希望を支える遺言作成支援を組み合わせた「あんしんの3点セット」を案内しています。これは品川区独自の支援であり、全国共通制度である任意後見制度(判断能力があるうちに、将来支援を頼む人と支援内容を公正証書で決めておく制度です)※2そのものと同一ではありません。

2026年8月2日時点では、品川区・品川区社会福祉協議会の現行公式サイトで、横浜・川崎・大田と同じ名称・内容の「日常生活自立支援事業」の利用案内を確認できませんでした。利用できる生活支援サービスと費用は、品川成年後見センターへ個別に確認してください。

07

相談前に準備するとよい情報

相談時にすべての資料がそろっていなくても構いません。本人の氏名・住所・年齢、診断名と通院先、日常生活で困っていること、判断が難しい場面、収入、預貯金、保険、不動産、借入れ、家族・親族の関係、現在の支援者、急いで対応すべき契約や支払いを分かる範囲で整理します。本人が大切にしてきた生活、会いたい人、住み続けたい場所、医療・介護への希望も重要です。

制度を使うかどうかは、財産額だけで決めません。本人の権利を守る必要性と、制度利用によって受ける制約、費用、継続的な裁判所監督を比べます。家族だけで抱えず、福祉と法律の両方の相談窓口を利用してください。

08

状況別に考える制度選択の例

物忘れがあるが、通帳管理と支払いの内容は理解できる

すぐに成年後見制度(判断能力が十分でない方の財産管理や契約を、家庭裁判所が選任した支援者などが支える制度です)※1が必要とは限りません。本人が支援内容を理解して契約できるなら、日常生活自立支援事業(本人との契約に基づき、福祉サービス利用手続や日常的な金銭管理などを社会福祉協議会が支援する事業です)※6による定期訪問、福祉サービス利用援助、日常的金銭管理などが候補になります。本人が希望する家族による見守り、金融機関の代理人届、公共料金の口座振替など、より小さな支援で解決できる場合もあります。ただし、定期預金の解約、不動産売却、遺産分割など日常的金銭管理の範囲を超える法律行為が必要な場合は、別の制度を検討します。

認知症が進み、介護施設との契約を理解することが難しい

介護サービスや施設入所の契約、費用の支払い、預貯金管理を誰が適法に行うかを整理します。家族であるだけでは、本人名義の預貯金を自由に払い戻したり、本人に代わってすべての契約を結んだりできるわけではありません。現在の判断能力と必要な行為を診断書や本人情報シート(福祉関係者が本人の生活状況や支援状況を記載し、診断や裁判所の判断に役立てる書類です)※5で明らかにし、法定後見の申立て(家庭裁判所へ審判(家庭裁判所が手続を経て示す判断です)※4を求める正式な手続です)※3を検討します。施設選びでは、本人の希望、生活歴、家族との距離、医療・介護の必要性を確認し、財産管理だけで決めないことが大切です。

障害のある子の将来が心配な親

いわゆる「親なきあと」の準備では、成年後見制度だけで問題がすべて解決するわけではありません。住まい、日中活動、相談支援、医療、収入、障害年金、福祉サービス、緊急時連絡先、本人が信頼する人のつながりを一緒に整えます。本人に判断能力の低下がある場合でも、本人ができることと支援が必要なことを具体化し、必要以上に広い権限を求めない視点が重要です。家族信託や遺言などを検討する場合は、それぞれの制度の限界と税務・法律上の影響を専門家へ確認します。

遺産分割協議のためだけに代理人が必要

相続人の一人に判断能力の低下があり、遺産分割協議を理解して合意することが難しい場合、本人を代理するため法定後見が必要になることがあります。申立てのきっかけが遺産分割でも、現行制度では審判後に目的を達成しただけで当然に終了する制度ではありません。後見人等は本人の生活と財産を継続して支援し、家庭裁判所へ報告します。2026年改正法は必要性がなくなった場合の終了を可能にする方向ですが、未施行の間は現行制度が適用されます。

自宅を売却して施設費を用意したい

本人が暮らしている、または過去に生活の本拠としていた居住用不動産(本人が現在住む、または過去に生活の本拠としていた建物や敷地です)※7成年後見人(現行制度で、判断能力を欠く常況にある方の法律行為や財産管理を支援するため家庭裁判所が選任する人です)※2等が処分する場合、家庭裁判所の許可が必要です。売却が本人の生活、帰宅の可能性、家族関係、資産状況に与える影響を検討し、売却理由、代金の使途、施設の安定性などを説明します。許可を得ずにした処分は効力が問題になるため、売買契約前に裁判所と専門家へ確認します。本人の利益より相続人の都合を優先して処分することはできません。

