THE RIBBON OF WISHES / KITE'S JOURNEY
朝の海辺で、きてちゃんは波のあいだに揺れる一本の光を見つけました。
それは飾りのリボンではなく、まだ言葉になっていない誰かの願いでした。
願いは、答えを急ぐと細くなり、耳を澄ますとやさしい色を取り戻します。
きてちゃんが一つひとつの光を大切に受けとめ、人と人のあいだを結び、望む明日へつづく道を照らす三つの物語です。

A SMALL WISH IN THE WIND
第一部|風の中の小さな願い
朝の海が 淡い金色にほどけるころ
波打ち際に 細い光が揺れていた きてちゃんが 手を伸ばすと
光は逃げずに
指先へ そっと巻きついた けれど きてちゃんは
引っぱることも
行き先を決めることもしなかった 砂の上に腰をおろし
潮の音と 風の間にある
まだ小さな声へ耳を澄ませた 好きな時間を これからも守りたい
できることを 自分の手で続けたい
大切な人と もう一度笑いたい 光は一つずつ
その願いに似合う色を取り戻し
朝の空へ やわらかく伸びていった

WEAVING LIGHT WITH LIGHT
第二部|光と光を結ぶ
海からつづく光をたどると
花の庭にも 町の窓辺にも
小さなリボンが待っていた 誰かの得意から生まれた 水色
そばにいたい気持ちの 若草色
明日を信じる心の あたたかな金色 きてちゃんは
どの色も同じに塗り替えず
そのままの輝きで 丁寧に重ねた 強く縛らない
ほどきたいときには ほどける
歩く道が変われば 結び直せる 一人では届かなかった場所へ
それぞれの優しさと力が
細く しなやかな道をつくっていく やがて庭の上には
たくさんの色を残したまま
一本の美しい光が流れはじめた

THE PATH TOWARD TOMORROW
第三部|望む明日へつづく道
結ばれた光は
誰かを急がせる綱ではなく
足もとを照らす道になった きてちゃんは
前を急がず
後ろから押すこともせず
その人の歩幅の 少し隣を歩いた 立ち止まれば 光も静かに待ち
曲がりたくなれば
道は花の間を ゆっくり曲がった 一歩進むたび
閉じていた窓に朝が差し
庭には 新しい笑い声が咲いていく 遠くに見えた明日は
いつの間にか
今日からつづく景色になっていた きてちゃんが手を離しても
光のリボンは消えない
願いを知る人たちのあいだで
やさしく結ばれつづけていた