MEDICAL COST SUPPORT GUIDE
医療費の負担を整理する総合ガイド
高額療養費、難病医療、自立支援医療、医療費控除などを、横浜市・川崎市・大田区・品川区の地域情報とともに整理しました。制度を探す入口としてご利用ください。
制度内容確認日:2026年8月1日
医療費を軽減する制度について
横浜市・川崎市・大田区・品川区にお住まいの方へ
制度内容確認日:2026年8月1日
病気やけがの治療が長期化すると、診察代や薬代だけでなく、入院時の食費、通院交通費、差額ベッド代、介護サービス費、休職による収入減少など、生活全体に影響が及びます。
日本には、公的医療保険の自己負担を一定額までに抑える制度、特定の疾病や障害を対象とする医療費助成、働けない期間の所得を補う制度、税負担を軽くする制度、経済的に受診が難しい人を支える制度があります。ただし、制度によって対象となる費用、所得基準、申請先、申請期限が異なります。
また、一つの制度だけで医療費の全額を補えるとは限りません。高額療養費、自立支援医療、指定難病医療費助成、自治体の医療費助成など、複数の制度を優先順位に沿って適用する場合もあります。
本記事では、医療費や療養中の生活費を軽減する主な制度について、対象者、助成内容、対象外となる費用、申請方法及び利用時の注意点を解説します。
1.最初に知っておきたい医療費軽減制度の全体像
医療費に関係する制度は、目的によって大きく分けられます。
| 制度 | 主な目的 |
|---|---|
| 高額療養費制度 | 1か月の保険診療の自己負担を所得区分別の上限までに抑える |
| 限度額適用 | 医療機関窓口で支払う金額をあらかじめ上限までに抑える |
| 高額医療・高額介護合算制度 | 1年間の医療保険と介護保険の自己負担を軽減する |
| 後期高齢者医療制度 | 75歳以上等の医療保険を支える |
| 自立支援医療 | 障害の軽減や精神科通院等に必要な医療費を軽減する |
| 重度障害者医療費助成 | 一定の重度障害がある人の保険診療自己負担を自治体が助成する |
| 指定難病医療費助成 | 指定難病と関連傷病の医療費を助成する |
| 小児慢性特定疾病医療費助成 | 対象疾病のある児童等の医療費を助成する |
| 傷病手当金 | 病気やけがで働けない期間の所得を補う |
| 医療費控除 | 年間医療費が一定額を超えた場合に所得税等を軽減する |
| 無料低額診療事業 | 経済的事情によって受診が難しい人の診療費を減免する |
| 生活保護の医療扶助 | 生活保護受給者に必要な医療を給付する |
ここで重要なのは、「窓口負担を抑える制度」「後から払い戻しを受ける制度」「所得を補う制度」「税を軽減する制度」は、それぞれ役割が異なるという点です。
例えば、医療費控除は、医療機関の窓口で医療費が安くなる制度ではありません。その年に支払った医療費を基に、確定申告によって所得税等の負担を軽くする制度です。傷病手当金も医療費そのものの助成ではなく、療養によって働けない期間の生活保障を目的としています。
2.高額療養費制度
高額療養費制度とは
高額療養費制度は、同じ月の1日から末日までに支払った保険診療の自己負担額が、年齢や所得に応じた上限額を超えた場合、超過額の支給を受けられる制度です。
2026年8月から制度が改正され、月単位の自己負担上限に加えて、長期療養者等を対象とする年間上限が設けられました。厚生労働省の例では、70歳未満で年収約370万円から約510万円の人が総医療費100万円の治療を受けた場合、2026年8月以降の自己負担は約9万3,000円です。実際の限度額は年齢、所得、加入保険、診療月などによって異なります。厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」
対象となる費用
原則として、公的医療保険が適用された次の自己負担額が対象です。
- 医師による診察
- 保険適用となる検査
- 投薬及び処方薬
- 注射、点滴
- 手術
- 入院基本料
- 保険適用となるリハビリテーション
- 保険適用となる訪問看護
- 保険薬局で支払った薬代
医療機関と保険薬局が別でも、条件を満たす自己負担額は合算の対象になります。
対象外となる費用
次の費用は、原則として高額療養費の対象になりません。
- 入院時の食事代
