SERIOUS ILLNESS SUPPORT GUIDE
治療と暮らしを支える制度の総合ガイド
難病、がん、医療依存度の高い方が利用できる医療・介護・障害福祉・所得保障・在宅療養支援を、横浜市・川崎市・大田区・品川区の情報とともに整理しました。
制度内容確認日:2026年8月1日
難病・がん・医療依存度の高い方の支援制度
医療費助成、介護保険、訪問看護、障害年金、身体障害者手帳、補装具※10・日常生活用具までを総合的に解説
制度内容確認日:2026年8月1日
難病、がん、神経疾患、重度の心疾患・呼吸器疾患・腎疾患などがある方は、治療費だけでなく、通院、服薬、医療処置、介護、生活環境の整備、就労継続、収入減少など、複数の課題を抱えることがあります。
人工呼吸器、在宅酸素療法、人工透析、中心静脈栄養、経管栄養、人工肛門・人工膀胱、尿道留置カテーテル、喀痰吸引、褥瘡処置、医療用麻薬、インスリン注射などを必要とする場合には、医療保険、介護保険、障害福祉制度、公費負担医療を組み合わせて在宅生活を支えます。
しかし、制度の対象は診断名だけで決まるとは限りません。年齢、疾病、障害の程度、日常生活への影響、加入する医療保険、所得、医師の診断内容、申請時期などによって異なります。また、同じ訪問看護でも、医療保険を使う場合と介護保険を使う場合があり、両者では利用回数、自己負担、支給限度額との関係が変わります。
本記事では、難病・がん・医療依存度の高い方が利用できる主な制度について、対象者、支援内容、申請方法、制度間の関係、在宅療養における実務上の注意点を詳しく解説します。
1.医療依存度が高い状態とは
「医療依存度」は、法令上の一つの認定区分ではありません。一般には、生命維持や病状管理のため、日常的または継続的に医療処置、医学的管理、看護職による観察等を必要とする程度を表します。
対象となり得る状態には、次のようなものがあります。
- 人工呼吸器を使用している
- 非侵襲的陽圧換気療法を受けている
- 在宅酸素療法を受けている
- 気管切開をしている
- 喀痰吸引を必要としている
- 経管栄養を利用している
- 胃ろう、腸ろう、経鼻胃管を使用している
- 中心静脈栄養を受けている
- 持続点滴や皮下注射を必要としている
- 人工透析を受けている
- 腹膜透析を自宅で管理している
- 尿道留置カテーテルを使用している
- 腎ろう、膀胱ろうがある
- 人工肛門または人工膀胱を造設している
- インスリン注射や血糖測定を必要としている
- 難治性褥瘡の処置を必要としている
- がん性疼痛に対して医療用麻薬を使用している
- 頻回な発作、急変、呼吸状態の変化がある
- 終末期にあり、症状緩和を必要としている
医療依存度が高くても、日常生活動作がすべて低下しているとは限りません。人工透析を続けながら就労している人、在宅酸素療法を利用しながら外出している人、人工肛門を自己管理している人もいます。
一方、医療処置が比較的少なくても、筋力低下、嚥下障害、失語症、認知機能低下、強い倦怠感、疼痛などによって全面的な生活支援が必要な場合があります。制度利用を検討するときは、医療処置の種類だけでなく、身体機能、認知機能、生活環境、介護者の状況を併せて評価します。
2.指定難病※1医療費助成制度
2-1.指定難病とは
難病のうち、国が定める要件を満たし、厚生労働大臣が指定した疾病を「指定難病」といいます。
2026年4月時点では、348疾病が指定難病となっています。対象疾病には、筋萎縮性側索硬化症、パーキンソン病、脊髄小脳変性症、多発性硬化症、重症筋無力症、潰瘍性大腸炎、クローン病、全身性エリテマトーデス、全身性強皮症、特発性間質性肺炎などがあります。
指定難病の医療費助成は、疾病の治療に伴う経済的負担を軽減するとともに、患者の医療情報を研究へ活用し、治療研究を進める目的があります。
2-2.対象となる人
原則として、次の条件を満たす必要があります。