身元保証人を求められている

成年後見人等は、本人の契約を支援し、支払いに必要な財産管理を行いますが、当然に本人の債務を個人で保証する立場ではありません。入院・入所先から「身元保証」「連帯保証」「緊急連絡」「死亡後の対応」をまとめて求められたときは、各項目を分けます。医療同意、日用品準備、緊急連絡、利用料支払い、退院・退所支援、死後事務は法的根拠と対応できる範囲が異なります。本人の家族、医療・介護関係者、自治体、専門職で役割を整理します。

本人と後見人等の意見が合わない

後見人等は本人の代わりに自分の価値観で生活を決める人ではありません。本人の意思、選好、生活歴を把握し、必要な情報を分かりやすく伝え、本人が決められるよう支えることが基本です。本人の安全や財産保全との調整が必要でも、本人の希望を確認せずに一律に外出、買物、交友関係を制限することは適切ではありません。関係が悪化した場合は、ケアマネジャーや相談支援専門員を交え、家庭裁判所や監督人に状況を報告・相談します。

09

よくある質問 手続と暮らし

Q1 申立て(家庭裁判所へ審判(家庭裁判所が手続を経て示す判断です)※5を求める正式な手続です)※4は途中で取り下げられますか

申立後の取下げには家庭裁判所の許可が必要です。希望する候補者が選ばれそうにない、専門職報酬が発生する可能性が分かったなどの理由だけで自由に取り下げられるとは限りません。申立前に、候補者が必ず選任されるわけではないこと、制度が継続すること、費用と監督があることを本人・家族で確認します。

Q2 家族を後見人等に指定できますか

申立書に候補者を記載できますが、家庭裁判所が本人の利益を基準に選任します。財産額が大きい、親族間に対立がある、候補者と本人の間に利害関係がある、複雑な法律事務がある場合などは、専門職や法人が選任されることがあります。家族と専門職が複数で選任されたり、監督人が付いたりする場合もあります。

Q3 後見人等への報酬はいくらですか

報酬は家庭裁判所が、事務内容、管理財産、難易度、期間などを考慮して審判で定め、本人の財産から支払われます。一律の定額ではありません。申立時に将来の報酬額が確定するわけではないため、裁判所の公表資料を目安にしつつ、個別の負担を断定しないことが大切です。経済的に負担が難しい場合は、自治体の利用支援事業を確認します。

Q4 後見人等は医療行為へ同意できますか

成年後見人(現行制度で、判断能力を欠く常況にある方の法律行為や財産管理を支援するため家庭裁判所が選任する人です)※2等の権限は財産管理と法律行為に関する代理・同意・取消しが中心で、手術や治療に対する本人固有の医療同意を包括的に代行できる権限が当然に与えられるわけではありません。医療機関は本人へ分かる方法で説明し、意思を確認することが基本です。本人が意思を示せない場合は、家族等から本人の価値観を聴き、医療・ケアチームで慎重に方針を検討します。

Q5 入院や施設入所の保証人になってもらえますか

後見人等は本人の法定代理人として契約手続を行う場合がありますが、自分の財産で利用料等を支払う連帯保証人になる義務はありません。緊急連絡先、契約代理、支払管理、身柄の引取り、死後事務などを「身元保証」という一語でまとめず、施設側と一項目ずつ確認します。

Q6 本人のお金を家族へ贈与できますか

本人の財産は本人の生活と利益のために管理します。相続税対策、将来の相続分配、親族の生活費などを目的に、本人の明確な意思や合理的な必要性を確認せず贈与することは原則として認められません。本人が従来から続けてきた少額の慶弔費などでも、本人の生活への影響と意思を確認し、判断に迷う場合は家庭裁判所へ相談します。

Q7 本人の預金を後見人等名義へ移しますか

本人の財産と後見人等の財産は厳格に分けます。預貯金の名義は本人のまま管理し、金融機関へ後見等の届出を行います。後見人等個人の口座へ移すことはしません。収支記録、領収書、通帳、証券、保険、不動産資料を整理し、家庭裁判所へ説明できる状態にします。

