介護離職を防ぐための仕事と介護の両立支援
介護休業(対象家族1人につき通算93日まで、3回を上限に分割して取得できる休業制度です)※2・介護休暇(通院の付き添いや介護サービスの手続などに使える休暇です)※3・短時間勤務・介護休業給付から遠距離介護までを総合的に解説
制度内容確認日:2026年8月1日
親や配偶者などに介護が必要になると、家族は「自分が仕事を辞めなければ支えられないのではないか」と考えやすくなります。入院、退院、認知症の進行、転倒、骨折、がん治療、医療処置の導入などが重なると、短期間に多くの判断を迫られ、勤務を続ける見通しを持てなくなることがあります。
しかし、退職すると、収入、社会保険、厚生年金、職業上の経験、同僚とのつながりを失う可能性があります。介護が終わった後に、同じ条件で再就職できるとも限りません。介護費用を負担する時期に世帯収入が減るため、本人と家族の生活がともに苦しくなることもあります。
仕事と介護の両立では、家族が介護をすべて担うのではなく、介護保険サービス、医療、地域支援、家族内の分担、勤務先の両立支援制度を組み合わせます。介護休業は、家族が長期間つききりで介護するためだけの制度ではありません。要介護認定の申請、ケアマネジャーへの相談、介護サービスの導入、住環境の整備、家族の役割分担など、復職後も介護を継続できる体制を作る期間として活用します。
2025年4月1日からは、改正育児・介護休業法(仕事と育児・家族介護を両立するための休業や勤務上の措置を定めた法律です)※1により、企業に対して、介護離職防止のための雇用環境整備、介護に直面した労働者への個別周知と意向確認、40歳前後の労働者への早期情報提供などが義務づけられています。厚生労働省「介護関係の法改正のポイント」
本記事では、介護休業、介護休暇、短時間勤務等の措置、所定外労働(会社が定めた通常の勤務時間を超える労働です)※4・時間外労働(原則として1日8時間・週40時間の法定労働時間を超える労働です)※5・深夜業(午後10時から午前5時までの時間帯に行う労働です)※6の制限、介護休業給付、ケアマネジャーへ相談する時期、遠距離介護、会社へ伝える情報、家族だけで抱え込まない支援体制について詳しく解説します。
1.介護離職は、介護そのものだけが原因ではありません
介護離職は、介護動作の負担だけによって生じるものではありません。多くの場合、次のような問題が重なります。
- 介護保険制度を知らない
- 誰へ相談すればよいか分からない
- 要介護認定(介護保険サービスが必要な程度を市区町村が判定する仕組みです)※4を申請していない
- ケアマネジャー(介護を必要とする方の相談を受け、ケアプラン作成やサービス事業者との連絡調整を行う専門職です)※3へ家族の就労状況を伝えていない
- 介護サービスの導入が遅れている
- 家族内で介護が一人に集中している
- 夜間の見守りにより睡眠不足が続いている
- 通院付き添いのたびに年次有給休暇を消費している
- 急な呼び出しが多い
- 認知症による電話や訪問対応が勤務中にも発生する
- 遠距離移動に時間と費用がかかる
- 会社へ介護状況を伝えられない
- 介護休業(対象家族1人につき通算93日まで、3回を上限に分割して取得できる休業制度です)※1と介護休暇(通院の付き添いや介護サービスの手続などに使える休暇です)※2の違いを知らない
- 介護休業中の収入がなくなると思っている
- 本人が介護サービスを拒否している
- 家族が「自分で介護するべきだ」と考えている
- 退院日だけが先に決まり、在宅支援が整っていない
- 将来の見通しを持てない
介護離職を防ぐには、労働制度だけでなく、介護サービス、医療、住まい、金銭管理、権利擁護(虐待防止、成年後見制度の利用支援、消費者被害防止などにより本人の権利を守る支援です)※5、家族関係まで含めた調整が必要です。
2.最初に知っておきたい両立支援制度の全体像
育児・介護休業(対象家族1人につき通算93日まで、3回を上限に分割して取得できる休業制度です)※2法(仕事と育児・家族介護を両立するための休業や勤務上の措置を定めた法律です)※1に基づく主な制度は次のとおりです。