- 国が指定する指定難病と診断されている
- 疾病ごとの診断基準を満たしている
- 疾病ごとの重症度基準を満たしている
- 公的医療保険に加入している、または生活保護を利用している
- 自治体へ申請し、支給認定を受けている
指定難病という診断名が付いただけで、自動的に医療費助成が始まるわけではありません。指定医が作成する臨床調査個人票※2等を添付して申請します。
横浜市では、患者の住民票が横浜市内にあり、公的医療保険に加入している人または生活保護を利用している人で、診断基準及び重症度基準を満たす人が対象です。横浜市「特定医療費(指定難病)助成制度」
2-3.軽症高額該当※3
疾病ごとの重症度基準に達していなくても、高額な治療を継続している場合には「軽症高額該当」により助成対象となることがあります。
一般的には、申請月以前の12か月以内に、指定難病に関係する医療費総額が3万3,330円を超える月が3回以上あることなどが要件です。
ここでいう医療費総額は、本人が窓口で支払った自己負担額ではなく、医療保険適用前の10割分の医療費です。医療費総額3万3,330円は、3割負担の人の窓口負担では約1万円に相当します。
軽症高額該当を申請する場合は、医療費申告書、領収書、診療報酬明細に関する資料などを求められることがあります。必要書類は自治体によって異なります。
2-4.助成の対象となる医療
認定された指定難病及びその指定難病に付随して生じる傷病について、指定医療機関で受けた次の医療が対象です。
- 外来診療
- 入院診療
- 検査
- 薬剤
- 訪問看護
- 一部の介護保険サービス
横浜市では、次の介護保険サービスも対象に含めています。
- 訪問看護
- 訪問リハビリテーション
- 居宅療養管理指導
- 介護予防訪問看護
- 介護予防訪問リハビリテーション
- 介護予防居宅療養管理指導
- 介護医療院サービス
介護保険サービスについては、指定医療機関が提供し、介護保険の支給限度額内であることなどの条件があります。
2-5.自己負担の仕組み
公的医療保険の窓口負担が3割の人は、指定難病に関係する医療について2割へ軽減されます。もともと1割または2割負担の人は、その負担割合が適用されます。
さらに、同じ月に複数の指定医療機関、薬局、訪問看護ステーション等で支払った指定難病関係の自己負担額を合算し、所得区分別の自己負担上限月額まで負担します。
自己負担上限額管理票には、指定医療機関がその月の医療費と自己負担額を記入します。複数の医療機関を利用する場合は、受給者証と管理票を毎回提示することが重要です。
2-6.高額かつ長期※4
支給認定を受けた後も高額な治療が続く人には、「高額かつ長期」または自治体によって「高額難病治療継続」と案内される負担軽減があります。
一般的には、申請月を含む直近12か月のうち、指定難病に関係する医療費総額が5万円を超える月が6回以上あることが要件です。該当すると、一般所得以上の人の月額上限が低くなる場合があります。厚生労働省「難病・小児慢性特定疾病医療費助成制度」
軽症高額該当と高額かつ長期は、名称が似ていますが役割が異なります。
| 区分 | 主な役割 |
|---|---|
| 軽症高額該当 | 重症度基準を満たさない人が医療費助成の対象となるための基準 |
| 高額かつ長期 | すでに医療費助成を利用する人の自己負担上限を軽くする基準 |
2-7.人工呼吸器等装着者の特例
人工呼吸器等を使用する人には、自己負担上限月額が軽減される場合があります。ただし、人工呼吸器を使用しているすべての人が対象になるわけではありません。
臨床調査個人票に記載された次のような内容を基に判定します。
- 人工呼吸器等を一日中使用している
- 離脱の見込みがない
- 日常生活の多くの項目で部分介助または全介助を必要とする
対象要件は制度上の基準に基づくため、主治医や自治体の難病担当窓口へ相談します。