Q8 後見制度支援信託や後見制度支援預貯金とは何ですか

本人の財産のうち日常的な支払いに使わない部分を信託銀行等で管理し、まとまった払戻しに家庭裁判所の指示書を必要とする仕組みです。通常使用する預貯金口座には生活費等に必要な金額を置きます。利用の要否や商品は事件ごとに検討され、すべての人が利用するわけではありません。

Q9 引っ越しや施設変更は後見人等だけで決められますか

住まいは本人の生活と尊厳に直結します。契約上の代理権(本人に代わって契約などの法律行為を行う権限です)※3があっても、本人の希望を確認し、在宅生活を続ける支援、医療・介護の必要性、家族・地域とのつながり、費用、環境変化の影響を比較します。本人の意思確認が難しいときも、これまでの発言や生活歴、反応を手掛かりに、支援者間で本人にとっての最善を検討します。

Q10 制度利用中に判断能力が回復したらどうなりますか

現行制度でも、判断能力が回復して開始原因がなくなった場合は、家庭裁判所へ開始審判の取消しを申し立てることができます。ただし、単に当初の契約や遺産分割が終わっただけでは、判断能力の回復とは別です。2026年改正法は必要性がなくなったときに終了できる制度へ見直しますが、施行前は現行制度に従います。

Q11 後見人等を変更できますか

本人や家族が希望するだけで自由に交代できる制度ではありません。後見人等に不正な行為、著しい不行跡、その他職務に適さない事情があるときは、家庭裁判所が解任することがあります。本人との相性や支援上の問題がある場合は、具体的な事実を整理し、監督人や家庭裁判所へ相談します。改正法には状況に応じた交代をしやすくする見直しが含まれますが、施行日までは現行法が適用されます。

Q12 後見人等が亡くなったら制度も終わりますか

後見人等の死亡や辞任で本人に必要な法定後見そのものが当然に終わるわけではありません。家庭裁判所が新しい後見人等を選任します。辞任には家庭裁判所の許可が必要で、財産や記録を新しい担当者へ引き継ぎます。本人の死亡、開始審判の取消しなど、制度の終了原因とは区別します。

Q13 本人が亡くなった後も後見人等がすべて対応しますか

本人の死亡により成年後見等は終了します。後見人等は管理財産の計算、相続人等への引継ぎなど終了事務を行いますが、葬儀、納骨、賃貸住宅の明渡し、遺品整理などの死後事務を無制限に行えるわけではありません。生前から家族、自治体、事業者、専門職と役割を整理し、必要に応じて死後事務委任契約や遺言を検討します。

Q14 借金があっても申立てできますか

借金があることだけで制度を利用できないわけではありません。後見人等は債務の内容、消滅時効、保証、収入・資産、生活費を確認し、必要に応じて弁護士や司法書士へ債務整理を相談します。後見人等が本人の借金を自分のお金で返す義務はありません。本人の生活を維持しながら適法に整理できる方法を検討します。

Q15 相談したら必ず申立てを勧められますか

相談は制度利用を決める場ではなく、困りごとと選択肢を整理する場です。本人の理解力、必要な支援、家族や福祉サービスによる支援、緊急性、費用、制度による制約を確認し、日常生活自立支援事業(本人との契約に基づき、福祉サービス利用手続や日常的な金銭管理などを社会福祉協議会が支援する事業です)※6、任意代理、見守り、福祉サービス、消費生活相談などで対応できるかも検討します。成年後見制度(判断能力が十分でない方の財産管理や契約を、家庭裁判所が選任した支援者などが支える制度です)※1が必要な場合も、本人に必要な範囲を具体的にして申し立てます。

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改正法をさらに詳しく理解する

なぜ「後見・保佐・補助」を見直すのか

現行制度は、判断能力の程度に応じて後見、保佐、補助の三類型に分かれます。後見開始の審判(家庭裁判所が手続を経て示す判断です)※7を受けると、成年後見人(現行制度で、判断能力を欠く常況にある方の法律行為や財産管理を支援するため家庭裁判所が選任する人です)※1には原則として広い代理権(本人に代わって契約などの法律行為を行う権限です)※4取消権(本人が支援者の同意を得ずにした一定の法律行為を取り消せる権限です)※5が与えられ、本人が必要としている支援が一部であっても制度の影響が広く、目的を終えた後も判断能力が回復しない限り利用を終えにくいという課題が指摘されてきました。