| 制度 | 主な目的 | 利用期間・日数 | | -------- | ------------------------- | -------------------- | | 介護休業 | 介護体制を整えるためにまとまって休む | 対象家族1人につき通算93日、3回まで | | 介護休暇(通院の付き添いや介護サービスの手続などに使える休暇です)※3 | 通院同行や手続き等のため短時間・短期間休む | 1人なら年5日、2人以上なら年10日 | | 短時間勤務等 | 勤務時間や勤務方法を調整する | 3年以上の期間に2回以上利用可能な制度 | | 所定外労働(会社が定めた通常の勤務時間を超える労働です)※4の制限 | 会社所定の勤務時間を超える残業を免除する | 1回1か月以上1年以内、回数制限なし | | 時間外労働(原則として1日8時間・週40時間の法定労働時間を超える労働です)※5の制限 | 法定時間外労働を月24時間・年150時間以内にする | 1回1か月以上1年以内、回数制限なし | | 深夜業(午後10時から午前5時までの時間帯に行う労働です)※6の制限 | 午後10時から午前5時の勤務を免除する | 1回1か月以上6か月以内、回数制限なし | | 介護休業給付 | 介護休業中の所得を補う | 原則として休業開始時賃金日額の67%相当 | | テレワーク等 | 介護と勤務場所を調整する | 事業主の導入は努力義務 |
このほか、会社独自の制度として、次のような支援が設けられている場合があります。
- 介護休業期間の上乗せ
- 有給の介護休暇
- 失効した年次有給休暇の介護目的利用
- 保存休暇
- 在宅勤務
- フレックスタイム
- 時差出勤
- 週休3日制
- 勤務地限定制度
- 転勤への配慮
- 介護費用の補助
- 介護相談窓口
- 外部相談サービス
- 介護休業給付への会社独自の上乗せ
- 再雇用制度
法律上の最低基準だけで判断せず、就業規則、育児・介護休業規程、社内ポータル、人事担当者、労働組合等から勤務先独自の制度も調べます。
3.対象となる「要介護状態(けが、病気、心身の障害により、2週間以上にわたり常時介護を必要とする状態です)※2」とは
育児・介護休業(対象家族1人につき通算93日まで、3回を上限に分割して取得できる休業制度です)※3法(仕事と育児・家族介護を両立するための休業や勤務上の措置を定めた法律です)※1における要介護状態は、負傷、疾病または身体上・精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態です。
ここでいう要介護状態は、介護保険の要介護認定(介護保険サービスが必要な程度を市区町村が判定する仕組みです)※4と完全に同じではありません。
介護保険で要支援・要介護認定を受けていなくても、法律上の判断基準に照らして、2週間以上にわたり常時介護を必要とする状態に該当すれば、介護休業等の対象になる可能性があります。
例えば、次の状態が考えられます。
- 入院中で身の回りの支援や退院調整を必要とする
- がん治療中で日常生活に継続的な支援を要する
- 認知症により服薬、金銭、外出、火気の管理が難しい
- 骨折後に移動、排泄、入浴等の介助を必要とする
- 精神障害により生活全般の見守りが必要
- 障害児・者が日常生活上の継続的な介護を必要とする
- 医療的ケア児・者に吸引、経管栄養等の支援を必要とする
会社から家族の状態を示す書類の提出を求められる場合があります。ただし、要介護認定結果や医師の診断書だけが唯一の証明方法とは限りません。勤務先の規程と必要書類を人事・労務担当者へ尋ねます。
4.対象となる家族
介護休業(対象家族1人につき通算93日まで、3回を上限に分割して取得できる休業制度です)※1、介護休暇(通院の付き添いや介護サービスの手続などに使える休暇です)※2等の対象となる家族は次のとおりです。
- 配偶者
- 事実上婚姻関係と同様の事情にある人
- 父母
- 子
- 配偶者の父母
- 祖父母
- 兄弟姉妹
- 孫