2-8.対象外となる主な費用
- 認定された指定難病と関係のない診療
- 指定医療機関以外で受けた診療
- 保険適用外の診療
- 差額ベッド代
- 入院時の食事代
- 病衣、テレビ、日用品等
- 診断書及び臨床調査個人票の文書料
- 補装具や治療用装具の購入費
- 通所介護
- 訪問介護
- 福祉タクシー等の移動費
指定医が所属する病院であっても、難病法上の指定医療機関とは限りません。「指定医」は申請書類を作成できる医師、「指定医療機関」は受給者証を利用できる病院、診療所、薬局、訪問看護ステーション等を指します。
2-9.申請時期
原則として申請が必要です。申請が遅れると、助成対象となる開始日にも影響します。
診断後は、次の事項を早めに医療機関へ相談します。
- 疾病が指定難病に該当するか
- 主治医が難病指定医か
- 重症度基準を満たす可能性があるか
- 軽症高額該当を利用できるか
- 受診先、薬局、訪問看護が指定医療機関か
- 申請に必要な臨床調査個人票を作成できるか
3.小児慢性特定疾病から成人制度への移行
3-1.小児慢性特定疾病医療費助成とは
小児慢性特定疾病医療費助成は、長期にわたる療養を必要とし、生命や成長発達に影響する一定の疾病がある児童等の医療費を軽減する制度です。
2025年4月1日から対象疾病は801疾病となっています。
原則として18歳未満が対象です。18歳になる前から制度を利用しており、引き続き治療が必要な場合には、20歳未満まで延長できることがあります。
3-2.20歳以降は自動的に指定難病へ移るわけではない
小児慢性特定疾病と指定難病は、対象疾病、診断基準、重症度基準、法的根拠が異なります。そのため、小児慢性特定疾病医療費助成を利用していても、20歳になった時点で自動的に指定難病医療費助成へ移るわけではありません。
小児慢性特定疾病の中には、次のような場合があります。
- 同じ疾病が指定難病にも含まれる
- 成人期には別の疾病名または診断基準で指定難病に該当する
- 指定難病には含まれない
- 疾病名は指定難病に含まれるが、重症度基準を満たさない
- 軽症高額該当によって対象となる可能性がある
- 別の障害福祉制度や医療費助成を検討する必要がある
したがって、18歳を過ぎてからではなく、15~17歳頃から成人期の医療体制と制度移行を検討することが望まれます。
3-3.成人移行支援の内容
成人移行は、医療費助成の切り替えだけではありません。小児科中心の診療から成人診療科へ移り、本人が自分の病気、薬、緊急時の対応、受診方法を理解していく過程です。
主な準備項目は次のとおりです。
- 成人後の主治医・診療科
- 小児科と成人診療科の併診期間
- 病歴、手術歴、薬剤歴、アレルギー歴
- 医療機器の種類と設定
- 緊急時の対応
- 疾病に関する本人の理解
- 服薬及び医療処置の自己管理能力
- 意思決定支援
- 就学、就労、住まい
- 障害年金
- 身体障害者手帳
- 障害福祉サービス
- 成年後見制度等の権利擁護
- 指定難病医療費助成への移行可否
厚生労働省は、小児慢性特定疾病の成人移行について、医療の継続と医療費助成の継続は別の課題であると整理しています。小児期と成人期の医療を切れ目なくつなぐことと、成人後の公費助成対象になることは同義ではありません。厚生労働省「移行期支援について」
3-4.20歳前障害による障害基礎年金
小児期から重い障害が続いている場合、20歳到達時に障害基礎年金を請求できる可能性があります。
20歳前に初診日があり、年金制度へ加入していなかった場合、保険料納付要件はありません。ただし、障害の状態が障害年金の1級または2級に該当する必要があります。
20歳前障害による障害基礎年金には、本人所得による支給制限があります。身体障害者手帳の等級と障害年金の等級は別の基準です。
3-5.移行時に検討する制度
- 指定難病医療費助成
- 自立支援医療
