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THE COMPASS OF DAWN|星の羅針盤と、夜明けの扉

星の羅針盤と、夜明けの扉

THE COMPASS OF DAWN / KITE & SAVA'S STORY

森で拾った羅針盤が指していたのは、北でも南でもありませんでした。妖精のきてちゃんと、幼い妖精のさばくん。ふたりは小さな光に導かれ、夜明けの向こうへ続く旅に出ます。

森の羅針盤風を聴く橋洞窟の小さな星鏡の湖嵐の天文台夜明けの扉星の帰る場所
星の羅針盤を手に、雲海の向こうの夜明けの扉を目指すきてちゃんとさばくん
夕暮れの森で、きてちゃんとさばくんが木の根もとの光る羅針盤を見つける場面

THE COMPASS BENEATH THE ROOTS

第一部|森がかくした羅針盤

夕暮れの森で、さばくんが木の根もとに光るものを見つけました。苔の下に眠っていたのは、真鍮のふたに葉の模様が刻まれた、小さな羅針盤です。 きてちゃんが土を払うと、針は北ではなく、遠い山の裂け目を指しました。ふたの裏には、細い文字が刻まれています。 「迷った星を、夜明けの扉へ」 顔を上げたさばくんは、空の星並びに、ひとつだけ暗い隙間があることに気づきました。その方角から、かすかな鈴の音が聞こえます。 きてちゃんは帰り道の大きな樫を確かめ、さばくんに手を差し出しました。「音のするところまで、いっしょに行こう」 ふたりが歩きだすと、羅針盤に青い灯がともりました。木々の向こうで、雲の橋がゆっくりと姿を現します。

きてちゃんとさばくんが風の音を聴きながら谷にかかる雲の橋を渡る場面

WAIT FOR THE WIND

第二部|風の返事を待つ橋

谷を渡る橋は、雲をつないでできていました。さばくんが足をのせると、目の前の一枚がふわりとほどけ、谷の底へ流れていきます。 「急ぐと、なくなっちゃう」さばくんは岸へ戻り、きてちゃんの袖をつかみました。風の中では、羽を広げても体が揺れてしまいます。 きてちゃんは目を閉じました。風が細く鳴ると雲は離れ、低く歌うと、またぴたりと重なります。 「橋にも、渡れるときがあるみたい」 ふたりは低い歌を待ち、一枚ずつ足を進めました。最後の雲が遠ざかりかけると、さばくんが風の変わり目を聞き分けます。「いま、待って!」 次の歌に合わせて岸へ渡ると、鈴の音がはっきり響きました。山の裂け目に、星くずのような明かりが揺れていました。

光る結晶の洞窟で、きてちゃんとさばくんが銀の糸から小さな星を助ける場面

THE STAR IN THE CRYSTAL CAVE

第三部|洞窟で泣いていた星

洞窟の壁には、青や緑の結晶が咲いていました。その奥で、鈴に似た声がします。ふたりがのぞくと、小さな星が銀の糸にからまっていました。 さばくんが糸を引くと、輪はかえってきつくなります。星の光が弱まり、ふたりはすぐに手を止めました。 「どこから、ほどけばいいかな」きてちゃんは結び目を照らしました。さばくんが岩の下に回ると、隠れていた糸の端が見つかります。 端を戻し、輪をゆるめ、ひとつずつ。ようやく自由になった星は、さばくんの両手にころんと落ちました。 「風に流されて、帰り道がわからなくなったの」星が話すと、羅針盤の青い灯が金色に変わりました。 きてちゃんは葉を折って星の寝床を作りました。針の先には洞窟の出口。その向こうで、空を映す湖が静かに光っています。