- 差額ベッド代
- 先進医療の技術料
- 自由診療
- 健康診断
- 予防接種
- 診断書等の文書料
- 病衣、テレビ、日用品等の費用
- 保険適用外の歯科材料
- 通院交通費
- 介護保険サービスの自己負担
高額療養費によって入院費のすべてが上限内に収まるわけではありません。特に差額ベッド代、食事代、日用品費は別に必要です。
1か月単位で計算する点に注意
高額療養費は暦月単位です。例えば、7月25日から8月10日まで入院した場合、7月分と8月分に分けて計算します。入院期間が月をまたぐと、それぞれの月で限度額を計算するため、同じ日数の入院でも自己負担が変わることがあります。
緊急性のない予定入院では、治療上可能であれば月初からの入院が費用面で有利になる場合があります。ただし、治療日程は医学的必要性を最優先とし、費用だけを理由に受診や治療を遅らせるべきではありません。
世帯合算
同じ医療保険に加入する家族の自己負担は、一定の条件の下で合算できます。ただし、住民票上で同一世帯でも、加入する医療保険が異なる場合は合算できないことがあります。
例えば、夫が後期高齢者医療、妻が国民健康保険、子が勤務先の健康保険に加入している場合、それぞれ別の医療保険として計算します。
多数回該当
直近12か月以内に高額療養費の対象となった月が3回以上ある場合、4回目以降は「多数回該当」として上限額が低くなることがあります。抗がん剤治療、人工透析、免疫抑制療法など、長期にわたって高額な治療を受ける人に関係する仕組みです。
転職、退職、75歳到達などによって加入する医療保険が変わると、多数回該当の通算方法が変わる場合があります。保険が変わる予定がある人は、変更前後の保険者へ相談してください。
2026年8月からの年間上限
2026年8月から、月単位の限度額に加えて年単位の上限が導入されました。月ごとの負担が続く長期療養者について、年間の自己負担が一定額に達した後の負担を抑える仕組みです。厚生労働省「医療保険制度改正法が成立しました」
所得区分や制度移行時期によって計算が異なるため、具体的な上限額は加入している健康保険組合、協会けんぽ、市区町村国民健康保険、後期高齢者医療広域連合に照会してください。
3.限度額適用とマイナ保険証
限度額適用とは
高額療養費は、いったん医療機関で自己負担額を支払い、後から上限超過分の支給を受けることが基本です。しかし、高額な医療費を一時的に立て替えることが難しい場合があります。
限度額適用の仕組みを利用すると、医療機関ごとの窓口負担を、その月の自己負担限度額までに抑えられます。
マイナ保険証を利用する場合
オンライン資格確認に対応する医療機関でマイナ保険証を提示し、限度額情報の提供に同意すると、原則として限度額適用認定証を別に提示しなくても、窓口負担に限度額が適用されます。
ただし、医療機関のシステム、加入保険の情報反映状況、公費負担医療との併用などによって個別対応が必要になる場合があります。入院前に医療機関の入退院窓口または医事課へ相談すると安心です。
限度額適用認定証が必要になる場合
マイナ保険証を使用しない場合や、オンライン資格確認に対応していない医療機関では、加入する医療保険へ申請し、限度額適用認定証等の交付を受けます。
主な申請先は次のとおりです。
- 協会けんぽ加入者:全国健康保険協会の各支部
- 健康保険組合加入者:勤務先または健康保険組合
- 共済組合加入者:加入する共済組合
- 国民健康保険加入者:住所地の市区町村
- 後期高齢者医療加入者:住所地の市区町村または広域連合
横浜市国民健康保険では、オンライン資格確認に対応する医療機関で限度額情報の利用に同意する方法と、区役所で限度額適用認定証の交付を受ける方法が案内されています。横浜市「高額療養費支給制度」
限度額適用でも後日の手続きが必要なことがある
複数の医療機関を受診した場合、同じ世帯の家族分を合算する場合、医療機関と薬局の支払いを合算する場合などは、窓口負担だけでは最終的な高額療養費額を計算できないことがあります。その場合は、後から保険者へ高額療養費を申請します。
4.高額医療・高額介護合算制度
制度の目的
高額医療・高額介護合算制度は、医療保険と介護保険の両方を利用する世帯の負担を軽減する制度です。