改正法は、本人の権利を必要以上に制限せず、必要な事務に必要な権限だけを付ける仕組みを目指します。支援の必要性は「認知症だから」「障害があるから」と診断名だけで判断するものではありません。同じ人でも、日用品の購入、介護サービスの選択、不動産売却、遺産分割では理解や判断に必要な情報量が異なります。本人が支援を受けながら決められる可能性も含め、行為ごとに必要性を判断する考え方が中心になります。

補助への一元化

改正法の施行後は、成年の後見と保佐が廃止され、法定後見は補助へ一元化されます。家庭裁判所は、本人の事理を弁識する能力が不十分であり、本人の生活または財産に関する事務の全部または一部を補助人(現行制度で、判断能力が不十分な方を家庭裁判所が定めた範囲で支援する人です)※2に行わせる必要がある場合に補助開始の審判をします。

補助人にどの権限を付けるかは事件ごとに定めます。預貯金の払戻し、借入れや保証、不動産その他の重要財産の処分、訴訟、贈与や和解、相続の承認・放棄、遺産分割、一定期間を超える賃貸借などのうち、本人に必要な行為について同意・取消しの対象を決められます。本人に代わって行う必要がある特定の法律行為には代理権を定めます。日用品の購入など日常生活に関する行為は取消しの対象になりません。

特定補助人(2026年公布の改正法施行後に、家庭裁判所が特定の事務について選任できる補助人です)※3の役割

本人が事理を弁識する能力を欠く常況にあり、本人のために特に必要な場合、家庭裁判所は特定補助人を付する審判をできるようになります。特定補助人は、法律で定められた重要な財産行為等について取消権を行使し、本人に対する意思表示を受け、本人の財産を保存する行為を行います。

特定補助人が付けば自動的に本人のあらゆる契約を代理できるわけではありません。代理権が必要な場合は、別途、家庭裁判所が特定の法律行為について権限を定めます。「現在の成年後見人と名前だけが変わる」と説明すると、改正の目的である必要性・補充性を誤解させるため注意が必要です。

必要性に応じて権限の一部または全部を終了

改正後は、本人の判断能力が回復した場合だけでなく、同意・取消し、特定補助、代理権の必要がなくなった場合に、それぞれの審判を全部または一部取り消せます。すべての権限に関する審判が取り消される場合は、補助開始の審判自体も取り消されます。家庭裁判所が補助人等から定期報告を受け、権限の必要性を職権で見直す規定も置かれます。

例えば、遺産分割や不動産処分のために特定の代理権が必要だった方が、その事務を終え、日常生活を家族や福祉サービスの支援で安定して送れるようになった場合、必要性を再検討できる可能性があります。ただし、施行後も自動的に終了するわけではなく、家庭裁判所が本人の状態と支援環境を個別に判断します。

本人の意思を把握し尊重する義務

補助人は、事務を行うときに本人へ必要な情報を提供し、本人の話を聴くなど適切な方法で意向を把握し、その意向を尊重することが明文化されます。本人が一度に理解できない場合は、情報を分ける、図や写真を使う、慣れた場所で説明する、信頼する支援者に同席してもらうなどの工夫が考えられます。

本人の意思を尊重することは、本人の希望を無条件に実行することと同じではありません。詐欺被害、生活費の不足、生命・身体への重大な危険がある場合は、本人へ危険と選択肢を説明し、より制限の少ない代替案を探しながら保護を図ります。支援の過程と本人の反応を記録し、後から検証できるようにします。

本人の利益のために必要な補助人の交代

現行制度でも不正な行為や任務違反などがあれば解任できます。改正法はこれに加え、本人の利益のため特に必要があるときに補助人を解任できる規定を設けます。本人の生活課題が変わり、必要な専門性が変わった場合など、本人の利益を中心に交代を検討しやすくするものです。

もっとも、本人や親族が希望すればいつでも自由に交代できる制度ではありません。家庭裁判所が法定要件を判断します。意見の相違がある場合は、単に「相性が悪い」とするのではなく、本人への説明、意思確認、連絡状況、財産管理、支援関係への影響など具体的な事実を整理します。