鏡のような湖で、金色の橋の幻を離れ、確かな岸沿いを歩くきてちゃんとさばくん

THE MIRROR LAKE

第四部|鏡の湖の近道

湖のほとりに着くと、水面に金色の橋が映りました。岸には「ここを渡れば、すぐに着く」と書かれた、真新しい道しるべが立っています。 けれど羅針盤の針は、石だらけの遠回りを指していました。さばくんは眠そうな星を見て、つぶやきます。「早く帰してあげたいのに」 きてちゃんにも、近道が魅力的に見えました。それでも「渡れるか、まだわからないね」と答え、小枝を水面へそっと置きました。 小枝は橋の映る場所で沈みました。よく見ると、水の中の雲だけが、空とは反対へ動いています。 「きれいに見えても、道とは限らないんだ」さばくんは道しるべから離れました。ふたりは確かめられた岸沿いを選びます。 岩を越えるたび、星が足もとを照らしました。湖を回りきった丘の上には、古い天文台が待っていました。

嵐の天文台で小さな星を守ったきてちゃんとさばくんが壊れた羅針盤と星図を見る場面

WHEN THE NEEDLE STOPS

第五部|針の止まった天文台

天文台へ着くころ、空を黒い雲が覆いました。割れた窓から風が吹き込み、壁の星図がばたばたと鳴ります。羅針盤は屋上を指していました。 階段を上がりかけたとき、激しい風が葉の寝床をさらいました。さばくんが星へ手を伸ばし、きてちゃんがその体をしっかり支えます。 星はつかめました。けれど、きてちゃんの手を離れた羅針盤が石段に落ち、乾いた音を立てました。針は動かなくなりました。 「ごめんなさい」さばくんの声が震えます。きてちゃんは星とさばくんを風の届かない壁際へ連れていきました。 「星をつかまえてくれたね。道は、ここで考えよう」ふたりは濡れた羽を休め、残ったものを並べました。 壊れた羅針盤。金色に光る星。そして壁の星図。星図の隅には、屋上へ続く階段と、あの葉の印が描かれていました。

白い扉の左右の金色の石を同時に押し、星とともに夜明けへの道を開くきてちゃんとさばくん

THE DOOR WE OPEN TOGETHER

第六部|ふたりで開く夜明けの扉

風が弱まるのを待ち、ふたりは星図をたよりに屋上へ上がりました。そこには取っ手のない白い扉と、葉の印を囲む丸いくぼみがありました。 羅針盤をはめても、扉は動きません。きてちゃんの目の高さには七つの星の印があり、左右の扉には、金色の丸い石がひとつずつ埋め込まれていました。 さばくんが石へ手を当てると、かすかな音が返ってきました。「橋の風と同じだ。低く歌うときがあるよ」きてちゃんも、もう一方の石へ手をのせます。 きてちゃんは星図と印を見比べ、さばくんは石の返事に耳を澄ませました。「印が重なったわ」「いま!」声を合わせ、ふたりは同時に石を押しました。 七つの印が並ぶと、中央に暗い隙間が残りました。森で見た星空と同じです。小さな星が寝床から浮かび、そこへ光を注ぎました。 壊れた羅針盤のふちが金色に輝きます。扉の向こうから、まだ誰も踏んでいない朝の光が、ふたりの足もとへ伸びてきました。

朝焼けの丘で、小さな星を空へ見送るきてちゃんとさばくん

A STAR FINDS ITS WAY HOME

第七部|星の帰る場所、ふたりの帰る森

扉の先には、町と海を見渡す草の丘がありました。朝焼けに照らされた小さな星は、さばくんの手の上に浮かび、ふたりのまわりを、もう一度だけくるりと飛びました。 「帰れたら、あの隙間で光るね」 さばくんは空を見上げました。「うん。今夜、探すよ」星が高く昇ると、暗かった場所に一粒の光がともりました。やがて朝の青に溶けていきます。 ふたりが扉を戻ると、天文台に穏やかな風が吹いていました。きてちゃんはくぼみから羅針盤を取り、帰りの道へ足を向けました。 湖の岸をたどり、洞窟を抜け、風の歌を待って橋を渡ります。見覚えのある大きな樫に着いたころ、森では朝露が輝いていました。 さばくんは針の止まった羅針盤を窓辺に置きました。その夜、ふたりは並んで空を見上げました。約束の場所で、星が小さくまたたきました。