毎年8月1日から翌年7月31日までの1年間について、医療保険と介護保険の対象となる自己負担を合算し、所得及び年齢に応じた基準額を超えた場合に、超過分の支給を受けます。厚生労働省「高額医療・高額介護合算療養費制度」
対象となる費用
- 高額療養費を適用した後の医療保険自己負担
- 高額介護サービス費を適用した後の介護保険自己負担
対象外となる主な費用
- 差額ベッド代
- 入院時の食事代
- 介護施設の食費及び居住費
- 介護保険の支給限度額を超えて利用した費用
- 日用品費
- 理美容代
- 保険適用外の医療費
- 住宅改修費及び福祉用具購入費の一部
- 医療保険、介護保険の給付対象外となるサービス
同じ世帯でも合算できない場合
合算の単位は、住民票だけではなく、同じ医療保険に加入している世帯員です。夫婦で異なる医療保険に加入している場合は、原則として別々に計算します。
計算期間中に転居、転職、退職、75歳到達などがあると、以前加入していた保険者から自己負担額証明書を取得し、基準日時点の保険者へ提出する場合があります。
申請先
原則として、基準日である7月31日時点に加入していた医療保険の窓口へ申請します。対象と思われる世帯へ通知が届く場合もありますが、転居や保険変更があると通知されないことがあるため、医療費と介護費の双方が高額な世帯は自ら相談することが大切です。
5.後期高齢者医療制度
対象となる人
後期高齢者医療制度は、原則として75歳以上の人が加入する公的医療保険です。75歳の誕生日当日から、それまで加入していた国民健康保険や勤務先の健康保険から移ります。
65歳以上75歳未満でも、一定の障害があり、後期高齢者医療広域連合の認定を受けた人は加入できます。ただし、この年齢層の障害認定による加入は本人の選択を伴います。現在の医療保険料、被扶養者としての立場、窓口負担、自治体の障害者医療費助成などを比較して判断する必要があります。
横浜市では、神奈川県後期高齢者医療広域連合が制度を運営し、各区役所保険年金課が届出や相談の窓口となります。横浜市「後期高齢者医療制度」
医療機関での負担割合
医療機関窓口での負担割合は所得に応じて1割、2割または3割です。2022年10月の2割負担導入に伴って設けられた負担増加を月3,000円までに抑える配慮措置は、2025年9月30日で終了しています。
2割負担の人にも高額療養費制度があり、外来医療の自己負担には月単位及び年単位の上限が設けられています。
保険料
保険料は、加入者が等しく負担する均等割額と、前年所得に応じた所得割額を合計して算定します。保険料は世帯単位ではなく、被保険者一人ずつに賦課されます。
2026年度から子ども・子育て支援金制度に伴う負担も加わっています。神奈川県の2026・2027年度の医療分保険料は、均等割額と所得割額によって算定され、2026年度は子ども分の均等割及び所得割も加算されます。横浜市「後期高齢者医療保険料について」
介護保険とは別の制度
後期高齢者医療保険料と介護保険料は別に賦課されます。年金から両方の保険料が差し引かれる場合もありますが、一つの保険料に統合されているわけではありません。
6.自立支援医療
自立支援医療とは
自立支援医療は、心身の障害を除去または軽減するために必要な医療について、自己負担を軽減する公費負担医療制度です。
次の3種類があります。
- 精神通院医療
- 更生医療
- 育成医療
原則的な自己負担割合は1割です。ただし、世帯所得や「重度かつ継続」への該当状況に応じて月額上限が設けられます。厚生労働省「自立支援医療制度の概要」
精神通院医療
精神疾患があり、継続的な通院精神医療を必要とする人が対象です。
対象となり得るものには、次の費用があります。
- 精神科・心療内科等の外来診療
- 精神疾患に関係する処方薬
- 精神科デイケア
- 訪問看護
- 精神疾患に関係する検査
原則として入院医療は対象外です。また、精神疾患と関係のない風邪、けが、歯科治療などは対象になりません。
利用できる医療機関、薬局、訪問看護ステーションは、受給者証に記載された指定自立支援医療機関に限られます。通院先、薬局、訪問看護ステーションを変更するときは、原則として変更申請が必要です。
精神障害者保健福祉手帳を持っていなくても、精神通院医療を申請できる場合があります。手帳と自立支援医療は別制度です。
更生医療
18歳以上の身体障害者手帳所持者で、障害を除去・軽減する治療によって効果が見込まれる人が対象です。