- 重度障害者医療費助成
- 障害年金
- 身体障害者手帳
- 療育手帳
- 精神障害者保健福祉手帳
- 障害福祉サービス
- 補装具費支給制度
- 日常生活用具※11給付等事業
- 就労移行支援、就労継続支援
- 自立生活援助
- 共同生活援助
- 介護保険への将来的な移行
成人移行では、医療機関だけでなく、自治体の障害福祉担当、相談支援専門員、学校、就労支援機関等との連携も必要です。
4.がん患者と介護保険
4-1.65歳以上のがん患者
65歳以上の人は、がんの病期や種類を問わず、要支援・要介護状態になれば介護保険を申請できます。
介護保険を利用できるかどうかは、診断名だけではなく、日常生活上どの程度の支援や介護を必要としているかによって判定します。
例えば、次の状態がある場合は申請を検討します。
- 強い倦怠感があり家事が難しい
- 筋力が低下し、立ち上がりや歩行に介助を要する
- 入浴動作が難しい
- 食事量が低下している
- 排泄動作に支援を要する
- がん性疼痛がある
- 医療用麻薬の管理を必要とする
- 在宅酸素療法を導入している
- ストーマ管理に支援を要する
- 認知機能が低下している
- 一人暮らしで療養生活の維持が難しい
- 介護者の負担が大きい
治療中であっても、介護保険を申請できます。抗がん剤治療中、放射線治療中、手術後の療養中という理由で対象外になるわけではありません。
4-2.40~64歳のがん患者
40歳以上65歳未満の医療保険加入者は、介護保険の第2号被保険者※5です。この年齢層では、要介護状態の原因が介護保険法上の特定疾病である場合に限り、介護保険を利用できます。
がんについては、医師が一般に認められている医学的知見に基づき、回復の見込みがない状態に至ったと判断したものが特定疾病の対象です。一般に「末期がん」と呼ばれますが、申請書や主治医意見書では、制度上の表現に基づく医学的判断が必要です。
40歳未満の人は、がんで介護が必要でも介護保険の対象にはなりません。障害福祉サービス、自治体独自の若年がん患者向け在宅療養支援、医療保険による訪問看護等を検討します。
4-3.介護保険で利用できる主な支援
- 居宅介護支援
- 訪問介護
- 訪問看護
- 訪問入浴介護
- 訪問リハビリテーション
- 居宅療養管理指導
- 通所介護
- 通所リハビリテーション
- 短期入所
- 福祉用具貸与
- 特定福祉用具購入
- 住宅改修
- 定期巡回・随時対応型訪問介護看護
- 看護小規模多機能型居宅介護
- 施設サービス
末期がんでは、病状が短期間で変化することがあります。申請時には歩行や食事ができていても、認定調査後に介助量が増える場合があります。現在の状態だけでなく、直近の病状変化、治療内容、予後に関する主治医の見解、介護者の状況を認定調査員や主治医へ具体的に伝えることが重要です。
5.40~64歳の人が介護保険を利用できる16の特定疾病
40~64歳の医療保険加入者が介護保険を利用するには、要支援・要介護状態の原因が次の特定疾病に該当する必要があります。
- がん
- 関節リウマチ
- 筋萎縮性側索硬化症
- 後縦靱帯骨化症
- 骨折を伴う骨粗鬆症
- 初老期における認知症
- 進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病
- 脊髄小脳変性症
- 脊柱管狭窄症
- 早老症
- 多系統萎縮症
- 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症
- 脳血管疾患
- 閉塞性動脈硬化症
- 慢性閉塞性肺疾患
- 両側の膝関節または股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
厚生労働省は、特定疾病を、加齢との医学的関係があり、40~64歳でも発症し、3~6か月以上にわたり要介護・要支援状態となる割合が高い疾病として位置づけています。厚生労働省「特定疾病の選定基準」