将来の申立人を公正証書で指定

改正後は、本人が判断能力のあるうちに、将来自分について補助開始を申し立てる人を公正証書で指定できるようになります。本人、配偶者、四親等内の親族など現行の申立権者に加え、本人が信頼する人へ申立て(家庭裁判所へ審判を求める正式な手続です)※6の役割を託す選択肢です。

この指定だけで指定された人が補助人になるわけではありません。また、申立てをすれば必ず開始されるわけでもありません。家庭裁判所は、その時点の判断能力、支援の必要性、本人の意向、求める権限を確認して審判します。任意後見契約との役割分担も含め、公証人や専門家へ相談して設計します。

任意後見の開始と監督の見直し

現行制度では、任意後見契約は家庭裁判所が任意後見監督人を選任したときに効力を生じます。改正後は手続を「任意後見開始の審判」として整理し、家庭裁判所は開始時に原則として任意後見監督人を選任します。ただし、監督人による監督の必要が明らかにないと認められる場合は、監督人を選任しないことができる規定が設けられます。

複数の任意後見契約を段階的に使うための「不開始の合意」を公正証書で定める仕組み、任意後見契約の全部だけでなく一部の解除・変更に関する規律、任意後見と法定補助を併存させる場合の権限調整も整備されます。施行後の契約作成では、改正に対応した公証人の説明と最新の書式を確認する必要があります。

既に後見・保佐・補助を利用している方の経過措置

改正法が施行されても、既に開始している成年後見と保佐がその日に一斉に終了したり、自動的に新しい補助へ変更されたりするわけではありません。原則として従前の規定が継続して適用されます。その本人について新法上の補助開始の審判をするときは、家庭裁判所が旧後見・保佐の開始審判を取り消します。

施行日前に後見・保佐開始の申立てをし、施行時にまだ審判が確定していない事件は、新法上の補助開始の申立てとみなされます。旧制度の補助は新制度の補助とみなされます。施行前に締結した任意後見契約にも新法が適用されますが、旧法により既に生じた効力は妨げられません。個別事件の移行方法は家庭裁判所の案内に従います。

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後見人等に選任された後の実務

初回報告までに行うこと

選任された後見人等は、審判(家庭裁判所が手続を経て示す判断です)※2書、確定証明書、登記事項証明書などを確認し、付与された権限の範囲を正確に把握します。本人、家族、ケアマネジャー、相談支援専門員、医療機関、施設等から生活状況を聴き、預貯金、現金、保険、有価証券、不動産、負債、定期的な収入と支出を確認します。

本人の財産と後見人等自身の財産を分け、通帳、証書、印鑑、領収書を安全に管理します。家庭裁判所が指定する期限までに財産目録と収支予定表等を提出します。権限外の行為、利益相反(支援者と本人の利害が対立し、同じ人が双方のために公正に判断しにくい状態です)※3居住用不動産(本人が現在住む、または過去に生活の本拠としていた建物や敷地です)※5の処分、多額の臨時支出などは、実行前に家庭裁判所へ相談します。

定期報告と記録

後見人等は、本人の生活状況、財産の変化、収支、重要な契約、今後の支援方針を定期的に家庭裁判所へ報告します。領収書を残すだけでなく、本人へどのように説明し、どのような意向が示され、なぜその選択をしたのかを記録すると、身上保護(本人の生活、医療、介護、住まいなどに関する法律行為を本人の意思に配慮して支援することです)※4と意思決定支援の経過が明確になります。

親族から財産状況の説明を求められた場合でも、本人の個人情報と利益を基準に対応します。後見人等は親族全体の財産管理人ではなく、本人のために職務を行います。必要な情報共有の範囲は、本人の意向、家族の支援役割、裁判所の指示等を踏まえて判断します。

本人の生活費と楽しみを守る

財産を減らさないことだけが良い管理ではありません。本人の収入と資産、将来の医療・介護費を見通しつつ、食事、衣服、趣味、交際、外出、住環境など本人らしい生活に必要な支出を確保します。過度な節約により本人の生活の質を下げないよう、本人の希望と長期的な家計の両方を検討します。

少額の買物まで一律に制限せず、本人が自分で管理できる金額を相談して渡す、支払い方法を工夫する、定期的に一緒に確認するなど、本人の力を活かす方法を考えます。消費者被害の危険がある場合は、成年後見制度(判断能力が十分でない方の財産管理や契約を、家庭裁判所が選任した支援者などが支える制度です)※1だけに頼らず、消費生活センター、金融機関、通信事業者、地域の見守り等と連携します。