対象例には次のような医療があります。
- 腎臓機能障害に対する人工透析、腎移植
- 心臓機能障害に対する弁置換術、ペースメーカー植込み術
- 肢体不自由に対する人工関節置換術
- 視覚障害に対する手術
- 免疫機能障害に対する医療
身体障害者手帳を持っていれば、すべての治療が1割負担になる制度ではありません。手帳に記載された障害と、更生医療として認定された治療との関連が必要です。
育成医療
18歳未満で身体に障害がある、または現存する疾患を放置すると将来障害を残す可能性があり、手術等によって改善が見込まれる児童が対象です。
口唇口蓋裂に伴う治療、先天性心疾患の手術、腎機能障害に対する治療、肢体不自由に対する手術などが対象となる場合があります。
7.重度障害者医療費助成
自治体が実施する医療費助成
重度障害者医療費助成は、一定の重度障害がある人について、保険診療の自己負担額を自治体が助成する制度です。全国一律ではなく、対象となる障害、所得制限、年齢制限、一部負担金、入院時食事代の扱いなどは自治体によって異なります。
横浜市では、対象者へ重度障害者医療証を交付し、保険診療の自己負担額を助成します。
利用時の基本的な考え方
医療機関を受診するときは、一般に次のものを提示します。
- マイナ保険証または資格確認書
- 重度障害者医療証
- 自立支援医療、指定難病等を利用する場合は各受給者証
県外受診、医療証を提示できなかった場合、医療機関が制度を取り扱っていない場合などは、いったん支払った後に横浜市へ払い戻しを申請することがあります。
高額療養費との関係
健康保険から高額療養費が支給される部分について、障害者医療費助成と重複して受給することはできません。健康保険から高額療養費等の支給を受けた場合、その金額を差し引いて助成額を計算します。
健康保険組合によっては、法定の高額療養費に加えて「付加給付」がある場合があります。この付加給付も自治体助成との調整対象になることがあります。
対象外となりやすい費用
- 保険適用外の診療
- 差額ベッド代
- 入院時の食事代
- 文書料
- 健康診断
- 予防接種
- 選定療養費
- 介護保険サービス費
対象範囲は自治体ごとに異なるため、転居時には新しい自治体で申請し直す必要があります。
8.指定難病の医療費助成
指定難病とは
原因が十分に解明されておらず、治療方法が確立していない難病のうち、国が定める要件に該当する疾病を指定難病といいます。2025年4月1日時点で348疾病が指定されています。
対象疾病と診断されただけで自動的に医療費助成を受けられるわけではありません。疾病ごとの診断基準及び重症度基準を満たし、申請後に支給認定を受ける必要があります。
重症度基準を満たさない場合でも、指定難病に関係する月ごとの医療費総額が一定額を超える状態が継続していると、「軽症高額該当」として対象になる場合があります。
助成対象となる費用
指定医療機関で受けた、認定疾病及びその疾病に付随して発生する傷病に関係する次の費用が対象です。
- 入院
- 外来
- 処方薬
- 訪問看護
- 一部の介護保険サービス
横浜市では、対象となる介護保険サービスとして、訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅療養管理指導、これらの介護予防サービス及び介護医療院サービスを案内しています。
自己負担
医療保険上の自己負担割合が3割の人は2割へ軽減されます。もともと1割または2割の人は、その割合が適用されます。
さらに、所得区分に応じた自己負担上限月額が設定されます。指定難病に関係する病院、薬局、訪問看護等の自己負担を合算し、月額上限を超えた部分は公費負担となります。
長期に高額な治療を受けている人には「高額難病治療継続」の特例があります。申請月を含む直近12か月のうち、指定難病に関係する医療費総額が5万円を超える月が6か月以上あるなどの要件を満たすと、月額上限が軽減される場合があります。
人工呼吸器等装着者についても特例がありますが、単に人工呼吸器を使用しているだけでなく、離脱の見込み、使用時間、日常生活上の介助状況などの要件があります。
対象外となる主な費用
- 指定難病と関係のない傷病の治療
- 指定医療機関以外で受けた医療
- 保険適用外の診療