5-1.診断名だけではなく原因関係が必要
特定疾病の診断があっても、現在の要介護状態が別の病気や事故だけに起因する場合は、第2号被保険者として介護保険の対象にならないことがあります。
例えば、40~64歳の人に糖尿病があっても、単に糖尿病と診断されているだけでは足りません。糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症または糖尿病性網膜症があり、それが要介護状態の原因となっている必要があります。
同様に、骨粗鬆症だけではなく「骨折を伴う骨粗鬆症」、変形性関節症では「両側の膝関節または股関節に著しい変形を伴う」ことが要件です。
5-2.医療保険加入も要件
40~64歳で特定疾病がある場合でも、公的医療保険に加入している第2号被保険者であることが前提です。生活保護を利用し、医療保険へ加入していない40~64歳の人については、介護扶助による取り扱いを福祉事務所へ相談します。
6.末期がんと介護保険申請
6-1.「余命6か月」などの一律基準ではない
介護保険の特定疾病としてのがんは、単にステージ4であることや、治療を受けていないことだけで決まりません。また、「余命6か月以内」などの一律の期間基準ではありません。
医師が、一般に認められている医学的知見に基づき、回復の見込みがない状態に至ったと判断することが必要です。
積極的ながん治療を継続しながら、同時に介護保険を利用する場合もあります。「抗がん剤治療中だから末期がんではない」「治療中だから介護保険を使えない」と一律に判断することはできません。
6-2.迅速な申請が必要な理由
末期がんでは、数週間から数か月の間に次の変化が生じることがあります。
- 食欲低下
- 体重減少
- 筋力低下
- 起立・歩行困難
- 呼吸困難
- 浮腫
- 腹水
- 胸水
- 疼痛増強
- 傾眠
- せん妄
- 排泄動作の困難
- 嚥下機能低下
- 介護者の疲弊
要介護認定の結果を待ってからサービス調整を始めると、必要な支援が間に合わない可能性があります。地域包括支援センターまたは居宅介護支援事業所へ早めに相談し、申請と並行して暫定ケアプラン※6を作成する方法があります。
ただし、認定結果が非該当または想定より低い区分となった場合、暫定利用分の一部または全部が自己負担になる可能性があります。利用前に本人・家族へ説明します。
6-3.認定調査で伝えるべき内容
調査当日の一時的な状態だけではなく、日常の状態を具体的に伝えます。
- 良い日と悪い日の差
- 疼痛が強い時間帯
- 鎮痛薬使用前後の状態
- トイレまで移動できない頻度
- 夜間の介助回数
- 食事や水分摂取量
- 入浴後の疲労
- 呼吸苦の程度
- 酸素流量
- 転倒・ふらつき
- せん妄や見当識障害
- 医療処置の内容
- 家族が代行していること
- 一人にできない時間
- 緊急連絡や受診の頻度
本人が調査員の前で無理をして動いたり、「自分でできる」と答えたりすることがあります。本人の尊厳を守りながら、家族や支援者が実際の介助内容を補足します。
6-4.末期がんで利用頻度が高いサービス
- 特殊寝台
- 特殊寝台付属品
- 床ずれ防止用具
- 車椅子
- 移動用リフト
- ポータブルトイレ
- 訪問介護
- 訪問入浴
- 訪問看護
- 居宅療養管理指導
- 定期巡回・随時対応型訪問介護看護
- 短期入所
- 住宅改修
軽度の認定区分では、特殊寝台、車椅子、床ずれ防止用具等が原則給付の対象外となる場合があります。しかし、疾病その他の原因によって必要性が認められる場合、軽度者への例外給付を利用できる可能性があります。
7.医療保険による訪問看護
7-1.訪問看護とは
訪問看護は、医師の指示に基づき、看護師、保健師、准看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士等が自宅等を訪問し、療養上の世話や診療の補助を提供する制度です。