同居や扶養を要件としない対象家族も含まれます。離れて暮らす親や祖父母の介護でも利用できる可能性があります。
介護関係の「子」は、養子を含む法律上の親子関係がある子です。障害児・者、医療的ケア児・者も含まれます。ただし、乳幼児の通常の成育過程で必要となる一般的な世話は、介護休業等の「介護」には含まれません。
対象家族の範囲に含まれない親族や知人の世話では、法定の介護休業等を利用できない場合があります。その場合は、年次有給休暇、会社独自の休暇、勤務時間調整等を相談します。
5.介護休業(対象家族1人につき通算93日まで、3回を上限に分割して取得できる休業制度です)※2
5-1.介護休業とは
介護休業は、要介護状態(けが、病気、心身の障害により、2週間以上にわたり常時介護を必要とする状態です)※1にある対象家族を介護する労働者が、一定期間仕事を休む制度です。
対象家族1人につき、通算93日まで、3回を上限として分割できます。
例えば、93日を次のように分けられます。
- 30日、30日、33日
- 14日、30日、49日
- 31日、31日、31日
- 93日を1回で取得
取得期間は本人の事情に応じて決めます。必ず3回に分ける必要はありません。
厚生労働省は、介護休業を、家族が介護をすべて担う期間ではなく、地域包括支援センター(高齢者の介護、福祉、医療、権利擁護などをまとめて相談できる地域の公的な窓口です)※4やケアマネジャー(介護を必要とする方の相談を受け、ケアプラン作成やサービス事業者との連絡調整を行う専門職です)※5への相談、介護サービスの手配、家族の分担、民間サービスの検討など、仕事と介護を両立できる体制を整える期間として案内しています。厚生労働省「介護休業」
5-2.介護休業中に整えること
第1段階:状況を把握する
- 診断名
- 治療方針
- 入院期間
- 退院予定
- 日常生活動作
- 認知機能
- 医療処置
- 本人の希望
- 同居家族
- 住環境
- 経済状況
- 緊急時の連絡体制
第2段階:公的制度へつなぐ
- 要介護認定(介護保険サービスが必要な程度を市区町村が判定する仕組みです)※6申請
- 地域包括支援センターへの相談
- ケアマネジャーの選定
- 障害福祉制度の申請
- 医療費助成の申請
- 成年後見制度等の検討
- 生活困窮に関する相談
第3段階:在宅生活を整える
- 訪問介護
- 訪問看護
- 通所介護
- 短期入所
- 訪問診療
- 薬局
- 福祉用具
- 住宅改修
- 配食
- 見守り
- 緊急通報
- 介護タクシー
- 民間サービス
第4段階:復職後の運用を試す
- 朝の介護を誰が担うか
- 日中の支援をどうするか
- 通院日はどうするか
- 夜間の緊急時に誰が対応するか
- デイサービスを拒否した場合の対応
- ヘルパーが来られない場合の代替
- ショートステイの予約
- 家族への連絡方法
- 会社の勤務制度との組み合わせ
介護休業の終盤には、実際の勤務時間を想定して介護サービスを試し、支障がある部分を調整します。
5-3.対象となる労働者
原則として、対象家族を介護する男女労働者が対象です。正社員だけでなく、契約社員、パートタイマー、アルバイト等も要件を満たせば取得できます。
期間を定めて雇用される労働者は、申出時点で、介護休業開始予定日から93日を経過する日から6か月を経過する日までに、労働契約が終了し、更新されないことが明らかでないことが必要です。
労使協定がある場合、次の労働者を対象外とすることがあります。
- 継続雇用期間が1年未満
- 申出の日から93日以内に雇用関係が終了することが明らか
- 1週間の所定労働日数が2日以下
「会社が忙しい」「代わりの社員がいない」という理由だけで、法定要件を満たす介護休業を一律に認めないことはできません。
5-4.申出期限
希望する日から介護休業を始めるためには、原則として開始予定日の2週間前までに、書面等で会社へ申し出ます。
社内様式がある場合は、その様式を使用します。
申出内容の例は次のとおりです。
- 申出年月日
- 労働者氏名
- 対象家族の氏名
- 労働者との続柄