- 入院時の食事代
- 差額ベッド代
- おむつ代、テレビ代、日用品費
- 診断書や臨床調査個人票の文書料
- 補装具、治療用装具
- 通所介護
- 訪問介護
指定医が勤務する医療機関と、難病法上の指定医療機関は同じ意味ではありません。申請書類を作成する医師が「指定医」であり、受給者証を利用して診療を受ける機関が「指定医療機関」です。
横浜市の制度内容、自己負担上限、指定医療機関及び申請先は、横浜市「特定医療費(指定難病)助成制度」で案内されています。
9.小児慢性特定疾病医療費助成
制度の対象
小児慢性特定疾病医療費助成は、長期にわたる療養を必要とし、生命や成長発達に影響する一定の疾病がある児童等について、医療費の負担を軽減する制度です。
2025年4月1日から対象疾病は801疾病に拡大されています。
原則として18歳未満が対象ですが、18歳になる前から制度を利用し、引き続き治療が必要な場合は、20歳未満まで継続できることがあります。18歳以降に初めて申請することはできません。
対象となる医療
認定された疾病及びその疾病に付随する傷病について、指定小児慢性特定疾病医療機関で受けた保険診療が対象です。
- 診察
- 入院
- 検査
- 薬剤
- 訪問看護
- その他、認定疾病に関係する保険診療
所得に応じた自己負担上限月額があり、重症患者、高額な治療を長期に受けている人、人工呼吸器等装着者などには負担軽減措置があります。
申請
申請では、指定医が作成した小児慢性特定疾病医療意見書が必要です。横浜市では、各区役所こども家庭支援課等が窓口となります。横浜市「小児慢性特定疾病制度の概要・申請」
医療費助成には開始日の遡及に関する仕組みがありますが、遡及できる期間には限度があります。対象疾病と診断された段階で、早めに医療機関の相談窓口または自治体へ相談してください。
小児医療費助成との関係
横浜市の小児医療費助成と、小児慢性特定疾病、育成医療等の公費負担医療を利用できる場合は、原則として疾病別の公費負担医療を先に適用し、残った保険診療の自己負担を小児医療費助成で扱います。横浜市「小児医療費助成」
10.傷病手当金
医療費ではなく所得を補う制度
傷病手当金は、勤務先の健康保険に加入する被保険者が、業務外の病気やけがによって働けず、給与を受けられない期間について支給を受ける制度です。
原則として国民健康保険には同一の法定給付がありません。自治体独自の給付が設けられる場合を除き、自営業者や国民健康保険加入者は対象外です。また、被扶養者も対象外です。
主な支給要件
次の要件をすべて満たす必要があります。
- 業務外の病気やけがの療養であること
- それまでの仕事に就けない状態であること
- 連続する3日間を含め、4日以上仕事を休んでいること
- 休業期間について給与の支払いがないこと
最初の連続3日間を「待期」といい、4日目以降が支給対象です。待期には、有給休暇や土曜日・日曜日・祝日などの公休日を含められる場合があります。
業務中または通勤途中の病気やけがは、原則として労災保険の対象です。
支給額
協会けんぽの一般的な計算では、1日当たりの支給額は、おおむね支給開始日前12か月間の標準報酬月額の平均を30日で割り、その3分の2に相当する額です。
給与の一部が支払われている場合、傷病手当金より給与額が少なければ差額が支給されることがあります。
支給期間
支給開始日から通算して1年6か月が上限です。途中で復職して傷病手当金を受けない期間がある場合、その不支給期間を除いて通算します。全国健康保険協会「傷病手当金」
退職後も、退職前の被保険者期間や退職時の労務不能状態などの要件を満たせば、継続給付を受けられる場合があります。退職日に出勤すると継続給付へ影響する可能性があるため、退職前に健康保険へ相談してください。
障害年金等との調整
同じ傷病による障害厚生年金、障害手当金、老齢退職年金、労災保険の休業補償給付などを受ける場合、傷病手当金の一部または全部が調整されることがあります。
11.医療費控除
医療費控除とは
医療費控除は、その年の1月1日から12月31日までに、自分または生計を一にする家族のために支払った医療費が一定額を超えた場合、確定申告によって所得控除を受ける制度です。
「生計を一にする」とは、必ずしも同居を意味しません。別居していても、生活費、学費、療養費等を継続的に負担している親族は対象となる場合があります。