主な支援内容は次のとおりです。
- 病状及びバイタルサインの観察
- 服薬管理
- 疼痛や呼吸困難等の症状緩和
- 点滴、注射
- 喀痰吸引
- 気管切開部の管理
- 人工呼吸器管理
- 在宅酸素療法の管理
- 経管栄養
- 中心静脈栄養
- ストーマ管理
- 尿道留置カテーテル管理
- 褥瘡及び創傷処置
- 清潔、排泄、食事への支援
- リハビリテーション
- 家族への介護指導
- 終末期看護
- 看取り
- 主治医や関係機関への連絡
7-2.介護保険が優先される原則
要支援・要介護認定を受けている人の訪問看護は、原則として介護保険が優先されます。介護保険による訪問看護は、ケアプランに位置づけ、区分支給限度基準額の範囲内で利用します。
ただし、次のような場合には医療保険による訪問看護となります。
- 40歳未満
- 40~64歳で介護保険の特定疾病に該当しない
- 要支援・要介護認定を受けていない
- 厚生労働大臣が定める疾病等に該当する
- 特別訪問看護指示書※7が交付されている
- 精神科訪問看護の対象となる
- その他、医療保険の給付要件に該当する
厚生労働省は、要支援・要介護者では介護保険を優先しつつ、末期の悪性腫瘍、一定の難病、急性増悪等では医療保険を適用する仕組みを案内しています。厚生労働省「訪問看護」
7-3.厚生労働大臣が定める疾病等
要支援・要介護認定があっても、厚生労働大臣が定める疾病等に該当する場合は、医療保険による訪問看護となります。
代表例は次のとおりです。
- 末期の悪性腫瘍
- 多発性硬化症
- 重症筋無力症
- スモン
- 筋萎縮性側索硬化症
- 脊髄小脳変性症
- ハンチントン病
- 進行性筋ジストロフィー症
- パーキンソン病関連疾患の一定の状態
- 多系統萎縮症
- プリオン病
- 亜急性硬化性全脳炎
- ライソゾーム病
- 副腎白質ジストロフィー
- 脊髄性筋萎縮症
- 球脊髄性筋萎縮症
- 慢性炎症性脱髄性多発神経炎
- 後天性免疫不全症候群
- 頸髄損傷
- 人工呼吸器を使用している状態
疾患ごとに重症度、生活機能、医療機器の使用状況などの条件が付く場合があります。指定難病医療費助成の対象疾病と、医療保険による訪問看護の対象疾病は同一ではありません。
7-4.医療保険による利用回数
医療保険による訪問看護は、原則として週3日までです。ただし、厚生労働大臣が定める疾病等、特別訪問看護指示書の交付期間などは、週4日以上の訪問が可能です。
1日に複数回の訪問や、複数の訪問看護ステーションの利用についても、疾病、状態、指示書、保険上の条件により取り扱いが異なります。
実際の利用回数は、主治医の指示、病状、家族の介護力、医療処置の頻度、訪問看護ステーションの体制を踏まえて決めます。
7-5.訪問看護指示書
医療保険・介護保険のいずれで訪問看護を利用する場合も、主治医の訪問看護指示書が必要です。
指示書には、主な疾病、病状、治療内容、投薬、医療機器、必要な処置、留意事項、緊急時の対応などを記載します。
複数の医療機関へ通院している場合でも、訪問看護指示書を交付する主治医を明確にします。医療機関同士の方針が異なると、訪問看護師が対応に迷うため、診療情報提供書等による連携が重要です。
8.特別訪問看護指示書
8-1.特別訪問看護指示書とは
特別訪問看護指示書は、患者の主治医が診療に基づき、急性増悪、終末期、退院直後等により、一時的に頻回な訪問看護が必要と判断した場合に交付する指示書です。
交付期間中は、要支援・要介護認定を受けている人でも、訪問看護を医療保険から提供できます。
一般的には、月1回、交付日から最長14日間です。気管カニューレを使用している状態や真皮を越える褥瘡がある場合などは、月2回交付できる場合があります。厚生労働省「訪問看護のしくみ」