- 対象家族が要介護状態にある事実
- 休業開始予定日
- 休業終了予定日
- 過去の介護休業取得日数
緊急入院や急な退院などで2週間前の申出が難しい場合は、まず上司と人事担当者へ速やかに相談します。会社の規程が法律より労働者に有利であれば、短い申出期間で利用できることもあります。
5-5.終了予定日の変更
休業終了予定日の2週間前までに申し出ることで、1回の介護休業につき1回、終了予定日を繰り下げられます。ただし、対象家族1人につき通算93日の範囲内です。
開始予定日の繰り上げや繰り下げについては、法律上、労働者の一方的な申出で当然に変更できる仕組みではありません。会社と協議します。
5-6.休業期間中の賃金
介護休業中の賃金を会社が支払うかどうかは、就業規則や労働契約によります。法律上、会社に賃金支払いを一律に義務づける制度ではありません。
賃金が支払われない、または一定以上減額される場合でも、雇用保険の要件を満たせば介護休業給付(雇用保険の被保険者が要件を満たして介護休業を取得した場合に支給される給付です)※3を受けられる可能性があります。
6.介護休暇(通院の付き添いや介護サービスの手続などに使える休暇です)※3
6-1.介護休暇とは
介護休暇は、要介護状態(けが、病気、心身の障害により、2週間以上にわたり常時介護を必要とする状態です)※1にある対象家族の介護や世話のため、年次有給休暇とは別に取得できる休暇です。
対象家族が1人の場合は年5日、2人以上の場合は年10日まで取得できます。
「1年間」は、会社が特に定めていない場合、原則として4月1日から翌年3月31日です。
6-2.取得単位
介護休暇は、1日単位または時間単位で取得できます。
例えば、次のように使えます。
- 1時間だけケアマネジャー(介護を必要とする方の相談を受け、ケアプラン作成やサービス事業者との連絡調整を行う専門職です)※5との面談に参加する
- 午前中に区役所で要介護認定(介護保険サービスが必要な程度を市区町村が判定する仕組みです)※6申請を行う
- 病院の診察へ付き添う
- 訪問調査へ同席する
- 退院前カンファレンスへ出席する
- 介護サービス事業所と契約する
- 福祉用具搬入へ立ち会う
- 施設見学へ行く
- 急な体調不良に対応する
- デイサービスの初回利用に付き添う
厚生労働省も、通院の付き添い、介護サービスの手続き、ケアマネジャーとの短時間の打ち合わせ等に利用できると案内しています。厚生労働省「介護休暇」
6-3.介護休業(対象家族1人につき通算93日まで、3回を上限に分割して取得できる休業制度です)※2との違い
| 項目 | 介護休業 | 介護休暇 | | ----- | ---------------- | ------------ | | 主な用途 | 介護体制を作るためまとまって休む | 通院・手続き等で短く休む | | 利用期間 | 通算93日、3回まで | 年5日または10日 | | 取得単位 | 原則として一定期間 | 1日または時間単位 | | 経済的支援 | 介護休業給付(雇用保険の被保険者が要件を満たして介護休業を取得した場合に支給される給付です)※4の対象になり得る | 法定の給付金はない | | 賃金 | 会社規程による | 会社規程による |
介護休暇は「休暇」という名称でも、法律上当然に有給になるわけではありません。有給か無給かは会社の規程によります。
6-4.対象者要件の変更
2025年4月1日から、継続雇用期間6か月未満の労働者を労使協定によって介護休暇の対象外にする仕組みは廃止されました。
現在、労使協定により除外できるのは、原則として週の所定労働日数が2日以下の労働者です。時間単位の取得が困難な業務について、労使協定により時間単位取得の対象外とし、1日単位のみとする場合があります。
6-5.申出方法
介護休暇は、法律上、申出を書面だけに限定していません。緊急時には口頭で申し出ることも可能です。
ただし、会社の手続き上、所定の申請書や勤怠システムへの入力を求められることがあります。後日の認識違いを防ぐため、可能であればメールや社内システム等で記録を残します。