医療・介護・障害福祉との連携

後見人等は、本人に必要な介護保険、障害福祉、医療、年金、生活保護等の申請や契約を支援しますが、ケアマネジャー、相談支援専門員、医師、看護師などの専門職の役割を代替するものではありません。本人の目標と困りごとを共有し、誰が説明、契約、日常支援、金銭管理、緊急対応を担うかを明確にします。

ケース会議では、本人が参加できる方法を工夫し、本人抜きで結論を固定しないことが大切です。本人が長時間の会議に参加しにくい場合は、事前に分かりやすく説明して意向を確認し、会議後に結果を伝えます。本人の意思が変わることもあるため、一度の確認だけで将来のすべてを決めません。

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費用を考えるときの整理

成年後見制度(判断能力が十分でない方の財産管理や契約を、家庭裁判所が選任した支援者などが支える制度です)※1には、申立手数料、登記手数料、郵便料、診断書作成料がかかります。鑑定(家庭裁判所の判断に必要な場合、医師が本人の精神状態や判断能力を専門的に評価する手続です)※4が必要な場合は鑑定費用も必要です。選任後は、後見人等や監督人から報酬付与の申立て(家庭裁判所へ審判(家庭裁判所が手続を経て示す判断です)※3を求める正式な手続です)※2があれば、家庭裁判所が報酬を定め、本人の財産から支払います。

「家族が候補者なら必ず無料」「専門職なら毎月一律の金額」とは限りません。報酬は事務内容、管理財産、難易度、期間などを考慮して決められます。申立前に正確な将来総額を確定することはできないため、裁判所の案内を目安にし、継続的な負担があり得ることを理解します。

自治体の成年後見制度利用支援事業(申立費用や後見人等報酬の負担が難しい場合に、自治体が要件に応じて助成などを行う事業です)※5は、申立費用や報酬を助成する場合がありますが、全国一律ではありません。本人の住所地、自治体が援護を行う関係、申立人、生活保護・住民税、収入・資産、後見人等が親族か専門職か、申請期限などの要件があります。審判後に初めて調べると期限に間に合わないことがあるため、申立前から住所地の窓口へ確認してください。

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緊急時に成年後見だけを待たない

虐待、財産の持出し、詐欺、家賃滞納、医療中断、退院期限など緊急性が高い場合、成年後見の審判(家庭裁判所が手続を経て示す判断です)※1だけを待つと本人の安全や住まいを守れないことがあります。高齢者虐待は地域包括支援センターまたは自治体、障害者虐待は障害者虐待防止センター、消費者被害は消費生活センター、犯罪や差し迫った危険は警察へ相談します。

家庭裁判所には、必要な場合に審判前の保全処分を申し立てる仕組みがありますが、要件があり、個別の法律判断が必要です。緊急の支払い、医療、住まい、財産保全を分け、自治体、社会福祉協議会、医療・介護関係者、弁護士・司法書士と対応を組み立てます。

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主な公式情報

  • 法務省「民法等の一部を改正する法律について(成年後見制度(判断能力が十分でない方の財産管理や契約を、家庭裁判所が選任した支援者などが支える制度です)※1の見直し)」
  • 裁判所「後見ポータルサイト」および各家庭裁判所の申立て(家庭裁判所へ審判を求める正式な手続です)※2案内
  • 厚生労働省「日常生活自立支援事業(本人との契約に基づき、福祉サービス利用手続や日常的な金銭管理などを社会福祉協議会が支援する事業です)※3
  • よこはま成年後見推進センター、横浜市社会福祉協議会「権利擁護事業」
  • 川崎市成年後見支援センター、川崎市社会福祉協議会「日常生活自立支援事業」
  • 大田区「成年後見制度の概要」、おおた成年後見センター
  • 品川区「成年後見制度について」、品川成年後見センター

制度内容、費用、助成要件、申請期限、窓口は変わることがあります。本記事は2026年8月2日時点の一次資料を基準とし、個別案件の法的判断を行うものではありません。申立てや契約の前に、家庭裁判所、自治体、社会福祉協議会、公証役場、弁護士・司法書士等へ最新情報を確認してください。