医療費控除は、支払った医療費がそのまま戻る制度ではありません。課税所得から控除額を差し引き、所得税及び翌年度の住民税を軽減します。
控除額の基本計算
一般的な計算式は次のとおりです。
医療費控除額 =実際に支払った医療費 -保険金、高額療養費、出産育児一時金等で補填された額 -10万円
総所得金額等が200万円未満の場合は、10万円ではなく、総所得金額等の5%を差し引きます。控除額の上限は200万円です。
対象となり得る費用
- 医師または歯科医師による診療費
- 治療に必要な医薬品
- 入院費
- 通院のための公共交通機関の運賃
- 緊急時や公共交通機関を利用できない場合のタクシー代
- 治療目的のあん摩、マッサージ、はり、きゅう、柔道整復
- 医師の指示による治療用装具
- 介護保険サービス費のうち法令上の対象部分
- 一定の条件を満たすおむつ代
- 訪問看護の自己負担
- 妊娠、出産に関係する一定の費用
自家用車で通院した場合のガソリン代や駐車料金は、原則として対象外です。
介護保険サービスと医療費控除
介護保険サービスのすべてが医療費控除の対象になるわけではありません。
訪問看護、訪問リハビリテーション、通所リハビリテーション、短期入所療養介護などの医療系サービスは、対象となる部分があります。訪問介護や通所介護などの福祉系サービスも、一定の医療系サービスと併せて利用する場合に対象となることがあります。
領収書に医療費控除対象額が記載されるため、確定申告前に領収書の該当欄を見てください。
申告方法
確定申告書に「医療費控除の明細書」を添付します。医療費通知を利用して明細を作成することもできます。
領収書そのものを申告書へ添付する必要はありませんが、原則として自宅で5年間保管します。国税庁「医療費を支払ったとき」
セルフメディケーション税制と通常の医療費控除は、同じ年に両方を適用できません。どちらか一方を選択します。
12.無料低額診療事業
経済的理由で受診できない人を支える制度
無料低額診療事業は、経済的な理由によって必要な医療を受けることが難しい人に対し、実施医療機関が診療費を無料または低額にする事業です。
生活保護を利用していない人でも相談できます。失業、収入減少、住居喪失、無保険、外国籍、家族関係の断絶など、さまざまな事情が対象になり得ます。
利用条件
全国共通の一律所得基準があるわけではありません。実施医療機関が、本人の収入、世帯状況、資産、生活費、医療の必要性などを基に減免の可否や期間を判断します。
相談時には、次の資料を求められる場合があります。
- 給与明細
- 年金額の分かる書類
- 預貯金通帳
- 家賃や公共料金の資料
- 健康保険の資格情報
- 本人確認書類
書類がそろっていないことを理由に受診を諦めず、まず医療機関の医療ソーシャルワーカーまたは相談員へ事情を伝えてください。
対象範囲
減免対象は、原則としてその医療機関に支払う診療費です。院外薬局の薬代、他院の診療費、差額ベッド代、文書料、交通費などは対象外となることがあります。
制度を利用する前に、診療費のどこまでが減免されるか、院外処方薬をどう扱うかを相談する必要があります。
横浜市内の実施医療機関
横浜市は、汐田総合病院、うしおだ診療所、済生会横浜市東部病院、梶山診療所、うしおだ在宅クリニック、済生会神奈川県病院などの実施施設を掲載しています。診療科、減免基準、申請方法は各施設へ問い合わせます。横浜市「無料低額診療施設」
無料低額診療は、生活保護の代わりに恒久的な医療保障を設ける制度ではありません。必要に応じて、生活困窮者自立支援制度、国民健康保険料の減免、生活保護申請などにつなぐ役割もあります。
13.生活保護の医療扶助
医療扶助とは
医療扶助は、生活保護を利用する人に対して、病気やけがの治療に必要な医療を給付する制度です。
生活保護受給者は、原則として国民健康保険の被保険者から除かれます。被用者保険等に加入していない場合、必要な医療費は医療扶助から給付され、原則として医療機関窓口での自己負担はありません。
被用者保険の被保険者・被扶養者である場合や、自立支援医療等の公費負担医療を利用できる場合は、他の制度を先に適用し、残る対象費用を医療扶助が扱います。厚生労働省「生活保護・医療扶助に関する参考資料」
対象となる医療