8-2.対象となり得る状態
- 感染症等による急性増悪
- 脱水
- 心不全の増悪
- 呼吸状態の悪化
- 頻回な吸引が必要
- 点滴を連日必要とする
- 褥瘡が悪化している
- 退院直後で医療処置の導入が必要
- 終末期で症状変化が大きい
- 家族への医療的ケア※15指導を集中的に必要とする
- 在宅での看取りに向けて頻回訪問を必要とする
単に家族の介護負担が大きいことだけで交付するものではありません。主治医が診療を基に、一時的な頻回訪問の医学的必要性を判断します。
8-3.交付期間中の支援
病状に応じて週4日以上、場合によっては連日の訪問を組みます。必要性と保険上の要件を満たす場合には、1日複数回訪問、複数名訪問、長時間訪問等を組み合わせることがあります。
ただし、保険で給付される範囲を超える長時間滞在や家事援助は、自費または別制度になる場合があります。
8-4.14日間終了後
特別訪問看護指示書の期間が終了すると、通常は介護保険による訪問看護へ戻ります。病状や対象要件によっては、引き続き医療保険による訪問看護となる場合もあります。
終了後の体制を事前に検討しないと、訪問回数が急に減り、家族の負担が増える可能性があります。主治医、訪問看護、ケアマネジャー、家族で次の点を調整します。
- 必要な訪問回数
- 介護保険の支給限度額
- 訪問介護等との役割分担
- 緊急連絡体制
- 医療処置を家族が担えるか
- 自費サービスの必要性
- 再入院の判断基準
9.在宅療養支援診療所※8・在宅療養支援病院
9-1.制度上の役割
在宅療養支援診療所及び在宅療養支援病院は、在宅療養を受ける患者に対し、24時間の連絡、往診、訪問看護、緊急入院等に対応できる体制を整え、地方厚生局へ届け出た医療機関です。
2026年度の施設基準では、主に次の体制が定められています。
- 24時間連絡を受ける体制
- 24時間往診できる体制
- 24時間訪問看護を提供できる体制
- 緊急時の入院体制
- 連携医療機関等への情報提供
- 意思決定支援に関する指針
- 訪問栄養食事指導が可能な体制
- 業務継続計画
詳細は厚生労働省「質の高い在宅医療の推進」に掲載されています。
9-2.訪問診療と往診の違い
訪問診療は、通院が困難な患者に対し、あらかじめ診療計画を作成して定期的に医師が訪問するものです。
往診は、急な発熱、呼吸苦、疼痛増強など、患者や家族の求めに応じて臨時に医師が訪問するものです。
定期訪問を受けているからといって、すべての急変時に直ちに医師が到着するとは限りません。夜間・休日は連携医師が対応する場合や、電話相談後に救急搬送を案内する場合があります。
9-3.在宅療養支援診療所を選ぶ視点
- 主疾患や難病への診療経験
- がん緩和ケアへの対応
- 医療用麻薬の処方
- 在宅酸素、人工呼吸器、気管切開への対応
- 中心静脈栄養や経管栄養への対応
- 輸血、腹水穿刺等への対応可否
- 24時間の連絡方法
- 夜間・休日の往診体制
- 連携する訪問看護ステーション
- 緊急入院先
- 看取りへの対応
- 本人の意思決定支援
- 家族支援
- 病院主治医との連携
- 薬局との連携
在宅療養支援診療所の届出があることだけでなく、本人の疾病、医療処置、生活環境に対応できるかを個別に把握します。
9-4.病院主治医との併診
難病やがんでは、専門病院への通院を続けながら、在宅医が日常的な病状管理を担うことがあります。
役割分担の例は次のとおりです。
| 専門病院 | 在宅医 |
|---|---|
| 疾病の専門的治療 | 日常の体調管理 |
| 抗がん剤・専門薬の調整 | 発熱、脱水、便秘等への対応 |
| 定期検査 | 在宅での症状緩和 |
| 手術・放射線治療 | 訪問看護指示 |
| 専門的な予後評価 | 緊急時の初期対応 |
| 入院治療 | 看取り |
誰がどの薬を処方するか、夜間の連絡先、緊急入院先を事前に決めておくことが大切です。