必要性が認められた次の医療等が対象になります。
- 診察
- 薬剤及び治療材料
- 医学的処置
- 手術
- 入院
- 訪問看護
- 移送
- 施術
- その他、治療に必要な医療
原則として、生活保護法の指定医療機関を利用します。
受診方法
通常は、福祉事務所のケースワーカーへ受診希望を伝え、医療券等によって指定医療機関を受診します。マイナンバーカードを医療券・調剤券として利用する医療扶助のオンライン資格確認も導入されています。
夜間の急病や救急搬送など、事前連絡が難しい場合は、生命と身体の安全を優先して受診し、その後速やかに医療機関とケースワーカーへ生活保護受給中であることを伝えます。
医療扶助でも対象外となることがある費用
- 医学的必要性のない差額ベッド代
- 診断書等の文書料
- 入院中のテレビ代や日用品費
- 保険適用外の診療
- 美容を目的とする治療
- 医学的必要性が認められない移送費
- 指定外医療機関で理由なく受けた診療
おむつ代、治療材料、通院移送費等は、医学的必要性や事前の手続きによって取り扱いが変わります。自己判断で購入・利用する前に、ケースワーカーへ相談してください。
医療扶助の申請をためらわないこと
所持金が少なく、受診できない状態にある場合、病状が悪化してから救急搬送となる危険があります。生活保護は、資産や収入だけでなく、世帯状況、扶養の実態、就労能力、医療・介護の必要性などを総合して判断する制度です。
親族がいること、持ち家があること、働いていることだけを理由に、一律に申請できないわけではありません。申請を希望する人には申請する権利があります。
横浜市では、各区福祉保健センターの生活支援課が生活保護の相談・申請窓口です。
14.複数の制度を利用するときの優先順位
医療費助成を複数利用できる場合、一般的には次の順序で費用を計算します。
- 公的医療保険
- 高額療養費
- 自立支援医療、指定難病、小児慢性特定疾病等の公費負担医療
- 重度障害者医療費助成、小児医療費助成等の自治体制度
- 民間医療保険等
実際の適用順序は制度の組み合わせによって異なります。二重給付は受けられないため、高額療養費、健康保険組合の付加給付、自治体の医療費助成、民間保険等から給付を受けたときは、別の制度の申請書へ記載する必要があります。
受給者証や医療証を複数持っている場合は、受診時にすべて提示してください。
15.制度の利用漏れを防ぐためのチェックポイント
医療費の負担が大きくなったときは、次の項目を整理します。
- 加入している医療保険は何か
- 医療機関窓口での負担割合は何割か
- 1か月の保険診療自己負担額はいくらか
- 入院が月をまたいでいるか
- 同じ医療保険に加入する家族にも医療費があるか
- 介護保険の自己負担も高額になっているか
- 障害者手帳を取得しているか
- 精神科への継続通院があるか
- 指定難病または小児慢性特定疾病に該当するか
- 勤務先の健康保険に加入しているか
- 病気やけがで仕事を休んでいるか
- 年間医療費が医療費控除の基準を超えるか
- 経済的理由で受診や服薬を中断していないか
- 生活費そのものが不足していないか
領収書、医療費通知、自己負担上限額管理票、受給者証、健康保険からの支給決定通知は、まとめて保管してください。転居、転職、退職、結婚、離婚、75歳到達、生活保護開始などによって、加入保険や助成制度の取り扱いが変わります。
16.どこへ相談すればよいか
| 相談内容 | 主な相談先 |
|---|---|
| 高額療養費・限度額適用 | 加入する健康保険、市区町村保険年金課 |
| 後期高齢者医療 | 市区町村、後期高齢者医療広域連合 |
| 自立支援医療 | 市区町村の障害福祉担当窓口 |
| 重度障害者医療費助成 | 市区町村の医療費助成担当窓口 |
| 指定難病 | 市区町村・都道府県の難病担当窓口 |
| 小児慢性特定疾病 | 市区町村の子ども・家庭担当窓口 |
| 傷病手当金 | 勤務先、健康保険組合、協会けんぽ |
| 医療費控除 | 税務署、税理士 |
| 無料低額診療 | 実施医療機関の相談窓口 |
| 生活保護の医療扶助 | 福祉事務所、区役所生活支援課 |
| 入院中の制度相談 | 医療ソーシャルワーカー、退院支援部門 |
| 在宅療養と介護保険 | 地域包括支援センター、ケアマネジャー |